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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成23年10月

国庫補助金等により都道府県等に設置造成された基金について


 国庫補助金等により都道府県等に設置造成された基金について

検査対象 内閣府、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省
43都道府県、43都道府県管内の市区町村、43都道府県が所管する公益法人その他団体
検査の対象とした基金の概要 都道府県、市区町村、都道府県所管公益法人その他団体が、国庫補助金等の交付を受けて単年度では完結しない特定の目的を持つ事業を行う場合に設置造成するもの
検査の対象とした基金数及び基金保有額 3,859基金 3兆4397億円(平成22年度末)
上記のうち国庫補助金等相当額   2兆8459億円

1 検査の背景

(1) 基金の概要

 国は、都道府県、市区町村、都道府県所管公益法人(注1) その他団体が、基金を設けて単年度では完結しない特定の目的を持つ事業を実施する場合、その基金の設置、積増し又は充当(以下「設置造成」という。)に必要な資金の全部又は一部について、当該都道府県等に国庫補助金又は国庫交付金(以下「国庫補助金等」という。)を直接又は間接に交付している(以下、国庫補助金等の交付を受けて基金を設置造成する都道府県等を総称して「基金事業団体」という。)。

 公益法人  平成18年改正前の民法(明治29年法律第89号)第34条の規定に基づいて設立された社団法人及び財団法人を指す。

 基金事業団体は、国庫補助金等を受け入れて、基金を設置造成し、運用管理しており、設置造成した基金を他の事業の財源と区分して経理し、事業を実施している。そして、基金事業団体のうち、普通地方公共団体は、地方自治法(昭和22年法律第67号)の規定により、特定の目的のため財産を維持し資金を積み立て、又は定額の資金を運用するための基金を設けることができるとされ、また、特定の目的のために財産を取得し、又は資金を積み立てるための基金を設けた場合においては、当該目的のためでなければこれを処分することはできないこととなっている。

(2) 過去の会計検査の状況

 会計検査院は、従来、国庫補助金等により設置造成された基金について検査を行っているところである。
 そして、会計検査院法第30条の3の規定に基づき、平成17年10月に参議院に報告した「国が公益法人等に補助金等を交付して設置造成させている資金等に関する会計検査の結果について 」において、国庫補助金等により国所管の公益法人等に設置造成された基金について、必要に応じて基金事業の終了も含めた所要の措置を積極的に講ずるほか、基金事業に係る見直し時期の設定や目標達成度を測るための基準の策定等見直し体制を整備することが重要と考えられるとの所見を記述している。また、同条の規定に基づき、21年10月に参議院に報告した「各府省所管の公益法人に関する会計検査の結果について 」において、国庫補助金等により国所管の公益法人等に設置造成された基金について、基金の事業実績及び保有倍率を考慮に入れて利用条件や基金規模の検討を常に行うとともに、定量的な目標の策定とこれに基づく適切な目標達成度の評価及び基金事業の見直しに努める必要があるとの所見を記述している。
 これらのほか、会計検査院は、国所管の公益法人等以外の都道府県、都道府県所管の公益法人等に設置造成された基金について、会計検査院法第36条の規定に基づき意見を表示し又は処置を要求するなどしており、平成21年度決算検査報告を例にとると「経済産業省が都道府県等に補助金を交付して都道府県所管の公益法人に造成させている基金について、事業継続の必要性等を検討するための基準等を都道府県等に提示し、これにより不要となる基金のうち国庫補助金相当額を国庫に返納させるなどして、適切かつ有効な活用を図るよう改善の処置を要求したもの 」などを掲記している。

(3) 補助金等の交付により造成された基金等に関する基準

 政府は、前記17年10月の会計検査院の報告後、18年8月に、国庫補助金等の交付を受けて設置造成した基金を保有する国所管の公益法人等(以下「基金法人」という。)が当該基金により実施している事業に関して、当該国庫補助金等を交付した府省が国庫補助金等の交付要綱等に基づく指導監督を行う場合の基準として、「補助金等の交付により造成した基金等に関する基準」(以下「基金基準」という。)を閣議決定している。
 基金基準によると、基金法人に既に設置造成されている基金については、原則として27年度末を超えない範囲で事業を終了する時期を設定することとされ、また、基金法人は定期的に(少なくとも5年に1回)基金の見直しを行うことなどとされている。
 一方、基金基準が国所管の公益法人等の保有している基金を対象としていることから、基金事業団体が保有している基金は基金基準が適用されず、27年度末を超えない範囲で事業を終了する時期を設定すること、定期的に見直しを行うことなどは求められていない。

(4) 20、21両年度の補正予算により設置造成された基金の概要

 政府は、20年9月の世界的な金融危機を受けて、同年10月以降、緊急の経済対策等を行っており、その一環として、20、21両年度の補正予算により、単年度では完結しないが、2か年から3か年の短期間の事業実施を前提とした基金が新規に多数設置造成された(以下、これらの基金を「20・21補正基金」という。)。
 そして、21年度補正予算により設置造成された基金について、財務省は「平成21年度補正予算において設けられた基金等の執行状況等の公表について(連絡)」(平成21年6月19日財務省主計局)により、所管府省に対し、基金の執行状況を把握・公表し、適切かつ効率的な予算執行に努めるよう求めている。