(1) 資本金1000万円未満の新設法人における売上高等の状況
18年中に設立された資本金1000万円未満の新設法人で検査の対象とした1,283法人のうち、第1期事業年度の売上高が1000万円を超え、設立2年以内の事業者免税点制度の適用を受けて、第3期課税期間において納付消費税額を申告している343法人を抽出して、これらの法人の第1期事業年度から第3期事業年度までの売上高及び消費税の課税の状況についてみると、表2のとおりである。
事業年度等
\区分
|
第1期事業年度 (第1期課税期間) |
第2期事業年度 (第2期課税期間) |
第3期事業年度 (第3期課税期間) |
|
売上高の状況 | 売上高計 | 百万円 22,230 |
百万円 35,902 |
百万円 36,187 |
1社平均売上高 | 百万円 64 |
百万円 104 |
百万円 105 |
|
消費税の課税の状況 | 課税標準額計 | 免税 | 免税 | 千円 32,332,422 |
納付消費税額計 | 千円 652,681 |
|||
1社平均 課税標準額 |
千円 94,263 |
|||
1社平均 納付消費税額 |
千円 1,902 |
343法人は、第1期事業年度及び第2期事業年度の1社平均売上高が、それぞれ64百万円及び1億04百万円となっているのに、設立2年以内の事業者免税点制度の適用を受けて、第1期課税期間及び第2期課税期間は免税事業者となっていた。
また、343法人を資本金及び売上高の区分別にみると、表3のとおりである。
区分
\ 資本金
|
法人数(%) | 第1期事業年度売上高別法人数 | (参考)1社平均売上高 | 第2期事業年度売上高別法人数 | (参考)1社平均売上高 | ||||||||
3千万円以下 | 3千万円超5千万以下 | 5千万円超1億円以下 | 1億円超 | 3千万円以下 | 3千万円超5千万以下 | 5千万円超1億円以下 | 1億円超 | ||||||
うち3億円超 | うち3億円超 | ||||||||||||
100万円未満 〔1〕 |
55 (16.0) |
28 | 12 | 4 | 11 | 5 | 百万円 77 |
25 | 8 | 8 | 14 | 7 | 百万円 107 |
100万円 〔2〕 |
52 (15.2) |
23 | 14 | 11 | 4 | 0 | 48 | 17 | 8 | 13 | 14 | 2 | 88 |
小計 100万円以下 (〔1〕 +〔2〕 ) |
107 (31.2) |
51 | 26 | 15 | 15 | 5 | 63 | 42 | 16 | 21 | 28 | 9 | 98 |
100万円超 300万円未満 〔3〕 |
16 (4.7) |
10 | 4 | 1 | 1 | 0 | 40 | 7 | 2 | 4 | 3 | 0 | 57 |
300万円 〔4〕 |
134 (39.1) |
56 | 34 | 19 | 25 | 4 | 66 | 33 | 31 | 33 | 37 | 15 | 113 |
小計 300万円以下 (〔1〕 +〔2〕 +〔3〕 +〔4〕 ) |
257 (74.9) |
117 | 64 | 35 | 41 | 9 | 63 | 82 | 49 | 58 | 68 | 24 | 104 |
300万円超 500万円未満 〔5〕 |
5 (1.5) |
3 | 0 | 0 | 2 | 0 | 96 | 1 | 2 | 0 | 2 | 0 | 109 |
500万円以上 1000万円未満 [6] |
81 (23.6) |
26 | 19 | 21 | 15 | 0 | 66 | 14 | 15 | 22 | 30 | 3 | 106 |
計 (〔1〕 +〔2〕 +〔3〕 +〔4〕 +〔5〕 +[6] ) |
343 (100.0) |
146 | 83 | 56 | 52 | 9 | 64 | 97 | 66 | 80 | 100 | 27 | 104 |
343法人のうち1億円超の売上高を有している法人は、第1期事業年度で58法人(16.9%)、第2期事業年度で100法人(29.2%)となっており、このうち3億円超の売上高を有している法人は、それぞれ9法人(2.6%)及び27法人(7.9%)見受けられた。
そして、前記のとおり、最低資本金制度が撤廃されたことから、少額の資本金で法人を設立しているものも見受けられ、上記343法人のうち257法人(74.9%)が資本金300万円以下となっていた。これら257法人の第1期事業年度及び第2期事業年度の1社平均売上高は、それぞれ63百万円及び1億04百万円となっており、このうち1億円超の売上高を有している法人は、それぞれ41法人(16.0%)及び68法人(26.5%)、さらに、3億円超の売上高を有している法人もそれぞれ9法人(3.5%)及び24法人(9.3%)見受けられた。また、資本金100万円以下で法人を設立しているものは107法人(31.2%)あり、その第1期事業年度及び第2期事業年度の1社平均売上高は、それぞれ63百万円及び98百万円となっていた。このうち1億円超の売上高を有している法人は、それぞれ15法人(14.0%)及び28法人(26.2%)、さらに、3億円超の売上高を有している法人もそれぞれ5法人(4.7%)及び9法人(8.4%)見受けられた。
