部局等 | 総務本省 | |
検査の対象 | 総務本省 | |
独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構 | ||
設置等の根拠法 | 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法(平成17年法律第101号)、郵政民営化法(平成17年法律第97号) | |
独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構が平成22年度末に保有していた利益剰余金の額 | 郵便貯金勘定 | 295億2190万円 |
簡易生命保険勘定 | 311億9501万円 | |
計 | 607億1692万円 |
記
独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構(以下「機構」という。)は、郵政民営化法(平成17年法律第97号)等の規定により、日本郵政公社(以下「公社」という。)が解散した平成19年10月1日に設立された。公社の民営・分社化(以下「民営化」という。)により設立された株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険は、それぞれ銀行法(昭和56年法律第59号)、保険業法(平成7年法律第105号)等の規定に基づき、銀行業又は生命保険業を営むこととなり、郵便貯金法(昭和22年法律第144号)及び簡易生命保険法(昭和24年法律第68号)は廃止された。そして、民営化前に預入れなどが行われた定額郵便貯金等の郵便貯金及び簡易生命保険については機構が承継したが、それらの管理に当たっては、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17年法律第102号)の規定によりなおその効力を有するものとされる廃止前の郵便貯金法及び簡易生命保険法(以下、それぞれ「旧郵便貯金法」及び「旧簡易生命保険法」という。)の規定によることとされた。
機構は、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法(平成17年法律第101号。以下「機構法」という。)等の規定に基づき、郵便貯金及び簡易生命保険を適正かつ確実に管理し、これらに係る債務を確実に履行することを目的として、郵便貯金の業務(以下「貯金業務」という。)及び簡易生命保険の業務(以下「保険業務」という。)を行っている。そして、機構は、両業務に係る経理を郵便貯金勘定と簡易生命保険勘定に区分して整理している。
また、機構は、機構法等の規定に基づき、貯金業務の一部については株式会社ゆうちょ銀行に、保険業務の一部については株式会社かんぽ生命保険にそれぞれ委託して実施しており、機構自らは、業務委託先の監督のほか、満期を経過した郵便貯金や簡易生命保険の保険金等の受取について預金者及び保険金受取人等に対する周知等を行っている。
独立行政法人を所管する主務大臣は、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)の規定に基づき、3年以上5年以下の期間において独立行政法人が達成すべき業務運営に関する目標(以下「中期目標」という。)を定め、これを当該独立行政法人に指示することとされている。
独立行政法人は、各年度の損益計算において利益を生じたときは、通則法の規定に基づき、前年度から繰り越した損失を埋め、なお残余があるときは、その残余の額を積立金として整理することとされている。
そして、機構は、機構法の規定に基づき、中期目標期間の最終年度に、積立金の額に相当する金額から次期中期目標期間における積立金とすることについて総務大臣の承認を受けた金額を控除してなお残余がある場合には、その残余の額を国庫に納付しなければならないこととされている。
また、22年5月の通則法の改正により、同年11月以降、独立行政法人は、中期目標期間の途中であっても、通則法第8条第3項の規定により、その保有する重要な財産であって主務省令で定めるものが将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる場合には、当該財産(以下「不要財産」という。)を処分しなければならないこととされ、通則法第46条の2第1項の規定により、不要財産であって政府からの出資又は支出に係るものについては、遅滞なく、主務大臣の認可を受けて、これを国庫納付するものとされている。政府も、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22年12月閣議決定。以下「基本方針」という。)において、各独立行政法人が、幅広い資産を対象に自主的な見直しを不断に行うこと、国の資産を有効かつ効率的に活用する観点から、独立行政法人の利益剰余金等について、そもそも当該独立行政法人が保有する必要性があるか、必要な場合でも最小限のものとなっているかについて厳しく検証し、不要と認められるものについては速やかに国庫納付を行うことを掲げている。
