部局等 | 内閣府本府、財務本省 (貸付制度の所掌部局) | ||
沖縄振興開発金融公庫 (貸付けの実施部局) | |||
省エネルギーの促進に係る貸付けの概要 | 沖縄において中小企業者が省エネルギーに資する施設を設置する場合に当該施設を取得するために、必要な資金を貸し付けるもの | ||
省エネルギーの促進に係る貸付件数及び貸付額 | 8件 | 8億1550万円(平成22、23両年度) | |
上記のうち省エネルギー効果要件に沿った事業効果が確認できない貸付件数及び貸付額 | 3件 | 9550万円 |
(平成24年10月26日付け | 内閣総理大臣 財務大臣 |
宛て) |
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。
沖縄振興開発金融公庫(以下「公庫」という。)は、沖縄に住所を有する者で沖縄において事業を営むものに対して小口の事業資金を貸し付け、また、沖縄において事業を行う中小企業者に対して事業の振興に必要な資金を貸し付けている。
そして、沖縄の企業等における省エネルギー(以下「省エネ」という。)の促進、非化石エネルギーの導入、公害防止及び再生資源の有効利用等の環境対策の促進等を図るために、内閣府及び財務省は「環境・エネルギー対策貸付制度要綱」(平成14年府沖振第200号、財政第179号。以下「貸付要綱」という。)を定め、公庫は貸付要綱等に基づき環境・エネルギー対策資金の貸付けを実施している。
環境・エネルギー対策資金のうち、省エネの促進に係る貸付け(以下「省エネ貸付」という。)は、昭和53年度から実施しているもので、中小企業者が、省エネに資する施設、設備等(以下、単に「施設」という。)として貸付要綱に定められた施設を設置して、省エネの推進を図る場合に、当該施設を取得するために必要な資金を通常より有利な貸付条件(貸付利率の引下げ、返済期間の長期化、貸付限度額の拡大等)で貸し付けるものであり、その内容は、沖縄以外の区域において公庫と類似の事業を行っている株式会社日本政策金融公庫(以下「日本公庫」という。)における省エネ貸付とほぼ同様のものとなっている。
省エネ貸付の対象となる施設(以下「貸付対象施設」という。)は、日本公庫の省エネ貸付に係る対象施設の要件と同一であり、貸付要綱の別表(以下「要綱別表」という。)に列挙されている電動送り式金属工作機械、自走式作業用機械設備等の施設(表1
参照)のうち、施設ごとに定められた省エネに資するとされる一定の構造等の要件(以下「構造要件」という。)に該当するなどの施設であって、省エネ効果(注1)
が現在の平均的な施設に対して25%以上のものであること(ただし、施設に比べて40%以上のものであること)という要件(以下「省エネ効果要件」という。)を満たすものにかぎるとされている。
そして、公庫は、省エネ効果要件については、要綱別表に掲げる施設であれば省エネ効果25%以上のものであると判断してよい(ただし、施設の更新の場合は、更新前の施設が耐用年数を経過しており、かつ、更新後の施設が要綱別表に掲げる施設であれば省エネ効果40%以上のものであると判断してよい)などとして取り扱うこととしている。
これは日本公庫における取扱いと同様の取扱いにしているものであり、日本公庫によれば、そのような取扱いとしているのは、日本公庫の省エネ貸付に係る要綱(以下「日本公庫貸付要綱」という。)を定めた中小企業庁が、資源エネルギー庁と協議した上で日本公庫に対して発した「資源エネルギー資金(省エネ関連)の対象施設の可否判断方法について」において、日本公庫による省エネ貸付の実施に当たっての省エネ効果の確認・判断方法として、日本公庫貸付要綱の別表(以下「日本公庫要綱別表」という。)に示されている施設は、省エネ効果が25%以上のものであると確認されているため、当該施設であれば必然的に省エネ効果要件を満たす(ただし、施設の更新の場合には、更新される施設が耐用年数を経過しているのであれば、更新による省エネ効果とこの25%を合わせて40%以上の省エネ効果が見込まれるので、省エネ効果要件を満たす)ものとしてよいとしているためであるとしている。
ヒートポンプ方式熱源装置 | 省エネルギー型麺類製造装置 |
廃熱ボイラー | 省エネルギー型焼成焼上装置 |
省エネルギー型工業炉 | 高熱効率型連続蒸米機 |
コ・ジェネレーションシステム | 高性能ねん糸機 |
染色整理装置 | 高速全自動殖版機 |
