会計名及び科目 | 一般会計 (組織)矯正官署 (項)矯正施設民間開放推進費 | |
部局等 | 法務本省、10刑事施設 | |
契約名 | 総務系・処遇系等事務業務、自動車運転管理業務等業務委託等23契約 | |
契約の概要 | 刑事施設において、刑務官等の職員以外の者に実施させることが可能な非権力的業務を民間事業者に請け負わせるもの | |
契約の相手方 | 13会社 | |
契約 | 平成22年4月〜24年3月 一般競争契約 | |
予定価格の積算額 | 7億0921万余円 | (平成22、23両年度) |
低減できた予定価格の積算額 | 5730万円 | (平成22、23両年度) |
法務省は、刑務所、少年刑務所及び拘置所(以下、これらを合わせて「刑事施設」という。)における被収容者の過剰又は高率収容状態に伴う職員の過重な業務負担を軽減し、被収容者に対する処遇の質の向上等を図るため、刑事施設の運営に関する業務のうち刑務官等の職員以外の者に実施させることが可能な非権力的業務(注1)
を民間事業者に請け負わせている。
刑事施設における業務は、〔1〕 総務部門における公文書の接受、人事、経理、領置物の管理等の業務(総務系業務)と、〔2〕 処遇部門及び医務部門における警備、刑務作業、受刑者等に対する各種指導、保健、医療等の業務(処遇系業務)とに大別される。刑事施設は、これらの業務のうちの非権力的業務について、業務ごとに、又は適宜業務を組み合わせるなどして、一般競争入札により民間事業者と業務委託契約を締結している。そして、刑事施設は、業務委託契約に係る予定価格について、積算参考資料、業者からの見積書等を参考にして算出した人件費と、これに諸経費率を乗じた額との合計額に消費税等相当額を加える方法等により積算している。
刑事施設は、上記の業務を請負により実施させることから、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号。以下「区分基準」という。)等の趣旨に照らして、適正な業務実施体制を確保するために、契約書等において、業務担当者に対する業務の遂行に関する指示、業務担当者の管理等を行う業務管理責任者を専任又は業務担当者との兼任で配置することとしている。
また、厚生労働省が作成している区分基準等を解説したパンフレット等によれば、業務管理責任者は専任で配置することが義務付けられているものではなく、業務管理責任者が業務担当者を兼任して業務を実施していたとしても、業務管理責任者としての職務を併せて遂行できる場合には、業務管理責任者が業務担当者を兼任しても差し支えないとされている。
本院は、経済性等の観点から、業務管理責任者に係る人件費の積算は業務の実態等からみて適切なものとなっているかなどに着眼して、17刑事施設(注2)
が平成22、23両年度に締結した業務委託契約計65件、契約額計13億4268万余円を対象として検査を行った。
検査に当たっては、17刑事施設において、契約書、仕様書、予定価格積算内訳書等の関係書類を確認したり、各刑事施設に配置されている業務管理責任者及び業務担当者の業務の実態等を確認したりなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
10刑事施設(注3)
は、計44件(契約額計8億2678万余円)の業務委託契約を締結しており、これらのうち、23件(同6億3624万余円)の業務委託契約は、業務管理責任者を専任で配置することとして、業務を実施させるのに必要な業務担当者の人件費とは別に当該業務管理責任者分の人件費を計上して、予定価格を計7億0921万余円と積算していた。そして、実際にも業務管理責任者が専任で配置されていた。
しかし、前記のとおり、業務管理責任者が業務担当者を兼任して業務を実施していたとしても、業務管理責任者としての職務を併せて遂行できる場合には、業務担当者を兼任しても差し支えないとされている。そこで、10刑事施設に配置されている業務管理責任者及び業務担当者の業務の実態を調査したところ、次のとおりとなっていた。
ア 業務管理責任者が行うこととされている業務のうち、業務担当者に対する指示等は、各業務委託契約の仕様書に定められた日々の業務がほぼ定型的なものであることなどのため、業務管理責任者が各業務担当者に対する特段の指示等を行うことなく遂行されている状況であり、当該指示等は、刑事施設側から特段の指示等があった場合に行われていた。また、業務管理責任者は、業務担当者の管理業務として、日々の業務終了時に、業務担当者が作成した労務管理上必要な業務実施報告書の回収・取りまとめを行ったり、刑事施設等に提出する報告書を作成したりする業務を行っていた。しかし、これらの業務担当者に対する指示、管理等に要する時間は僅かであり、1日のうちの大半の時間は、業務管理責任者としての固有の業務がない状況となっていた。
イ 業務担当者は、上記のとおり、通常は業務管理責任者から特段の指示を受けずに業務を遂行している状況であり、また、業務担当者の中には、業務の都合上、1日の労働時間の中に一定の待機時間を生じている者も見受けられた。
これらのことから、前記23件の業務委託契約において、業務管理責任者が業務担当者を兼任して日々の定型的な業務を実施した上で、上記の待機時間等を使って、業務管理責任者として、適宜他の業務担当者に対する指示、業務管理等を行うことは十分可能であり、また、このような業務実施体制にしたとしても各業務の遂行には特段の支障はないと認められた。
したがって、10刑事施設における前記23件の業務委託契約に係る予定価格の積算に当たっては、専任の業務管理責任者分の人件費を別途計上するのではなく、業務管理責任者が業務担当者を兼任することとして、その分業務担当者1名分の人件費を減じて積算すべきであったと認められた。
現に、7刑事施設(注4)
が締結している各種の業務委託契約に係る予定価格の積算においては、専任の業務管理責任者分の人件費を別途計上せずに、業務管理責任者が業務担当者を兼任することとして積算していた。そして、実際にも業務管理責任者が業務担当者を兼任していたが、業務の遂行に関して特段の支障は生じておらず、また、請負業務としての適正な業務実施体制も確保している状況となっていた。
以上のように、10刑事施設における業務委託契約に係る予定価格の積算に当たり、業務の実態等からみて業務管理責任者が業務担当者を兼任して差し支えないと認められるのに、専任の業務管理責任者を配置することとして積算している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
上記のとおり、業務管理責任者が業務担当者を兼任することとして、10刑事施設が締結した前記23件の業務委託契約に係る予定価格の積算額を修正計算すると計6億5185万余円となり、前記の積算額計7億0921万余円を約5730万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、10刑事施設において、業務管理責任者に係る人件費の積算に当たり、業務管理責任者の業務量等を考慮して経済的な積算を行うことなどについての認識が十分でなかったことにもよるが、法務省において、次のことなどによると認められた。
ア 刑事施設に対して、業務管理責任者が、業務担当者を兼任しても差し支えない場合があるとされていることについての周知徹底が十分でなかったこと
イ 刑事施設に対して、業務管理責任者に係る人件費の積算について、業務管理責任者及び業務担当者の業務の実態を調査するなどして、経済的な積算を行うことについての指導が十分でなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、法務省は、24年9月に刑事施設等に事務連絡を発して、今後、業務委託契約に係る予定価格の積算に当たり、業務管理責任者に係る人件費の積算を業務の実態等からみて適切なものとするよう、次のような処置を講じた。
ア 業務管理責任者は、専任で配置することが義務付けられているものではなく、業務管理責任者が業務担当者を兼任しても差し支えない場合があることを周知徹底した。
イ 業務管理責任者に係る人件費の積算に当たっては、業務管理責任者等の業務の実態を調査するなどして、業務管理責任者が業務担当者を兼任しても差し支えない場合には、業務管理責任者が業務担当者を兼任することとして人件費を積算することとした。