ア 権利消滅金
銀行に預け入れられた預金は商事債権とされており、商法(明治32年法律第48号)の規定により、5年間行使しないときは時効によって消滅するとされているが、銀行は時効を援用しないのが通例であり、時効完成後に預金者から払戻請求があればいつでも払戻しを行うとしている。なお、株式会社ゆうちょ銀行は、民営化以降に預入れが行われた貯金については、これと同様な取扱いを行うとしている。
一方、機構が管理する定額郵便貯金等については、満期を迎えた場合及び満期後10年間払戻請求等がない場合、機構が預金者に文書を送付して払戻手続をするよう促し、満期後20年を経過してもなお払戻請求等がない場合には、機構が預金者に対して文書により催告を行っているが、その後2か月以内に払戻請求等がない場合には、旧郵便貯金法の規定により、その貯金に関する預金者の権利は消滅することとされている。この場合、預金者の権利は確定的に消滅することから、預金者から払戻請求等があっても銀行のように払戻しを行うことはできないこととなっており、この取扱いは民営化前から一貫したものとなっている。
そして、機構は、預金者の権利が消滅した貯金の額については、「権利消滅金」として郵便貯金勘定の収益に計上している。
イ 時効完成益
機構が管理する簡易生命保険の保険金等のうち満期となったものなどについては、機構が保険金受取人等に対して文書を送付して、受取手続をするよう促しているが、満期等となった後5年を経過したときは、旧簡易生命保険法の規定により、機構の保険金等の支払義務は時効によって消滅することとされている。そして、機構は、時効が完成した保険金等の額については、「時効完成益」として簡易生命保険勘定の収益に計上している。しかし、機構は、時効完成後に保険金受取人等から保険金等の支払請求があった場合には、時効を援用しないこととして、支払を行うことにしている。
機構の第1期の中期目標期間は19年度から23年度までであるが、22年度までに発生した権利消滅金及び時効完成益は、表1
のとおりであり、その合計額は、それぞれ316億余円、454億余円となっている。また、郵便貯金勘定及び簡易生命保険勘定に計上された当期総利益の全額が積立金として整理されており、22年度末の当期総利益に積立金を加えた利益剰余金は、それぞれ295億余円、311億余円、計607億余円となっている。
年度
\
項目 |
区分
|
平成19
|
20
|
21
|
22
|
計
|
|
郵便貯金勘定
|
権利消滅金(A)
|
収益
|
1,528,092 | 2,992,560
|
3,702,202
|
23,408,964
|
31,631,820
|
当期総利益
|
利益
|
1,211,127
|
2,380,510
|
2,998,724
|
22,931,547
|
×
|
|
積立金
|
純資産
|
—
|
1,211,127
|
3,591,637
|
6,590,361
|
×
|
|
利益剰余金
|
純資産
|
1,211,127
|
3,591,637
|
6,590,361
|
29,521,909
|
×
|
|
簡易生命保険勘定
|
時効完成益(B)
|
収益
|
8,975,130
|
24,144,141
|
6,471,446
|
5,897,942
|
45,488,660
|
当期総利益(△当期総損失)
|
利益(損失)
|
9,025,079
|
23,419,174
|
△5,346,348
|
4,097,106
|
×
|
|
積立金
|
純資産
|
—
|
9,025,079
|
32,444,254
|
27,097,905
|
×
|
|
利益剰余金
|
純資産
|
9,025,079
|
32,444,254
|
27,097,905
|
31,195,012
|
×
|
|
法人単位
|
(A)+(B)
|
収益
|
10,503,222
|
27,136,702
|
10,173,649
|
29,306,906
|
77,120,481
|
当期総利益
(△当期総損失) |
利益
(損失) |
10,236,206
|
25,799,684
|
△2,347,624
|
27,028,654
|
×
|
|
積立金
|
純資産
