会計名及び科目 | 一般会計 | 国税収納金整理資金 | (款)歳入組入資金受入 (項)各税受入金 |
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部局等 | 財務本省、9税関 | |||
輸入事後調査の概要 | 輸入貨物に係る納税申告が適正であるか確認し、適正ではない申告を是正するなどする税関による税務調査 | |||
輸入事後調査によって非違が判明した納税申告に係る追徴税額 | 410億7280万余円(平成20事務年度〜22事務年度) | |||
上記のうち6か月以上未確定であった追徴税額 | 11億8851万円 |
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。
外国から貨物を輸入しようとする者(以下「輸入者」という。)は、関税法(昭和29年法律第61号)、消費税法(昭和63年法律第108号)、国税通則法(昭和37年法律第66号)等に基づき、当該貨物の品名、数量、価格その他必要な事項を記載して税関長に輸入申告を行うとともに、当該貨物に課される関税、消費税等を記載して納税申告を行うことなどとなっている。そして、輸入者は、原則として、当該貨物について必要な検査を受け、関税、消費税等を納付して、税関長の輸入許可を受けてから貨物を引き取ることができることとなっている。
関税の算定方法は、関税定率法(明治43年法律第54号)等で定められており、輸入貨物の価格又は数量を課税標準として、これに関税率を乗ずるなどして算定することとなっている。
そして、輸入貨物の課税標準となる価格(以下「課税価格」という。)は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされたときに輸入者により売手に対して又は売手のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に、輸入貨物が輸入港に到着するまでの運送に要する運賃、仲介料等の手数料、輸入者により無償で提供された材料等に要する費用、契約における価格調整条項により遡及して支払われる別払金等の額を加算した価格となっている。これらの加算する額は、複数の輸入貨物に係る費用等が一括して支払われた場合、原則として、個々の輸入貨物に関連する額を案分して算出することとなっているが、輸入者から要請があり、かつ、課税上その他特に支障がないと認められるなどの要件を満たせば、その金額を特定の輸入貨物の課税価格として一括して算入することとして差し支えないこととなっている。そして、この一括算入の取扱いは輸入者が行う納税申告において適用できるものの、税関長が行う更正又は決定(以下「更正等」という。)においては適用できないこととなっている。
また、消費税の算定方法は、消費税法等で定められており、課税標準は関税における課税価格に関税等の額に相当する金額を加算した金額とされている。
そして、納付すべき税額の確定方式は申告納税方式及び賦課課税方式があり、このうち申告納税方式は輸入者の申告により納付すべき税額を確定することを原則とするが、その申告がない場合又はその申告に係る税額の計算が関税定率法等の規定に従っていなかった場合その他当該税額が税関長の調査したところと異なる場合には、税関長の更正等により税額を確定することとなっている。
当初の納税申告に係る税額が過少であり修正申告又は更正が行われる場合には、新たに納付すべき税額の10%(一定金額を超える部分については15%)の過少申告加算税が、当初の納税申告が行われず期限後特例申告(注1)
又は決定が行われる場合には、納付すべき税額の15%(一定金額を超える部分については20%)などの無申告加算税が、輸入者による自主的な修正申告が行われた場合等を除き、それぞれ課されることなどとなっている。
債権を確定させる更正等の賦課権の行使については期間による制限があり、申告納税方式における関税の更正、消費税の更正等の賦課権の除斥期間(注2)
については輸入許可等の日の翌日から3年等となっている。なお、平成23年の関税法、国税通則法等の改正により、23年12月2日以降、上記3年の除斥期間は5年となっている。
(注1) | 期限後特例申告 税関長の承認を受けた者等は、輸入申告時ではなく輸入許可の日の属する月の翌月末日までに特例申告を行うこととなっているが、この提出期限後に行われた特例申告をいう。
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(注2) | 賦課権の除斥期間 税関長が輸入者に対して関税、消費税等の税額を確定するために更正等の賦課権を行使することができる期間であり、起算日は輸入許可等の日の翌日である。
