独立行政法人における運営費交付金の状況について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、〔1〕 運営費交付金の交付状況はどのようになっているか、また、運営費交付金の額の算定は適切なものとなっているか。〔2〕 運営費交付金債務を業務の進行に応じて収益化する基準の採用状況はどのようになっているか、また、採用した基準は、独法会計基準等にのっとり、制度の趣旨及び各独立行政法人の業務の実態等に沿ったものとなっているか。〔3〕 中期目標期間の最終年度における運営費交付金債務の期末処理の状況はどのようになっているか、また、国庫に納付される額は適切なものとなっているかなどに着眼して検査を実施した。
検査の結果の概要は次のとおりである。
ア 運営費交付金の額の算定については、控除対象自己収入の額とその実績額との間に相当なかい離が生じているものが見受けられた。
イ 運営費交付金に係る収益化基準の採用状況については、業務と運営費交付金との対応関係が明らかであると認められることから業務達成基準又は期間進行基準を採用することが可能であり、かつ、法人の業務内容からみて、これらの収益化基準を採用することにより業務の進捗状況を反映して適切に収益化を行うことになると認められるのに、費用進行基準のみを採用している法人が見受けられた。
ウ 中期目標期間の最終年度における運営費交付金の処理と積立金の国庫納付の状況については、中期目標期間の最終年度末まで業務運営の財源に充てられずに残った運営費交付金債務の額等が、前期からの繰越欠損金があるなどのため、国庫納付されず、法人内部に留保されているものが見受けられた。
独立行政法人は、国から多額の運営費交付金の交付を受けて運営されており、明確な中期目標の下で、自主的・機動的な組織運営と弾力的な財務運営に努めることなどにより、国民のニーズに即応した効率的な行政サービスを提供することが要請されている。
そのため、独立行政法人においては、より効率的な業務運営に努める必要があるとともに、国の資金の有効活用の観点から、運営費交付金の額の適切な算定及び不要財産の国庫納付に努める必要がある。
したがって、以上の検査の状況を踏まえ、独立行政法人及び関係府省においては、次の点に留意することが必要である。
ア 独立行政法人及び主務府省において、運営費交付金の額の算定に当たり、控除対象自己収入の額がその実績額と相当かい離している場合は、法人における自己収入の増加に対する動機付けにも留意しつつ、適切な額を控除する。
イ 費用進行基準のみを採用している法人において、業務と運営費交付金との対応関係が明らかであり、業務の達成度の確認が可能である場合又は業務の実施と財源との間に期間的な対応関係がある場合は、業務達成基準又は期間進行基準を採用することについての見直しを行う。
ウ 中期目標期間の最終年度末まで業務運営の財源に充てられずに残った運営費交付金債務の額等が国庫納付されずに法人内部に留保されている場合は、遅滞なく、保有する必要性等があるかなどについて検討を行い、不要財産であると認められたものについては国庫納付の手続を行う。
会計検査院としては、今後とも独立行政法人における運営費交付金の状況について引き続き注視していくこととする。