|
—
|
10,236,206
|
36,035,891
|
33,688,267
|
×
|
|
利益剰余金
|
純資産
|
10,236,206
|
36,035,891
|
33,688,267
|
60,716,921
|
×
|
注(1) | 平成19年度は19年10月1日から20年3月31日までの6か月間である(以下の表において同じ。)。 |
注(2) | 「区分」欄は、その項目が計上されている損益計算書又は貸借対照表における要素を示す(以下の表において同じ。)。 |
本院は、多額に上っている機構の利益剰余金について、有効性等の観点から、通則法改正等の趣旨を踏まえた保有資産の見直しが適切に行われているかなどに着眼して、機構において権利消滅金及び時効完成益に係る経理処理の状況を確認するとともに、貴省及び機構において、機構の利益の処分方針等について見解を徴したり、関係資料の提出を受けたりするなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
貴省は、行政刷新会議が23年9月に、基本方針に基づく各独立行政法人の見直し状況のフォローアップ調査を行った際に、機構が保有している金融資産は、郵便貯金及び簡易生命保険について機構が負っている負債に見合うものとなっており、政府からの出資又は支出に係る不要財産は保有していないと同会議に報告していた。これは、貴省が、機構が保有する積立金は政府からの出資又は支出に係る財産ではないとしていることによるものであり、このため、通則法第46条の2第1項の規定に基づく国庫納付の対象とはならないとしている。また、機構法においても、前記のとおり、中期目標期間の終了時における積立金の処分について定めているにすぎない。このように、現行の法令では、中期目標期間の中途で国庫納付することができるとする規定が設けられているのは政府からの出資又は支出に係る財産に限られていることから、貴省は、機構に対して、積立金を速やかに国庫納付する措置を執るよう求めていなかった。
貴省に設置された政策評価・独立行政法人評価委員会は、通則法の規定に基づき、独立行政法人の中期目標期間終了時に、当該法人の主要な事務及び事業の改廃に関し、主務大臣に勧告ができることとされている。そして、同委員会は、「中期目標期間終了時における独立行政法人の組織・業務全般の見直しについて」(平成15年8月閣議決定)に基づき、23年12月に、「独立行政法人の主要な事務及び事業の改廃に関する勧告の方向性について」(以下「勧告の方向性」という。)を総務大臣に発出している。勧告の方向性においては、機構の積立金の全てが将来にわたり業務を確実に実施する上で必要な資金であるとまでは認め難いことから、機構の解散や、新組織への権利義務承継の動向にも留意し、国の財政事情も踏まえつつ国庫納付の在り方について検討すること、機構法の規定に基づく積立金の処分に当たっては、次期中期目標期間における積立金として整理する金額を厳格に算出することが求められた。機構の解散等の動向にも留意することとされたのは、22年10月に国会に提出され継続審議となっていた郵政改革法案(注) において、「政府は、この法律の施行後三年を目途として、機構が日本郵政公社から承継した郵便貯金及び簡易生命保険に係る債務の減少の状況その他の状況を勘案し、機構の解散について検討を加え、その結果に基づいて所要の法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。」とされていたことによる。
貴省は、勧告の方向性に対して、23年12月に、「独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構の中期目標期間終了時における組織・業務全般の見直し案」を策定し、勧告の方向性における指摘のとおり、積立金の処分に当たっては、次期中期目標期間における積立金として整理する金額を厳格に算出するとともに、国庫納付の在り方については、機構の解散及び新組織への権利義務承継に関する今後の動向にも留意するなどして検討を行うとしている。
しかし、貴省は、次期中期目標期間における積立金として整理する金額について、承認するに当たっての基本的な考え方について整理しているものの、いまだ確定するまでには至っていないとしており、また、国庫納付の在り方については、機構の解散等に関する今後の動向が明確になっていないとして、いまだ検討が行われていない状況となっている。
ア 権利消滅金について
機構は、前記のとおり、毎年度、数十億円以上の権利消滅金を郵便貯金勘定の収益に計上している。