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各税関における調査部門は、関税法、消費税法等に基づき、適正な課税を確保することを目的とする輸入事後調査を実施しており、貨物の輸入通関後、一定の基準で選定した輸入者の事業所等において、輸入貨物についての契約書、仕入書、会計帳簿等を調査し、輸入貨物に係る納税申告が適正であるかを確認し、適正ではない申告を是正するとともに、輸入者に対する適切な申告指導を行うこととなっている。
前記のとおり、税関長は、納税申告に係る税額が調査したところと異なる場合等には更正等により税額を確定することとなっているが、貴省は、更正等により是正する前に、申告納税制度の趣旨に照らし、まずは輸入者による自発的な修正申告又は期限後特例申告(以下「修正申告等」という。)を促すとして、「輸入事後調査事務の実施要領について」(平成13年財関第273号)において、調査部門は、輸入事後調査によって納税申告に係る税額が適正でないこと又は特例申告期限までに特例申告を行っていないこと(以下、これらの事態を「非違」という。)が判明した場合は、原則として修正申告等をしょうよう(慫慂)することとしている。ただし、これに応じない場合その他更正等を行うことが必要と認められる場合には、更正等を行うために調査部門は関係部門等と協議することとなっている。そして、同実施要領において、輸入事後調査を実施した事案については、その処理の迅速化に努めることとされており、特に非違があった事案については、速やかに処理を行うとされ ている。
そして、20事務年度(当該年の7月から翌年の6月まで。以下同じ。)から22事務年度までの輸入事後調査の結果は、表のとおりとなっている。
表 輸入事後調査の結果
(単位:者、千円)
項目 | 平成20事務年度 | 21事務年度 | 22事務年度 | 計 | |
調査を行った輸入者 | 6,080 | 6,204 | 6,031 | 18,315 | |
非違事案のあった輸入者 | 4,188 | 4,356 | 4,226 | 12,770 | |
非違に係る課税価格 | 198,375,018 | 198,043,681 | 193,341,257 | 589,759,957 | |
追徴税額 | 関税 | 1,949,380 | 3,358,751 | 2,935,654 | 8,243,787 |
消費税等 | 10,189,310 | 10,104,218 | 9,814,347 | 30,107,876 | |
加算税 | 829,714 | 1,062,795 | 828,628 | 2,721,137 | |
計 | 12,968,405 | 14,525,765 | 13,578,630 | 41,072,801 |
前記の修正申告等のしょうようは、これまで実務において行われてきたものであるが、23年12月の関税法等の改正により、25年1月から、更正等をすべきと認められる場合には、納税義務者に対して調査結果の内容を説明することとされ、その際、同法等に基づき修正申告等を勧奨することができることとされた。
また、調査部門は、輸入事後調査の結果を通関情報総合判定システム(Customs Intelligent database System。以下「CIS」という。)に登録して調査事績記録票等を作成し、調査部長等の決裁を受けることとなっている(以下、この決裁を受けた日を「事績処理日」という。)。そして、これにより輸入事後調査の結果の内容が確立し、修正申告等をしょうようすることができることとなることから、税関では、事績処理日以降、修正申告等をしょうようし、その修正申告等の提出状況に係る進行管理を行うこととしている。
本院は、合規性等の観点から、輸入事後調査によって非違が判明した場合に、修正申告等又は更正等により速やかに税額を確定し債権として管理しているかなどに着眼して、20事務年度から22事務年度までの間に各税関が実施した輸入事後調査によって非違が判明した納税申告に係る追徴税額計410億7280万余円について、貴省及び9税関(注3) において、輸入納税申告書、関税修正申告書、調査事績記録票等の関係書類やCISのデータ等を確認したり、修正申告等の進行管理等について聴取したりするなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、修正申告等又は更正等により速やかに税額を確定していない事案が多数見受けられた。
そこで、これらについて、賦課権の有無、税額を確定していなかった期間、その理由等を確認するために、事績処理日から6か月以上修正申告等又は更正等により税額を確定していない事案(輸入者が6か月以内に倒産等した事案を除く。)に限定することとして、CISのデータにより、その件数及び納税申告に係る追徴税額を確認したところ、6,426件、11億8851万余円となっていた。