単板乾燥装置 | 省エネルギー型鍛造素材切断機 |
せん断機 | 省エネルギー型鋳物砂混練装置 |
高性能ダイカストマシン | 省エネルギー型ショットブラスト |
プレス・タッピング複合加工装置 | 省エネルギー型古紙梱包装置 |
自動温度調整装置 | 省エネルギー型ボイラー |
省エネルギー型鋳型造型機 | 省エネルギー型アーク溶接機 |
高周波誘導加熱装置 | 省エネルギー型乾燥装置 |
熱成形機 | 省エネルギー型染色整理装置 |
精密打抜プレス | 省エネルギー型紙製容器製造装置 |
省エネルギー型フォークリフト | 省エネルギー型製本装置 |
高効率生地連続包あん機 | 省エネルギー型成形機 |
多段ホーマー | 電動送り式金属工作機械 |
外断熱システム | 省エネルギー型プレス |
省エネルギー型ジョークラッシャー> | 無(ひ)杼式自動織機 |
省エネルギー型経編機 | 省エネルギー型ダイカストマシン |
建築物の省エネ性能の向上に資する設備、機器及び建築材料 | プリンタースロッタ |
省エネルギー型印刷機 | 高効率変圧器 |
自走式作業用機械設備 | 燃料電池発電設備 |
油圧解体機 | 省エネルギー型吸収式冷温水器 |
大口径掘削機 | 計51種類 |
省エネルギー電気炉 |
省エネ貸付の制度は創設から30年以上が経過しており、その間の技術進歩等に伴い施設の省エネ性能は近年大きく向上するとともに、優れた省エネ性能を有する施設の普及が進んでいるところであって、制度の創設当時とは状況が大きく異なってきている。
そこで、本院は、有効性等の観点から、貸付けの対象とされた施設の設置により貸付要綱等に定める省エネ効果要件に沿った事業効果が発現しているか、省エネ性能の向上、省エネ性能の高い施設の普及等の状況の変化に応じて貸付対象施設の見直しが行われているかなどに着眼して検査した。
検査に当たっては、公庫が平成22、23両年度に実施した貸付け(22年度貸付件数6件、貸付額計6億5800万円、23年度貸付件数2件、貸付額計1億5750万円、合計8件、貸付額計8億1550万円)を対象として、内閣府本府、財務本省、資源エネルギー庁及び中小企業庁において、要綱別表及び日本公庫要綱別表の各施設の省エネ効果等について説明を聴取したり、公庫の本店において、貸付関係書類により、貸付対象とした個々の施設について説明を聴取したりして実地に検査を行うとともに、資源エネルギー庁及び中小企業庁を通じて各施設に係る業界団体等に対して省エネ性能の状況、施設の普及状況等について調査を行うなどした。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
公庫は、貸付けに当たって、設置される施設が要綱別表に示された施設であり、構造要件に該当するものであることなどを確認しており、日本公庫における取扱いと同様に、これらの施設は省エネ効果要件を満たすものとして、貸付けを行っていた。
貸付対象施設として要綱別表に掲載されている施設及びその構造要件は日本公庫要綱別表と同一であり、中小企業庁等によれば、日本公庫要綱別表に掲載される施設の省エネ効果の確認等は中小企業庁が資源エネルギー庁と共同して行っているとしている。中小企業庁は、3年度に、当時の日本公庫要綱別表に掲載していた全施設について、資源エネルギー庁と共同で、省エネ効果の確認及び構造要件の検討を行い、当時の平均的な施設に対して省エネ効果が25%以上となっていることを確認したとしている。
しかし、23年度において日本公庫要綱別表に掲載されている51種類の施設の大半を占める46種類の施設は3年度当時から掲載されているものであり、特にこのうち36種類の施設については3年度以降構造要件が変更されていないものである。この36種類の施設の省エネ効果については、3年度に確認が行われた後は、17年度にこのうち2種類の施設について検証が行われた記録があるのみで、その他の施設については現在まで検証の記録はなく、これらの各施設が現在の平均的な施設に対してどの程度の省エネ効果があるかなどについては確認できない状況となっている。
そして、内閣府及び財務省は、中小企業庁による上記の省エネ効果の確認、検証等の状況を把握しておらず、要綱別表に定める施設及びその構造要件について、制度発足以来、常に日本公庫貸付要綱と同一の内容としてきている。
