所管、会計名及び科目 | (1) | 外務省所管 一般会計 (組織)外務本省 (項)経済協力費 独立行政法人国際協力機構 一般勘定 |
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(2) | 独立行政法人国際協力機構 一般勘定 | |||
部局等 | (1) | 外務本省 独立行政法人国際協力機構 |
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(2) | 独立行政法人国際協力機構 | |||
政府開発援助の内容 | (1) | 無償資金協力 | ||
(2) | 技術協力 | |||
検査及び現地調査の実施事業数並びにこれらの事業に係る贈与額計又は経費累計額 | (1) | 119事業 | 507億6825万余円 | (平成16年度〜23年度) |
(2) | 33事業 | 74億4135万余円 | (平成16年度〜23年度) | |
計 | 152事業 | |||
援助の効果が十分に発現していないと認められる事業数及び贈与額 | (1) | 1事業 | 6億4835万円 | (背景金額)(平成19年度〜21年度) |
調達した機材の一部が技術移転に十分に活用されていないと認められる事業数及び調達価格 | (2) | 1事業 | 975万円 | (平成22年度) |
贈与額の一部が事業実施機関に保有されたままになっている事業数及び保有されている額 | (1) | 6事業 | 573万円 | (平成19年度) |
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。
記
我が国は、国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と繁栄の確保に資することを目的として、政府開発援助を実施している。 我が国の政府開発援助は毎年度多額に上っており、平成23年度の実績は無償資金協力(注1) 1647億5499万余円、技術協力(注2) 847億5773万余円、円借款(注3) 6097億3369万余円等となっている。
(注1) | 無償資金協力 開発途上にある国又は地域の経済及び社会の開発のための事業に必要な施設の建設、資機材の調達等のために必要な資金を返済の義務を課さないで贈与するもの
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(注2) | 技術協力 開発途上にある国又は地域の経済及び社会の開発に役立つ技術、技能及び知識を移転し、技術水準の向上に寄与することを目的として、技術研修員受入、専門家派遣、機材供与等を行うもの
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(注3) | 円借款 開発途上にある国又は地域の経済及び社会の開発のための基盤造りに貢献する事業等に係る費用を対象として長期かつ低利の資金を貸し付けるもの
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本院は、政府開発援助について、外務省又は独立行政法人国際協力機構(15年9月30日以前は国際協力事業団。以下「機構」という。)が実施している無償資金協力、機構が実施している技術協力及び機構(11年9月30日以前は海外経済協力基金、同年10月1日から20年9月30日までは国際協力銀行)が実施している円借款を対象として、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から次の点に着眼して検査及び現地調査を実施した。
〔1〕 外務省及び機構(以下、これらを合わせて「援助実施機関」という。)は、事前の調査、審査等において、無償資金協力、技術協力及び円借款(以下、これらを合わせて「援助」という。)の対象となる事業が、援助の相手となる国又は地域(以下「相手国」という。)の実情に適応したものであることを十分に検討しているか、また、援助を実施した後に、事業全体の状況を的確に把握、評価して、必要に応じて援助効果発現のために追加的な措置を執っているか。
〔2〕 援助は交換公文、借款契約等に則しているか、援助実施機関は公正な競争に関する国際約束の的確な実施を確保する方策を適切に講じているか。
〔3〕 援助の対象となった施設、機材等は当初計画したとおりに十分に利用されているか、また、事業は援助実施後においても相手国によって順調に運営されているか、さらに、援助対象事業が相手国等が行う他の事業と密接に関連している場合に、その関連事業の実施に当たり、は行等が生じないよう調整されているか。
本院は、外務本省及び機構本部において協力準備調査報告書等により事業の説明を聴取するなどして会計実地検査を行うとともに、在外公館及び機構の在外事務所において事業の実施状況について説明を聴取するなどして会計実地検査を行った。
