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  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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無線システム普及支援事業費等補助金が過大に交付されていたなどのもの


(3) 無線システム普及支援事業費等補助金が過大に交付されていたなどのもの

4件 不当と認める国庫補助金 326,588,000円

 無線システム普及支援事業費等補助金(平成21年度以前は電波遮へい対策事業費等補助金)は、電波法(昭和25年法律第131号)に基づき、携帯電話等の無線通信の利用可能な地域の拡大を図ることや地上デジタルテレビ放送の受信に生ずる障害に対策を講ずることなどを目的として、無線通信を行う電気通信事業者、一般社団法人等の事業主体に対して、国が対策事業に要する経費の全部又は一部について補助するものである。
 本院が、総務本省、3会社及び1社団法人において会計実地検査を行ったところ、4事業主体において次のとおり適切でない事態が見受けられた。

  補助事業者
(事業主体)
補助事業 年度 補助対象事業費 左に対する国庫補助金交付額 不当と認める補助対象事業費 不当と認める国庫補助金相当額 摘要
        千円 千円 千円 千円  
(7) 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ 携帯電話等エリア整備
(73事業)
21〜23 2,485,889 1,657,226 118,373 78,911 補助金の過大交付
(8) ソフトバンクモバイル株式会社
(10事業)
22 102,512 68,340 4,881 3,254
(9) KDDI株式会社
(99事業)
22、23 7,467,768 4,978,472 355,608 237,066

 これらの補助事業は、上記の3事業主体が、携帯電話等の無線通信の利用可能な地域の拡大を図るため、過疎地、辺地等の条件不利地域において、他の電気通信事業者から専用回線による通信サービス等の電気通信役務の提供を受けるなどして、無線通信用施設等の開設に必要な伝送用専用線を整備したものである。
 3事業主体は、182事業について、他の電気通信事業者への支払に係る消費税相当額(計478,863,061円)を加算した事業費10,241,809,853円(うち補助対象事業費計10,056,170,980円)で実施したとして総務本省に実績報告書を提出して、これにより国庫補助金計6,704,038,000円の交付を受けていた。
 消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)は、事業者が課税対象となる取引を行った場合に納税義務が生ずるが、生産及び流通の各段階で重ねて課税されないように、確定申告において、課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除(以下、この控除を「仕入税額控除」という。)する仕組みが採られている。消費税法(昭和63年法律第108号)によれば、事業者の課税売上割合(総売上高に対する課税売上高の割合)が95%以上となっている場合等においては、事業者は、課税仕入れに係る消費税の全額を仕入税額控除することができることとなっている。
  そして、補助事業の事業主体が補助事業の対象となる役務の提供を受けることなども課税仕入れに該当して、上記の仕組みにより確定申告の際に補助事業で提供を受けた役務等に係る消費税額を仕入税額控除した場合には、事業主体は当該役務の提供等に係る消費税を実質的に負担していないこととなる。

 このため、無線システム普及支援事業費等補助金交付要綱(平成17年11月25日総基移第380号)によると、補助事業の事業主体は、交付申請に当たって、仕入税額控除できる部分の金額が明らかな場合は、交付を受けようとする補助金額から、補助対象事業費に含まれる仕入税額控除できる部分の金額に補助率を乗じて得た金額(以下「消費税仕入控除税額」という。)を減額して申請しなければならないとされており、実績報告に当たっても、同様に減額して報告しなければならないとされている。
 しかし、3事業主体は、消費税の確定申告書等において、課税売上割合が95%以上であることなどから、課税仕入れに係る消費税の全額を仕入税額控除することができる消費税法上の事業者に該当して他の電気通信事業者への支払に係る消費税を実質的に負担しないこととなるのに、前記の182事業について、交付を受けようとする補助金額から消費税仕入控除税額を減額していなかったことは適切とは認められない。
 したがって、182事業について、仕入税額控除の対象となる消費税相当額を除いた適正な補助対象事業費を算出すると、前記の補助対象事業費は478,863,061円過大となっており、これに係る国庫補助金相当額319,231,000円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、3事業主体において本件補助事業における消費税の取扱いに対する認識が十分でなかったこと、総務本省において本件補助事業の実績報告書等の審査、確認が十分でなかったことなどによると認められる。

  補助事業者
(事業主体)
補助事業 年度 補助対象事業費 左に対する国庫補助金交付額 不当と認める補助対象事業費 不当と認める国庫補助金相当額 摘要
        千円 千円 千円 千円  
(10) 社団法人デジタル放送推進協会 受信障害対策紛争処理 21 519,837 519,835 7,357 7,357 不完全給付

 この補助事業は、社団法人デジタル放送推進協会が、受信障害対策共聴施設の地上デジタルテレビ放送への対応に当たって、受信者と共聴施設管理者等との間に民事的な紛争が生じた場合に、これら紛争当事者からの相談の受付、法律専門家への相談対応の依頼等の業務を実施したものである。
 同協会は、上記業務の実施に当たって、全国を北海道ブロック等10ブロックに分割した上でブロックごとに業者と業務請負契約を締結していた。そして、同協会は、上記の契約のうち、東北、信越、東海各ブロックの契約について、仕様書において、平成21年8月3日(契約日)から22年3月31日までの間、管理責任者1人及び事務補助要員1人を配置させることとして、それぞれ業者と契約を締結し、契約が適正に履行されたとして、契約金額計88,147,500円の全額を支払っていた。
 しかし、上記3ブロックの契約について業者による業務の履行状況を検査したところ、管理責任者及び事務補助要員が一定期間配置されていないなど、仕様書に定めた契約内容に適合した業務が履行されていなかった。
 したがって、前記3ブロックの契約に係る業務は、前記の仕様書どおりに要員が配置されておらず履行が適切を欠いていて、これに係る国庫補助金計7,357,000円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、同協会において前記業務の履行に対する検収が適切に実施されておらず、適正な実績報告が行われていなかったこと、総務本省においてこれに対する審査及び確認並びに同協会に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

(7)-(10)の計 10,576,006 7,223,873 486,219 326,588