上記のとおり、貸付対象施設として要綱別表に掲載されている施設の多くについて省エネ効果が確認できない状況であったため、本院が、各施設の省エネ効果について、資源エネルギー庁及び中小企業庁を通じて、当該施設の製造者等の業界団体等に対して調査を行った(注2) ところ、その回答の結果は表2 のとおりとなっていた。
調査項目 | 調査結果 | ||
設置する施設が構造要件に該当することだけで、現在の平均的な施設に対して25%以上の省エネ効果があるといえるか。 | 25%以上の効果があるといえる。 | 16施設(32.0%) | |
25%以上の効果があるとはいえない。 | 15施設(30.0%) | 34施設(68.0%) | |
25%以上の効果があるかどうか判断できない。 | 19施設(38.0%) | ||
計 | 50施設(100%) |
すなわち、調査の対象とした50種類の施設のうち、設置する施設が構造要件に該当することだけで現在の平均的な施設に対して25%以上の省エネ効果があるといえるとしているものは、省エネルギー型製本装置、省エネルギー型印刷機等16種類の施設にとどまっており、この他の電動送り式金属工作機械、自走式作業用機械設備等34種類の施設については、以下の〔1〕又は〔2〕のとおり、構造要件に該当することだけで一律に省エネ効果要件を満たすとはいえないとしている。
なお、前記で25%以上の省エネ効果があるとされた16種類の施設についても、そのうち7種類の施設については、施設の更新の場合、更新前の施設の構造が更新後の施設の構造と大きく変わらないことなどから、耐用年数を経過していることだけで一律に更新前の施設に比べて40%以上の省エネ効果があるとはいえないなどとしている。
このように、50種類の施設のうち34種類の施設については構造要件に該当することだけで一律に省エネ効果要件を満たすとはいえないと認められるにもかかわらず、日本公庫における取扱いと同様に、構造要件に該当するなどしていれば一律に省エネ効果要件を満たすものとして取り扱っているため、これらに該当する施設に対する貸付け(3件、貸付額計9550万円)については、貸付要綱に定める省エネ効果要件に沿った事業効果があるかどうか確認できないのに貸し付けられていると認められる。
なお、上記の3件のうち23年度に貸し付けられた1件について、本院において、設置された施設の省エネ効果について借受者からその状況を聴取するなどして調査したところ、平均的な施設に対して25%以上の省エネ効果があったことなどについては確認できなかった。
以上のように、貸付要綱に定める省エネ効果要件に沿った事業効果があるか確認できない施設に多額の貸付けが行われている事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、内閣府及び財務省において、日本公庫要綱別表に掲載された施設について、近年の施設の省エネ性能の向上、構造要件を満たす施設の普及等の状況の変化に応じて、省エネ効果の検証、構造要件の見直しなどが中小企業庁において十分に行われていないことを把握しないまま、要綱別表の施設及びその構造要件を日本公庫要綱別表と同一の内容としていて、当該施設を貸付対象とすることの妥当性を検討するなどの貸付要綱の見直しを十分に行っていなかったことなどによると認められる。
省エネ対策については、エネルギーの需給関係の改善、地球温暖化の防止等のため、近年、より一層の取組が必要となっており、内閣府及び財務省においては引き続き沖縄の中小企業者による省エネ施設の設置を支援する必要があるとしているところである。
しかし、現在の省エネ貸付の制度については、貸付要綱において具体的な省エネ効果要件が定められているものの、近年、施設の省エネ性能の向上、構造要件を満たす施設の普及、施設の多種多様化等が進んでいる中で、省エネ効果要件に沿った事業効果があるか確認できない施設に対して多額の貸付けが行われており、省エネ効果要件は実効のあるものとなっていないと認められる。
ついては、内閣府及び財務省において、中小企業庁等と連携するなどして、要綱別表に掲載している施設の省エネ性能や普及状況等に鑑み、これらの施設の省エネ効果を適切に検証したり、省エネ効果の確認・判断方法を見直したりなどして、十分な省エネ効果が期待できなくなっている施設については貸付対象施設から除外するなどの制度の見直しを行うことなどにより、省エネを促進するという制度の目的に沿った効果的な貸付けとするよう意見を表示する。