そして、機構が貯金業務を実施するに当たり、資産運用収益等だけでは事業費等の費用に見合う収益が不足しているが、実際に不足する収益は、表2
のとおり、各年度3億余円から7億余円にすぎないことから、各年度とも権利消滅金を主たる源泉として多額の当期総利益が計上されている。そして、多額の権利消滅金が毎年度継続して発生している状況において、翌年度以降も機構が利益剰余金を保有する必要性は乏しいと認められるにもかかわらず、機構はこれを積立金として整理することとなる。その結果、22年度末における当期総利益に積立金を加えた利益剰余金の額は295億余円にも上っている。
年度
\
項目 |
区分 | 平成19 | 20 | 21 | 22 | 計 |
権利消滅金 |
収益 | 1,528,092 | 2,992,560 | 3,702,202 | 23,408,964 | 31,631,820 |
その他利益(△その他損失) |
収益(費用) | △316,965 | △612,050 | △703,478 | △477,416 | △2,109,911 |
当期総利益 |
利益 | 1,211,127 | 2,380,510 | 2,998,724 | 22,931,547 | × |
積立金 |
純資産 | — | 1,211,127 | 3,591,637 | 6,590,361 | × |
利益剰余金 |
純資産 | 1,211,127 | 3,591,637 | 6,590,361 | 29,521,909 | × |
イ 時効完成益について
機構は、前記のとおり、毎年度、数十億円以上の時効完成益を簡易生命保険勘定の収益に計上している。
そして、機構は、前記のとおり、保険金等の時効が完成した場合においても時効を援用しないで保険金受取人等からの支払請求に基づき保険金等を支払うことにしている(以下、この支払金を「時効完成支払金」という。)。機構は、21年度以降、時効完成支払金の支払に備えるため、過去の支払実績に基づく将来の支払見込額を時効保険金等払戻引当金(以下「引当金」という。)として計上している。そして、表3
のとおり、引当金を計上した初年度の21年度は、期末に期首の引当金を93億余円と算出し、時効完成支払金44億余円を引当金の当期減少額とするとともに、期末の引当金を68億余円と計上した上で、引当金の当期増加額に相当する額を18億余円と算出している。また、期首の引当金として算出した93億余円と期末の引当金68億余円の差額25億余円を引当金から戻入するなどして40億余円の経常利益を計上している。21年度は、引当金の計上初年度のため、期首の引当金として算出した額と同額の93億余円を特別損失として計上したことにより、53億余円の当期総損失を計上したが、主に時効完成益を源泉とする利益剰余金の額が20年度末で324億余円計上されていたため、21年度末においてもなお利益剰余金の額は270億余円に上っている。
前記のとおり、時効が完成した保険金等は、機構が時効を援用しないとしている限り、支払請求があれば支払を行うことになることから、時効完成支払金の額は、支払請求の動向に左右されるものであり、各年度において時効完成益を源泉として発生した利益剰余金については、直ちに全額を国庫に納付すべきとまでいえるものではなく、保険業務において機構が保有する必要がある額を算出するに当たっては、貯金業務と比較してより不確定な面があると認められる。しかし、実際の支払請求に対して必要と見込まれる額については前記のとおり引当金によって確保されていることから、更に多額の利益剰余金を機構が保有する必要性は乏しいと認められるにもかかわらず、機構はこれを積立金として整理することとなる。その結果、22年度末における当期総利益に積立金を加えた利益剰余金の額は311億余円にも上っている。
年度
\
項目 |
区分
|
平成19
|
20
|
21
|
22
|
計
|
|
時効完成益 |
収益
|
8,975,130
|
24,144,141
|
6,471,446
|
5,897,942
|
45,488,660
|
|
時効完成支払金 |
費用
|
—
|
792,305
|
4,437,134
|
2,790,856
|
8,020,296
|
|
時効保険金等払戻引当金戻入 |
収益
|
—
|
—
|
2,545,943
|
1,119,327
|
3,665,271
|
|
その他利益 |
収益
(費用) |
49,949
|
67,338
|
△533,656
|
△129,306
|
△545,675
|
|
経常利益 |
利益
|
9,025,079
|
23,419,174
|
4,046,598
|
4,097,106
|
×
|
|
特別損失 |