前記1,283法人のうち343法人の第1期事業年度及び第2期事業年度の売上高計は、表2
のとおり、それぞれ222億30百万円及び359億02百万円で、これら343法人が第1期課税期間及び第2期課税期間において課税事業者であったとして納付消費税額を推計(注5)
すると、それぞれ4億3550万余円及び7億0051万余円となる。
このように、資本金1000万円未満の新設法人のうち第1期事業年度から相当の売上高を有しているのに、設立2年以内の事業者免税点制度の適用を受けている法人について、事例を示すと次のとおりである。
<事例1>
平成18年4月に資本金300万円で設立されたA法人は、第1期事業年度(19年2月期)、第2期事業年度(20年2月期)及び第3期事業年度(21年2月期)の各事業年度の売上高が、それぞれ5億52百万円、9億13百万円及び8億27百万円となっている。そして、同法人は、設立2年以内の事業者免税点制度の適用を受けて、第1期課税期間及び第2期課税期間は免税事業者となっており、課税事業者となった第3期課税期間の納付消費税額は2443万余円となっていた。
同法人が第1期課税期間及び第2期課税期間において課税事業者であったとして納付消費税額を推計すると、それぞれ1630万余円及び2697万余円となる。
課税事業者となっていた個人事業者206人が、18年中に資本金1000万円未満で法人成りして同一の事業内容等で事業を開始した後、設立2年以内の事業者免税点制度の適用を受けていた場合における個人事業者としての17、18両年分の事業収入及び消費税の課税の状況と、法人成り後の法人としての第1期事業年度から第3期事業年度までの売上高及び消費税の課税の状況についてみると、表4のとおりである。
事業年度等
\ 区分
|
個人事業者(206人) | 法人(206法人) | ||||
平成17年分 | 18年分 | 第1期事業年度 (第1期課税期間) |
第2期事業年度 (第2期課税期間) |
第3期事業年度 (第3期課税期間) |
||
売上高の状況 | 事業収入計 売上高計 |
百万円 13,009 |
百万円 7,322 |
百万円 13,864 |
百万円 16,318 |
百万円 15,330 |
1人平均事業収入 1社平均売上高 |
百万円 63 |
百万円 35 |
百万円 67 |
百万円 79 |
百万円 74 |
|
消費税の課税の状況 | 課税標準額計 |
千円 12,500,211 |
千円 7,660,587 |
免税 | 免税 | 千円 14,866,994 |
納付消費税額計 |
千円 156,109 |
千円 109,114 |
千円 193,319 |
|||
1人(1社)平均 課税標準額 |
千円 60,680 |
千円 37,187 |
千円 72,169 |
|||
1人(1社)平均 納付消費税額 |
千円 757 |
千円 529 |
千円 938 |
法人成りが18年中に行われていることから、1年間の売上高で比較するために、個人事業者の17年分の事業収入と法人の第2期事業年度の売上高をみると、個人事業者の17年分の1人平均事業収入が63百万円であるのに対して、法人の第2期事業年度の1社平均売上高は79百万円と同等以上の売上高となっていた。このように事実上、同一の事業内容等を継続していて法人成り後も相当の売上高があるのに、個人事業者が法人成りして事業を開始した後、設立2年以内の事業者免税点制度の適用を受けて、第1期課税期間及び第2期課税期間は免税事業者となっていた。
また、法人成り後の206法人を資本金及び売上高の区分別にみると、表5のとおりである。
区分
\ 資本金
|
法人数(%) | 第1期事業年度売上高別法人数 | (参考) 1社平均売上高 |
第2期事業年度売上高別法人数 | (参考) 1社平均売上高 |
||||||||
3千万円以下 | 3千万円超5千万以下 | 5千万円超1億円以下 | 1億円超 | 3千万円以下 | 3千万円超5千万以下 | 5千万円超1億円以下 | 1億円超 | ||||||
うち3億円超 | うち3億円超 | ||||||||||||
300万円未満 〔1〕 |
66 (32.0) |
16 |
20 |
19 |
11 |
1 |
百万円 63 |
8 |
20 |
24 |
14 |
0 |