一方、援助の効果が十分に発現しているかなどを確認するためには、援助実施機関に対する検査のみでは必ずしも十分ではない。このため、本院は、24年次に12か国(注4)
において、調査を要すると認めた無償資金協力119事業(贈与額計507億6825万余円)、技術協力33事業(経費累計額74億4135万余円)、円借款13事業(貸付実行累計額4567億4197万余円)、計165事業について、援助実施機関の職員等の立会いの下に相手国等の協力が得られた範囲内で、相手国の事業実施責任者等から説明を受けたり、事業現場の状況の確認を行ったりなどした。 また、相手国等の保有している資料で調査上必要なものがある場合は、援助実施機関を通じて入手した。
検査及び現地調査を実施したところ、無償資金協力1事業(贈与額計6億4835万円)については、援助の効果が十分に発現していない状況となっていた。 また、技術協力1事業については、調達した機材の一部(調達価格計975万余円)が技術移転に十分に活用されていない状況となっていた。さらに、無償資金協力6事業については、贈与額の一部(計573万余円)が事業実施機関に保有されたままになっていた。
ア 事業の概要
この事業は、ホンジュラス共和国(以下「ホンジュラス」という。)、エルサルバドル共和国(以下「エルサルバドル」という。)両国の交通と貿易の促進等に資するため、両国の国境に架かる老朽化に伴い安全上大きな問題を抱えていたゴアスコラン橋(橋長約146m、許容車両総重量24.5t)の下流側に新たに日本・中米友好橋(橋長170m、許容車両総重量40.8t)を建設するものである。外務省は、この事業に必要な資金として19年5月にホンジュラス政府との間で取り交わした交換公文に基づき、19年度1億3370万円、20年度3億5933万余円、21年度1億5531万余円、計6億4835万円を同国政府に贈与している。
機構は、この事業の実施に先立って18年2月から9月までの間に現地に調査団を派遣し、基本設計の内容及びホンジュラス、エルサルバドル両国の負担事項について、両国と協議及び確認を行い、両国の合意を得て、その結果を同年11月に基本設計調査報告書として作成している。そして、同報告書によれば、橋及び取付道路の建設等は無償資金協力により実施することとなっている一方で、出入国管理、通関業務等を行う施設(以下「国境施設」という。)については、両国がそれぞれ経費を負担して、必要な土地を確保し、計画及び設計を行い、橋が完成する21年5月末までに完成させて供用開始することを機構を交えて確認したとしている。
イ 検査及び現地調査の結果
検査及び現地調査を実施したところ、この事業において、橋は21年5月に完成していたものの、本院の現地調査実施時(24年1月)において、ホンジュラス側の国境施設の建設用地の一部は取得されておらず同施設は着工されていなかった。そして、ホンジュラスは暫定の措置としてコンテナ2個を利用した仮設の国境施設を供用しているが、出入国管理手続を行うための設備等が十分でないために通行が限定されることになり、開通後の通行は大型トレーラー等の国際貨物車両に限られていた。
前記の基本設計調査報告書では、橋と国境施設は密接な関係があるため、十分な連携を図る必要があり、橋が完成するまでに必ず同施設を完成させる必要がある旨が記載されている。しかし、基本設計調査の段階では、その規模、仕様、配置等は決定されておらず、ホンジュラス、エルサルバドル両国の経費負担額、具体的な予算の確保等の国境施設設置の具体案等について同報告書に記載できる状況にはなかった。そして、本院の現地調査実施時においても、同施設の規模、仕様、配置等は決定されていない状況であった。
ア 事業の概要
この事業は、パラグアイ共和国(以下「パラグアイ」という。)において、パラグアイ農業総合試験場が、試験研究の成果や農業技術を広く普及させることなどを目的として実施したものである。 そして、機構は、パラグアイ農牧省の要請を受けて、パラグアイ農業総合試験場に専門家延べ9名を現地に派遣し、大豆新品種の育成・導入選定方法や農薬成分分析方法等の技術移転を実施したとしている。事業実施期間の17年4月1日から22年3月31日までの間の経費累計額は6億4732万余円となっており、このうち派遣専門家が技術移転等に使用するため機構が調達した機材(以下「携行機材」という。)に係る経費は7430万円となっている。
イ 検査及び現地調査の結果
検査及び現地調査を実施したところ、携行機材のうち、分析機器2台(調達価格計975万余円)は、事業最終日である22年3月31日の直前の同月15日に納品されており、専門家が実施する技術移転に供された期間が短く、技術移転に十分に活用されていなかった。
ア 事業の概要
