部局等 | 国土交通本省 | |
独立行政法人住宅金融支援機構 | ||
検査の対象 | 国土交通本省 | |
独立行政法人住宅金融支援機構 | ||
設置根拠法 | 独立行政法人住宅金融支援機構法(平成17年法律第82号) | |
独立行政法人住宅金融支援機構の証券化支援勘定等における政府出資金額 | 6456億5500万円 | (平成22年度末現在) |
上記のうち低減可能な政府出資金額(試算額) | 290億7030万円 |
【意見を表示したものの全文】
独立行政法人住宅金融支援機構の証券化支援勘定等における政府出資金の規模について
(平成23年10月5日付け | 国土交通大臣 独立行政法人住宅金融支援機構理事長 |
宛て) |
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。
記
独立行政法人住宅金融支援機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人住宅金融支援機構法(平成17年法律第82号。以下「機構法」という。)に基づき、民間金融機関から長期・固定金利の住宅ローン債権を買い取り、当該債権を信託銀行等に信託した上で、これを担保とした資産担保証券を発行するなどの事業(以下「証券化支援事業」という。)や、民間金融機関の住宅ローンの保険を引き受けることにより信用補完を行う住宅融資保険事業等を行っている。
そして、機構は、機構法に基づき事業ごとに経理を区分し、証券化支援勘定、住宅融資保険勘定、財形住宅資金貸付勘定、住宅資金貸付等勘定及び既往債権管理勘定の計5勘定を設けて整理することとなっている。また、旧住宅金融公庫から機構への権利及び義務の承継において、旧住宅金融公庫における各事業に係る政府出資金、資産、負債、繰越欠損金等は、機構法に基づきそれぞれ上記の勘定に引き継がれて整理されている。
国は、機構の証券化支援事業等を円滑に実施させるため、財形住宅資金貸付勘定を除く各勘定へ出資を行っている。そして、過去10年間の政府出資金残高の推移をみると、表1 のとおり、証券化支援事業等の拡大に伴って増えてきており、特に平成21年度は、景気対策を目的とした第1次補正予算により事業計画を拡大したため大幅に増加した。その後、「平成21年度第1次補正予算の執行見直し」(平成21年10月閣議決定)や行政刷新会議による事業仕分けの結果等に基づき、政府出資金が事業実績等に見合ったものとなるよう見直しが行われ、22年度に上記の補正予算で措置された政府出資金の一部が国庫返納されるなどした結果、政府出資金残高は22年度末現在で6976億5500万円となっている。
表1 | 政府出資金年度末残高の推移 | (単位:億円) |
区分 | 平成13年度 | 14年度 | 15年度 | 16年度 | 17年度 | 18年度 | 19年度 | 20年度 | 21年度 | 22年度 |
証券化支援勘定 | ― | ― | 40 | 173 | 1,401 | 2,053 | 2,713 | 3,573 | 7,033 | 5,156 |
住宅融資保険勘定 | 180 | 180 | 180 | 180 | 180 | 180 | 180 | 180 | 1,160 | 1,300 |
住宅資金貸付等勘定 | 1,507 | 1,507 | 1,467 | 1,334 | 396 | 208 | 208 | 208 | 724 | 424 |
既往債権管理勘定 | 260 | 96 | 96 | 96 | 96 | 96 | ||||
計 | 1,687 | 1,687 | 1,687 | 1,687 | 2,237 | 2,537 | 3,197 | 4,057 | 9,013 | 6,976 |
注(1) | 住宅金融公庫であった平成18年度以前は勘定名が異なる。政府出資金残高は旧住宅金融公庫から事業ごとに現在の勘定に引き継がれ整理されている。 |
注(2) | 平成16年度以前は現在の住宅資金貸付等勘定と既往債権管理勘定は区分されていない。 |
国土交通省は、機構に対する政府出資金について、出資の目的により次の2種類に分類して、毎年度、勘定ごとにそれぞれの必要額を算定している。
〔1〕 政策として実施する住宅ローン金利の引下げなどに要する費用を出資金の運用益で賄うことを目的とする出資金(以下「運用益対応出資金」という。)
〔2〕 事業を安定的に運営していくため、通常予測される範囲を超える損失に備えることを目的とする出資金(以下「リスク対応出資金(注1)
」という。)
そして、国土交通省は、証券化支援勘定及び住宅融資保険勘定(以下「証券化支援勘定等」という。)については運用益対応出資金とリスク対応出資金の両方の必要額を、住宅資金貸付等勘定及び既往債権管理勘定については運用益対応出資金のみの必要額を、それぞれ算定している
国土交通省は、証券化支援勘定等に対する政府出資金の必要額を次のように算定して、出資を行っている。すなわち、証券化支援勘定の例でみると、運用益対応出資金については、証券化支援事業に係る金利引下げを行うため、想定事業量に対する金利引下げに要する費用を算出して、それを想定される運用利回りで割り戻すなどして算定している。また、リスク対応出資金については、証券化支援事業の想定事業量に過去の実績から算出した損失率(通常予測される範囲を超える損失に係るもの)を乗ずるなどして算定している。そして、国土交通省は、両出資金は出資目的が異なるとして別々に算定している。
上記の算定方法により年度ごとに出資が行われてきたことにより、22年度末における証券化支援勘定等に対する政府出資金残高は6456億5500万円となっており、表2
のとおり、運用益対応出資金として出資されたものが4378億円、リスク対応出資金として出資されたものが2078億5500万円となっている。
表2 | 政府出資金残高の目的別内訳(平成22年度末現在) | (単位:百万円) |
区分 | 運用益対応出資金 | リスク対応出資金 | 計 |
証券化支援勘定 | 361,700 | 153,955 | 515,655 |
住宅融資保険勘定 | 76,100 | 53,900 | 130,000 |
計 | 437,800 | 207,855 | 645,655 |
機構に対する政府出資金については、前記の「平成21年度第1次補正予算の執行見直し」において機構の事業量の見直しが行われて、同補正予算で措置された政府出資金のうち過大とされた事業量に対応した政府出資金2300億円を国庫に返納することとされた。これを受けて、機構は、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)の改正により不要財産の国庫返納等に係る規定が整備された後の23年3月に同額の国庫返納を行った。
さらに、上記の通則法の改正において、独立行政法人は国の出資等に係る不要財産については、遅滞なく、主務大臣の認可を受けて、これを国庫に納付するものとされたこと、また、行政刷新会議による事業仕分けの結果、不要財産の国庫返納を求められたことなどを受けて、機構は、政府出資金の保有額の見直しを行い、証券化支援勘定の出資金残高計5156億5500万円のうち519億円について23年度中の国庫返納を予定している。
一方、行政刷新会議による事業仕分けにおいて、金利引下げに係る財政措置について、出資金により措置する方式から所要額を措置する方式に改めるよう求められ、この結果、21年度第2次補正予算以降、優良住宅取得支援制度(注2)
等を実施するための証券化支援勘定に対する財政措置等については運用益対応出資金により措置するのではなく、補助金により措置することに変更されている。
そして、過去に出資された運用益対応出資金については、当面の間、金利の引下げなどに要する費用を賄うために引き続き保有することとしている。