百万円 73 |
300万円 〔2〕 |
90 (43.7) |
24 | 28 | 23 | 15 | 1 | 65 | 13 | 20 | 41 | 16 | 2 | 78 |
小計 300万円以下 (〔1〕 +〔2〕 ) |
156 (75.7) |
40 | 48 | 42 | 26 | 2 | 64 | 21 | 40 | 65 | 30 | 2 | 76 |
300万円超 500万円未満 〔3〕 |
4 (1.9) |
1 | 1 | 1 | 1 | 0 | 56 | 1 | 1 | 1 | 1 | 0 | 65 |
500万円 〔4〕 |
34 (16.5) |
5 | 14 | 8 | 7 | 0 | 70 | 2 | 8 | 13 | 11 | 0 | 88 |
500万円超 1000万円未満 〔5〕 |
12 (5.8) |
1 | 3 | 3 | 5 | 0 | 92 | 1 | 3 | 3 | 5 | 0 | 95 |
計 (〔1〕 +〔2〕 +〔3〕 +〔4〕 +〔5〕 ) |
206 (100.0) |
47 | 66 | 54 | 39 | 2 | 67 | 25 | 52 | 82 | 47 | 2 | 79 |
206法人のうち1億円超の売上高を有している法人は、第1期事業年度で39法人(18.9%)、第2期事業年度で47法人(22.8%)となっていた。
そして、206法人のうち156法人(75.7%)は、資本金300万円以下であり、その第1期事業年度及び第2期事業年度の1社平均売上高は、それぞれ64百万円及び76百万円となっていた。このうち1億円超の売上高を有している法人は、第1期事業年度で26法人(16.7%)、第2期事業年度で30法人(19.2%)見受けられた。
上記206法人の第1期事業年度及び第2期事業年度の売上高計は、表4
のとおり、それぞれ138億64百万円及び163億18百万円で、これら206法人が第1期課税期間及び第2期課税期間において課税事業者であったとして納付消費税額を推計すると、それぞれ1億7373万余円及び2億0811万余円となる。
このように、法人成り後も相当の売上高を有しているのに、設立2年以内の事業者免税点制度の適用を受けている法人について、事例を示すと次のとおりである。
<事例2>
個人甲は、個人事業者として事業を営んでいたが、平成18年2月に法人成りして、資本金800万円のB法人を設立している。そして、同人の17年分の事業収入と同法人の第2期事業年度の売上高を比較すると、17年分の事業収入1億8858万余円に対し、同法人の第2期事業年度の売上高は1億6314万余円となっていて同等の売上高となっていた。また、同法人は、設立2年以内の事業者免税点制度の適用を受けて第1期課税期間及び第2期課税期間は免税事業者となっており、課税事業者となった第3期課税期間の納付消費税額は505万余円となっていた。
同法人が第1期課税期間及び第2期課税期間において課税事業者であったとして納付消費税額を推計すると、それぞれ501万余円及び517万余円となる。
(3) 資本金が1000万円以上となる増資を行っていたなどの法人における売上高等の状況
資本金1000万円未満の新設法人のうち、第2期事業年度の開始の日の翌日以降に資本金が1000万円以上となる増資を行っていたなどの法人を、国税局等及び税務署の会計実地検査において抽出し、法人税及び消費税の確定申告書等により検査したところ、次のような状況となっているものが見受けられた。
第1期事業年度開始の日の翌日以降の同事業年度中に資本金を1000万円以上に増資して第1期課税期間は免税事業者となり、第2期課税期間から課税事業者となっていたなどの法人が10法人、第2期事業年度開始の日の翌日以降に資本金を1000万円以上に増資して第1期課税期間及び第2期課税期間は免税事業者となり、第3期課税期間以降から課税事業者となっていたなどの法人が19法人、計29法人見受けられた。
そして、これらの法人の売上高及び消費税の課税の状況についてみると、表6のとおりである。
事業年度等
\ 区分
|
第1期事業年度 (第1期課税期間) |
第2期事業年度 (第2期課税期間) |
第3期事業年度 (第3期課税期間) |
|
10法人 | 1社平均 売上高 |
百万円 451 |
百万円 注(1) 373 |
/ |
1社平均 課税標準額 |
免税 | 千円 注(1) 371,654 |
||
1社平均 納付消費税額 |
千円 注(1) 4,334 |
|||
19法人 | 1社平均 売上高 |
百万円 97 |
百万円 322 |
百万円 注(2) 367 |
1社平均 課税標準額 |
免税 | 免税 | 千円 注(2) 312,833 |
|
1社平均 納付消費税額 |
千円 注(2) 4,960 |