費用
|
—
|
—
|
9,392,947
|
—
|
9,392,947
|
|
当期総利益 |
利益
(損失) |
9,025,079
|
23,419,174
|
△5,346,348
|
4,097,106
|
×
|
|
積立金 |
純資産
|
—
|
9,025,079
|
32,444,254
|
27,097,905
|
×
|
|
利益剰余金 |
純資産
|
9,025,079
|
32,444,254
|
27,097,905
|
31,195,012
|
×
|
|
時効保険金等払戻引当金 |
期首残高 |
—
|
—
|
—
|
—
(9,392,947)
|
6,847,003
|
×
|
当期増加額
|
—
|
—
|
—
|
11,284,138
(1,891,191) |
1,671,529
|
×
|
|
—
|
—
|
—
|
4,437,134
|
2,790,856
|
×
|
||
期末残高
|
負債
|
—
|
—
|
6,847,003
|
5,727,676
|
×
|
以上のとおり、郵便貯金勘定及び簡易生命保険勘定において、利益剰余金の全額を、中期目標期間中の毎年度、積立金として整理することは、現行の制度に即した取扱いではあるものの、その必要性は乏しいと認められ、22年度までの業務運営においては、利益剰余金の全額を国庫に納付したとしても、簡易生命保険の保険金等の保険金受取人等への支払に支障を生ずることなどはなく、郵便貯金及び簡易生命保険を適正かつ確実に管理し、これらに係る債務を確実に履行するという機構の目的を達成することが困難になることはなかったと認められる。
(改善を必要とする事態)多額の権利消滅金及び時効完成益が毎年度継続して発生していることにより増加を続けている利益剰余金は、機構が業務を確実に履行する上で保有する必要性が乏しいと認められるのに、5年間の中期目標期間が終了するまで保有し続けている事態は適切とは認められず、改善の要があると認められる。
(発生原因)このような事態が生じているのは、現行の制度では、中期目標期間の終了時にのみ積立金の国庫納付を行うこととなっているなどのため、貴省及び機構において、毎年度発生する権利消滅金及び時効完成益を源泉とした利益剰余金の活用についての検討が十分でなかったことなどによると認められる。
3 本院が表示する意見 機構の決算において利益計上されている権利消滅金及び時効完成益は、本来、貯金や保険金等であったものであることから、機構は、これらの発生を最小限に抑えるため、預金者、保険金受取人等に対して、文書による催告等を行っているだけでなく、新聞、ラジオ広告等による周知も実施してきており、今後もより一層こうした取組に努める必要がある。しかし、こうした努力を行ってもなお権利消滅金及び時効完成益の発生が見込まれ、これらを主たる源泉として、郵便貯金勘定及び簡易生命保険勘定において今後も継続して当期総利益が発生することが見込まれる。
一方、我が国の厳しい財政状況に鑑みれば、独立行政法人制度についても抜本的な見直しを行うことなどにより、経済成長や国民生活の向上につなげていくことが不可欠であるとの認識の下、独立行政法人内部における不要資産の留保を防止する仕組みを構築するなどして、独立行政法人の業務運営を適正化する仕組みを導入することなどが求められている。このような状況下において、独立行政法人における不要財産のうち政府からの出資又は支出に係るものについては通則法の規定により遅滞なく国庫に納付するものとされており、基本方針においても独立行政法人の利益剰余金等で不要と認められるものについては速やかに国庫納付することとされている。
したがって、これらの趣旨を踏まえれば、公社から承継することにより機構において管理することとなった郵便貯金の権利消滅金及び簡易生命保険の時効完成益を源泉として生じた利益剰余金についても、貴省がこれを保有する必要性がないと判断した場合には、中期目標期間の終了時に国庫に納付されることとなるものであるから、こうした資産をより有効に活用するためには、機構が利益剰余金を保有する必要性について、中期目標期間の終了を待つことなく、貴省において適時に検討した上で、その必要性がないものについては速やかに国庫に納付させることが必要であると認められる。
ついては、貴省において、機構と共に、機構が業務を履行するために保有する必要がない利益剰余金の額を速やかに把握して国庫に納付させるとともに、関係機関と調整し、国庫納付の在り方について検討した上で、今後は中期目標期間の終了時だけでなく、適時に利益剰余金を国庫に納付させることが可能となるように適切な制度を整備するよう意見を表示する。