上記の6,426件、11億8851万余円について、24年3月31日時点の状況をみると、修正申告等又は更正等により税額を確定しないまま除斥期間を経過していて、更正等の賦課権が消滅していた事案が、159件、3823万余円あった。これらは、修正申告等又は更正等により速やかに税額を確定し債権として管理していれば、徴収権の時効中断となる督促を行ったり、滞納処分を行ったりすることができたものである。
また、24年3月31日時点において、賦課権の除斥期間内ではあるものの、修正申告等又は更正等により税額を確定していない事案が、1,130件、2億0609万余円あった。これらについて、事績処理日から24年3月31日までの経過期間をみると、1年以上が694件、1億3236万余円、このうち、2年以上が53件、653万余円あった。これらは、賦課権の除斥期間内であることから、速やかに修正申告等に応じていないことを踏まえて、更正等を行うこ とを税関に検討させる必要があると認められる。
そして、残りの5,137件、9億4418万余円は、24年3月31日時点において修正申告等又は更正等により税額を確定していたものの、事績処理日から6か月以上修正申告等又は更正等により税額を確定しておらず、これらについて税額を確定していなかった期間(事績処理日から修正申告等又は更正等により税額を確定する前の日までの期間)をみると、1年以上が2,044件、3億4250万余円、このうち、2年以上が328件、4121万余円となっていた。
上記のように、税関が事績処理日から6か月以上更正等により税額を確定していなかった主な理由を確認したところ、輸入者が資金繰りなどを理由に更正等ではなく修正申告等を希望していたこと、課税価格に算入されていない複数の輸入貨物に係る費用等を個々の輸入貨物の課税価格に合理的に案分するために必要な資料が十分でなかったこと、修正申告等のしょうようのときに具体的な期限を指定していないこと、修正申告等をしょうようしていたものの事績処理日から6か月を経過した後に輸入者が倒産等したこと、修正申告等が行われたと誤認するなど進行管理に不備があったことなどによるとしていた。
税関において、輸入事後調査により非違が判明した場合に、修正申告等又は更正等により税額を確定しないまま除斥期間を経過して更正等の賦課権が消滅していたり、賦課権の除斥期間内ではあるものの修正申告等又は更正等により税額を確定していなかったり、修正申告等又は更正等により税額を確定していたものの確定まで長期間要していたりしている事態は適切ではなく、是正及び是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、申告納税制度の趣旨を重んずるとしていて、税関に対して輸入者が修正申告等を希望していても、そのしょうように速やかに応じなければ更正等を行うことを検討させることについての認識が十分でなかったこと、課税価格に算入されていない複数の輸入貨物に係る費用等を一括算入ではなく合理的に案分するために必要な資料の収集等を十分に行ったり、修正申告等の進行管理を適切に行ったりすることについての税関に対する指導が十分でなかったこと、限られた資料しか収集できない場合等に課税価格に算入されていない複数の輸入貨物に係る費用等を合理的に案分することを慎重に運用するとしてその方法等を十分に検討していなかったことなどによると認められる。
輸入貨物の大幅な増加により輸入申告件数が増大する一方、輸入通関の迅速性が強く要請されており、適正な通関を確保する上で、通関後に行われる輸入事後調査の役割は一層重要となってきている。
ついては、貴省において、既に輸入事後調査によって非違が判明していて賦課権の除斥期間内である事案については、速やかに修正申告等に応じていないことを踏まえて、更正等を行うことを税関に検討させるよう是正の処置を要求するとともに、今後、輸入事後調査によって非違が判明した場合には修正申告等又は更正等により速やかに税額を確定し債権として管理するよう、次のとおり是正改善の処置を求める。
ア 税関に対して、輸入者が修正申告等のしょうように速やかに応じなければ更正等を行うことを検討させるとともに、課税価格に算入されていない複数の輸入貨物に係る費用等を合理的に案分するために必要な資料の収集等を十分に行ったり、修正申告等の進行管理を適切に行ったりするよう指導すること
イ 限られた資料しか収集できない場合等においても課税価格に算入されていない複数の輸入貨物に係る費用等を合理的に案分する方法等を検討して、税関に対して示すこと