草の根・人間の安全保障無償資金協力は、贈与契約締結日から1年以内に終了する比較的小規模なプロジェクト(原則1000万円以下)に対して、在外公館が中心となって資金を贈与するものである。 そして、贈与に当たっては、事業実施機関が業者と締結した調達契約に基づいて資金を贈与することとなっているが、資金の贈与前に調達契約を締結することが困難な場合は、見積額に基づいて資金を贈与することができることとなっている。また、事業実施機関は使用しなかった資金(以下「未使用資金」という。)がある場合は、在外公館に返還するか、又は在外公館と協議を行い、当初の事業目的を逸脱しない範囲で計画変更して未使用資金を使用することができることとなっている。
アイト・イサフェン村及びティズグランヌ村飲料水供給計画等6事業(注5)
は、モロッコ王国(以下「モロッコ」という。)において、国内の給水が困難な村落における飲料水確保のため、給水供給車両を整備するものである。
これらの事業の実施に当たり、在モロッコ日本国大使館(以下「モロッコ大使館」という。)は、事業実施機関である6地方公共団体(以下「6団体」という。)との間で19年10月に贈与契約をそれぞれ締結して、給水車2台及び揚水ポンプ2台を整備するための資金として、同月に各60,792ユーロ(邦貨換算額893万余円)を贈与している(6事業贈与額計364,752ユーロ、邦貨換算額5361万余円)。
そして、6団体はいずれも、給水車等の調達を入札により実施することとしており、モロッコの法令により入札時には調達資金を保有している必要があるため、モロッコ大使館は見積額に基づいて資金を贈与している。
イ 検査及び現地調査の結果
検査及び現地調査を実施したところ、6団体は、資金の贈与を受けた後、入札を実施し、20年11月までに給水車等を購入していたが、いずれも落札額が贈与額を下回ったため、その差額6事業計573,383.31モロッコ・ディラム(邦貨換算額573万余円)の未使用資金が6団体のそれぞれの口座で保管されていた。その後、モロッコ大使館は、未使用資金を返還させたり、計画変更させたりするために、6団体に対して電話連絡による働きかけなどを行っていたが、本院の現地調査実施時(24年3月)においても返還させたり、計画変更させたりしておらず、未使用資金は6団体に保有されたままになっていた。なお、当該未使用資金は、24年7月までに、6団体の議会においてその返還が承認されている。
以上のように、援助の効果が十分に発現していない事態、調達した機材の一部が技術移転に十分に活用されていない事態及び贈与額の一部が事業実施機関に保有されたままになっている事態は適切とは認められず、外務省又は機構において必要な措置を講じて効果の発現に努めるなどの改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。
ア 日本・中米友好橋建設計画については、基本設計調査報告書の作成時点で橋の供用に必要不可欠な国境施設の規模、仕様、配置等が決定していないにもかかわらず、外務省及び機構において、計画どおりに同施設を建設して橋の供用を開始できるようにするためのホンジュラス政府に対する働きかけが十分でないこと
イ パラグアイ農業総合試験場プロジェクト第2フェーズについては、機構において、技術移転に十分活用できるような携行機材の調達時期の検討が十分でないこと
ウ アイト・イサフェン村及びティズグランヌ村飲料水供給計画等6事業については、外務省において、6団体それぞれに対し、未使用資金が事業実施機関に滞留しないようにするための効果的な働きかけが十分でないこと
援助の効果が十分に発現するなどするよう、次のとおり意見を表示する。
ア 日本・中米友好橋建設計画については、外務省及び機構は、ホンジュラス政府に、国境施設の規模、仕様、配置等を早急に検討したり、必要な土地を早急に取得したりすることなどにより、橋が早期に計画どおりに供用できるよう引き続き働きかけを行うとともに、今後、本件のように、複数国に対して同時に実施する一般プロジェクト無償資金協力において、相手国の負担により建設する施設等であっても、基本設計調査報告書等の作成時点で、その規模、仕様、配置等が決定しておらず、援助の対象となった施設の活用に重大な影響を与えるおそれがあるような場合は、計画どおりに供用ができるように、相手国等と十分な連携を図りながら相手国等への働きかけを十分に行うこと
イ パラグアイ農業総合試験場プロジェクト第2フェーズについては、機構は、今後、携行機材を調達する技術協力の実施に当たっては、技術移転に十分活用できるような携行機材の調達時期の検討を十分に行うこと
ウ アイト・イサフェン村及びティズグランヌ村飲料水供給計画等6事業については、外務省は、6団体に、未使用資金を返還させるとともに、今後、草の根・人間の安全保障無償資金協力において未使用資金が生じている場合は、未使用資金が事業実施機関に滞留しないようにするための効果的な働きかけを十分に行うこと