注(1) | 第2期事業年度等の申告期限が未到来の法人が2法人あるため、8法人に係る売上高等である。 |
注(2) | 第3期事業年度等の申告期限が未到来の法人が2法人及び第3期課税期間が免税となっている法人が6法人あるため11法人に係る売上高等である。 |
第1期課税期間が免税事業者となっていた10法人の同期間における1社平均売上高は、4億51百万円となっており、第1期課税期間及び第2期課税期間が免税事業者となっていた19法人の同期間における1社平均売上高は、それぞれ97百万円及び3億22百万円となっていた。そして、これら29法人の中には、5億円以上の売上高を有している法人も5法人見受けられた。また、前記のとおり、最低資本金制度が撤廃されたことから、上記10法人の中には、1万円及び5万円の資本金でそれぞれ法人を設立して、第1期事業年度における売上高が47百万円及び1億41百万円となっている法人も見受けられた。
上記のほかに、資本金1000万円未満の新設法人が、その事業年度開始の日の翌日以降の第1期事業年度中に資本金が1000万円以上となる増資を行ったため、第2期課税期間から課税事業者となるところ、第1期事業年度中に再度資本金が1000万円未満となる減資を行ったため第2期課税期間も免税事業者となっていたなどの法人が4法人見受けられた。
前記の29法人及び上記の4法人計33法人のうち29法人(注6)
の第1期事業年度及び第2期事業年度の売上高計は、それぞれ33億40百万円及び54億60百万円で、これら29法人が第1期課税期間及び第2期課税期間において課税事業者であったとして、第1期課税期間及び第2期課税期間の納付消費税額を推計すると、それぞれ5333万余円及び7439万余円となる。
これらの法人について、事例を示すと次のとおりである。
<事例3>
平成18年6月に資本金300万円で設立されたC法人は、同年9月に資本金が1000万円となる増資を行ったことから第1期課税期間(18年6月〜19年5月)は免税事業者となるが、第2期課税期間(19年6月〜20年5月)は課税事業者となるところ、引き続き第2期課税期間も免税事業者となるため、第1期事業年度中の19年4月に減資により資本金を800万円としていた。
同法人は、第1期事業年度(19年5月期)、第2期事業年度(20年5月期)及び第3期事業年度(21年5月期)の各事業年度の売上高が、それぞれ1億8237万余円、3億7011万余円及び3億3409万余円となっている。また、同法人は、設立2年以内の事業者免税点制度の適用を受けて第1期課税期間及び第2期課税期間は免税事業者となっており、課税事業者となった第3期課税期間の納付消費税額は1089万余円となっていた。
同法人が第1期課税期間及び第2期課税期間において課税事業者であったとして納付消費税額を推計すると、それぞれ594万余円及び1207万余円となる。
(4) 設立2年以内の事業者免税点制度の適用を受けた後に解散等した法人の状況
資本金1000万円未満の新設法人を設立し、第2期課税期間までは設立2年以内の事業者免税点制度の適用を受けて免税事業者となり、第3期事業年度以降に解散等している法人を国税局等及び税務署の会計実地検査において抽出し、法人税及び消費税の確定申告書等により検査したところ、次のような状況となっているものが見受けられた。
設立2年以内において相当の売上高を有していることから第3期課税期間は消費税の申告及び納付が見込まれるのに、第3期事業年度以降に解散していたり、無申告となっていたりしているなどの法人や、設立2年以内の事業者免税点制度の適用を受けた後の第3期事業年度以降に他の新設同族法人へ売上げを移転するなどしているとみられる法人が計24法人見受けられた。
上記24法人のうち9法人(注7)
の第1期事業年度及び第2期事業年度の売上高計は、それぞれ13億98百万円及び20億68百万円で、これら9法人が第1期課税期間及び第2期課税期間において課税事業者であったとして納付消費税額を推計すると、それぞれ4430万余円及び6723万余円となる。
これらの法人について、事例を示すと次のとおりである。
<事例4>
個人乙により平成19年1月に資本金300万円で設立されたD法人の第1期事業年度(19年11月期)及び第2期事業年度(20年11月期)の売上高は、それぞれ9744万余円及び1億7495万余円となっていた。そして、乙は、D法人が課税事業者となった第3期事業年度中の21年1月に、新たに資本金100万円でD法人と同業種のE法人を設立していて、E法人の第1期事業年度(21年12月期)及び第2期事業年度(22年12月期)の売上高は、それぞれ6784万余円及び1億5178万余円となっていた。一方、E法人の事業年度とほぼ同時期のD法人の第3期事業年度(21年11月期)及び第4期事業年度(22年11月期)の売上高は、それぞれ2261万余円及び0円と大幅に減少していて、D法人は、第4期事業年度末である22年11月にE法人に吸収合併されていた。
