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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成23年10月

消費税の課税期間に係る基準期間がない法人の納税義務の免除について


4 所見

 消費税については、消費一般に幅広く負担を求めるという課税の趣旨等の観点から、免税事業者は極力設けないことが望ましいとされている。一方、小規模事業者の事務処理能力等を勘案して事業者免税点制度が設けられており、新設法人については設立2年以内における納税義務の判定基準として基準期間の課税売上高に代えて資本金を採用し、その事業年度開始の日における資本金1000万円未満の法人を免税事業者としている。
 しかし、従前から資本金1000万円未満の新設法人においても、設立当初の第1期事業年度から相当の売上高を有する法人や設立2年以内の事業者免税点制度を利用した租税回避等を行っている法人が見受けられている。さらに、18年5月に施行された会社法により、最低資本金制度が撤廃され、少額の資本金でも容易に会社を設立することが可能になっている。
 消費税に関する国民の関心が高まっている中で、会計検査院は、上記のような状況を踏まえて、事業者免税点制度が有効かつ公平に機能しているかに着眼して検査したところ、新設法人の納税義務の判定を基準期間の課税売上高に代えて資本金により行っていることにより、次のような状況となっていた。

〔1〕  資本金1000万円未満の新設法人において設立2年以内の事業者免税点制度の適用を受けている法人の中に、設立当初の第1期事業年度から相当の売上高を有する法人が相当数見受けられた。

〔2〕  法人成り後も相当の売上高を有しているのに、第1期課税期間及び第2期課税期間において免税事業者となっている法人が相当数見受けられた。

〔3〕  1000万円未満の資本金で法人を設立し、第2期事業年度の開始の日の翌日以降に増資を行い資本金を1000万円以上にすることなどにより、第1期課税期間及び第2期課税期間において免税事業者となっている法人が見受けられた。

〔4〕  設立2年以内の事業者免税点制度の適用を受けた後の第3期事業年度以降に解散等している法人が見受けられた。

 前記のとおり、「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律」により、事業者免税点制度の適用に関する改正が行われたところであるが、この改正によっても、会計検査院の検査によって明らかになった状況が十分に解消されるまでには至っていないと認められる。
 ついては、今後、消費税に関わる幅広い議論が十分なされるよう、財務省において、消費税の課税の趣旨等の例外として設けられている事業者免税点制度の在り方について、引き続き、様々な視点から不断の検討を行っていくことが肝要である。
 会計検査院としては、今後とも事業者免税点制度を含む消費税全般について、引き続き注視していくこととする。