株式会社整理回収機構(以下「整理回収機構」という。)は、預金保険機構からの委託を受けて同機構に代わり破綻金融機関等から資産を買い取るとともに、買い取った資産の管理及び処分を行うなどの整理回収業務を実施しており、平成11、12両年度の整理回収業務から生じた利益1837億7314万余円を特例業務勘定において余裕資金として保有していた。 これは、13年4月施行の預金保険法(昭和46年法律第34号)の改正により、13年度以降の整理回収業務から生じた利益については全て預金保険機構に納付することとされたが、施行前に生じた利益については、改正後の規定を適用しないこととされたことによるものである。 しかし、同法の改正当時と比べて金融情勢等が変化してきているなどの状況において、上記の利益に係る資金が、整理回収機構に余裕資金として保有されている事態は適切とは認められない。
したがって、金融庁において、上記資金の有効活用を図るため、預金保険機構を通じて国に納付させたり、同機構において今後発生し得る国庫負担に充当したりするなど、国の財政に寄与する方策を検討するよう、内閣府特命担当大臣に対して22年9月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、金融庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。 検査の結果、前記資金の有効活用を図るため、整理回収機構が特定住宅金融専門会社から譲り受けた貸出金債権等の回収等に伴って整理回収機構の住専勘定に生じたいわゆる二次損失の政府負担分に充当するために必要な金額を整理回収機構の特例業務勘定から住専勘定に繰り入れることができることとした預金保険法の一部を改正する法律(注)
(平成23年法律第45号)が23年10月29日に施行された。 そして、金融庁は、本院指摘の趣旨に沿い、関係機関と協議を行った上で、同法に基づき、整理回収機構が11、12両年度に行った整理回収業務から生じた利益に係る資金1837億7314万余円の全額を、二次損失の政府負担分の充当財源として、当該資金を管理している整理回収機構の特例業務勘定から住専勘定に繰り入れるなどの処置を講じていた。
そして、上記の充当財源のうち、二次損失の政府負担分に充当された後の残余の金額が68億3156万余円となったことから、24年7月31日に同額が預金保険機構の住専勘定を通じて国庫に納付された。