D法人は、設立2年以内の事業者免税点制度の適用を受けて第1期課税期間及び第2期課税期間は免税事業者となっており、課税事業者となった第3期課税期間及び第4期課税期間の納付消費税額は、それぞれ75万余円及び1万円未満と少額となっている一方、E法人は、第1期課税期間及び第2期課税期間は、設立2年以内の事業者免税点制度の適用を受けて免税事業者となっていた。
以上の(1)から(4)までの検査の対象とした計1,546法人のうち、納付消費税額の推計が可能な計587法人((1)343法人、(2)206法人、(3)29法人及び(4)9法人)の第1期事業年度及び第2期事業年度の売上高計は、それぞれ408億33百万円及び597億49百万円、計1005億83百万円であり、これら587法人の第1期課税期間及び第2期課税期間の納付消費税額の推計額は、それぞれ7億0687万余円及び10億5026万余円、計17億5714万余円となる。
資本金1000万円未満の新設法人に係る事業者免税点制度についての会計検査院の検査の状況は、上記の(1)から(4)までのとおりであるが、国税庁においても、消費税については不正の手段により税を免れ、また、不正に還付金を得るケースが見受けられることから、その査察調査に重点的に取り組んでいる。
そこで、会計検査院が明らかにした検査の状況に関連して、国税庁による消費税の査察調査状況についてみたところ、18年度から22年度までの間に検察庁に告発した件数は、表7のとおりとなっていた。
表7 国税庁から検察庁へ告発した件数の推移
(単位:件)
年度
\ 区分
|
平成18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 計 |
告発件数 | 23 | 30 | 12 | 18 | 19 | 102 |
うち事業者免税点制度を悪用して消費税を免れていた事例 | 15 | 14 | 7 | 10 | 12 | 58 |
そして、上記の告発件数102件のうち58件は、資本金1000万円未満の新設法人の設立2年以内の事業者免税点制度を悪用し、法人の設立や解散を繰り返すなどして消費税を免れている事例であった。当該事例において、脱税した消費税(地方消費税を含む。)総額は41億5826万余円、告発事件1件当たりの脱税額は7169万余円であった。典型的な事例を示すと次のとおりである。
<国税庁から検察庁へ告発した事例>
F法人は、資本金1000万円未満の新設法人の設立2年以内の事業者免税点制度を悪用し、事業実態のない関係法人を資本金1000万円未満で2年ごとに新設し、新設後2年内の間にF法人の従業員の給与を当該関係法人への外注費の支払と仮装し、架空の仕入税額控除を計上する方法により消費税額(地方消費税を含む。)約1億2000万円を免れていた。
政府は、事業者免税点制度における免税事業者の要件の見直しに向けた取組を行い、現行制度では、課税売上高が1000万円を超えた場合に翌々事業年度から課税事業者となるが、同制度を悪用した法人の新設等による課税逃れを抑制する観点から、課税売上高が1000万円を超えることが事業年度の途中で明らかとなった場合には、翌事業年度から課税事業者とすることとする、消費税法の一部改正を含む、税制改正法案を国会に提出した。そして、同法案は国会の審議を経て可決・成立し、「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第82号)として、23年6月30日に公布され、消費税法に係る上記の改正部分については24年1月1日から施行することとされた。
この改正により消費税の事業者免税点制度については、個人事業者又は法人の課税期間に係る基準期間における課税売上高が1000万円以下である場合において、当該個人事業者又は法人のうち、当該個人事業者又は法人の課税期間に係る次の〔1〕 、〔2〕 などの期間(特定期間)における課税売上高が1000万円を超えるときは、当該個人事業者又は法人のその課税期間については、事業者免税点制度を適用しないことなどとされた。
〔1〕 個人事業者の課税期間の前年1月1日から6月30日までの期間
〔2〕 課税期間の前事業年度(7か月以下であるものなどを除く。)がある法人の当該前事業年度開始の日以後6か月の期間
そして、この改正により特定期間における課税売上高が1000万円を超えるときは、設立2年以内の事業者免税点制度の適用を受けて免税事業者となる期間は短縮されることとなったが、新設法人の納税義務の判定を事業年度開始の日における資本金により行うことには変わりがないため、会計検査院の検査によって明らかになった状況が十分に解消されるまでには至っていないと認められる。