会計名及び科目 | 一般会計 (部)雑収入 (款)納付金 (項)独立行政法人造幣局納付金 | ||
部局等 | 財務本省 | ||
販売用貨幣の種別 | プルーフ貨幣セット、銀貨幣 | ||
上記に係る販売収入相当額 | プルーフ貨幣セット | 71億8830万円 | (平成18年度〜23年度) |
銀貨幣 | 9億円 | (平成18、19両年度) | |
プルーフ貨幣セットの販売に係る一般会計の負担相当額 | 1億4449万円 | (平成18年度〜23年度) | |
銀貨幣の販売価格に地金の時価を反映することとしていれば増加したと試算される一般会計の収入額 | 1億2736万円 | (平成18、19両年度) |
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求し及び意見を表示する。
貴省は、毎年度、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(昭和62年法律第42号。以下「通貨法」という。)に基づき、貨幣の製造に関する事務に係る契約を独立行政法人造幣局(以下「造幣局」という。)と締結し、貨幣の製造等を行わせ、その製造等に要した費用を一般会計から支払っている。貨幣には、日本銀行を通じて市中に流通させ経済活動に資するための貨幣(以下「流通用貨幣」という。)と、財務大臣が造幣局に収集家等の一部の者に対し販売させている貨幣(以下「販売用貨幣」という。)とがある。このうち販売用貨幣には、特殊な技術を用いて製造し表面に光沢を持たせた1円から500円までの6種類の貨幣を1枚ずつセットにしてケースに収納したもの(以下「プルーフ貨幣セット」という。)、国家的な記念事業として発行する銀を原材料とした貨幣(以下「銀貨幣」という。)等があり、これらの販売用貨幣は、額面価格で流通用貨幣と同様に使用できることになっている。
貨幣は、国から日本銀行へ交付されることによって発行され、流通用貨幣については日本銀行から市中に流通されるが、販売用貨幣については財務大臣が定めた数量が日本銀行から造幣局に交付され、造幣局が交付された販売用貨幣の額面価格の合計額を日本銀行に支払っている。
販売用貨幣の販売価格は、通貨法第10条第2項に基づき、当該貨幣の製造費用、額面価格のそれぞれを下回らない範囲で、発行枚数及び需要動向を勘案して政令で定めることとされており、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律施行令(昭和63年政令第50号。以下「通貨法施行令」という。)により定められている。
そして、前記のとおり、貨幣の製造費用は一般会計から造幣局に対して支払われ、販売用貨幣が販売された後に、造幣局は、通貨法第10条第5項に基づいて販売した販売用貨幣の販売収入からケースの組立加工費、日本銀行に支払った額面価格等の造幣局の販売に要する費用を控除した金額を一般会計に納付することとされている。
本院は、経済性、有効性等の観点から、販売用貨幣の販売価格が製造費用等を反映した適切なものとなっているかなどに着眼して、貴省本省において、平成18年度から23年度までの間に製造、販売されたプルーフ貨幣セットの販売収入相当額計71億8830万円(製造個数計978,000個)及び18、19両年度に製造、販売された銀貨幣の販売収入相当額計9億円(製造個数計150,000個)、合計80億8830万円を対象として、販売価格及び国庫納付額の算定等の関係書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
プルーフ貨幣セットの販売価格は、通貨法施行令に1個当たり7,350円と定められている。プルーフ貨幣セットは、造幣局が独立行政法人に移行する15年4月以前から毎年度継続して製造、販売されており、上記の販売価格は9年度に改定されたものである。そして、その当時の販売価格の内訳等の資料は保存期限が経過しており、その内容を確認することができなかった。
貴省は、18年度から23年度までの間に製造、販売されたプルーフ貨幣セットの販売価格については各年度の製造費用を上回っていたことから適正であったとしている。
しかし、上記の販売価格は、いずれの年度も製造費用と造幣局の販売に要した費用の合計額を下回っていた。例えば、23年度に製造、販売されたプルーフ貨幣セット(以下「23年度セット」という。)についてみると、販売価格7,350円は、23年度セットの1個当たりの製造費用と造幣局の販売に要した費用の合計額7,647円を297円下回っており、これにより一般会計に23年度セット1個当たり同額の負担が生じていたことになっていた。
プルーフ貨幣セットの貨幣は、販売用貨幣であるから、製造、販売することで原則的に一般会計に負担を生じさせないような販売価格とするのが合理的である。
このことについて、貴省は、プルーフ貨幣セットの貨幣であっても、流通用貨幣と同様に使用できることから、流通用貨幣の製造費用を一般会計が負担していることと同様に、流通用貨幣の製造費用の範囲内で製造費用を一般会計が負担するとしている。
以上のことから、18年度から23年度までの各年度において生じていた一般会計の負担相当額のうち、少なくとも同年度に製造された流通用貨幣の製造費用を除いた負担相当額については、購入者に負担させることとして、販売価格を設定すべきであったと認められる。
したがって、18年度から23年度までの間に、一般会計が流通用貨幣の製造費用を超えて負担していた額計1億4449万円は、購入者に負担させるべきであったと認められる。
銀貨幣の販売価格は、発行が決定される都度、通貨法施行令が改正されて定められている。18年度に製造、販売された国際連合加盟50周年記念銀貨幣(以下「18年度銀貨幣」という。)及び19年度に製造、販売された2007年ユニバーサル技能五輪国際大会記念銀貨幣(以下「19年度銀貨幣」という。)の販売価格は、いずれも6,000円と定められていたが、その当時の販売価格の内訳等の資料は保存期限が経過しており、その内容を確認することができなかった。
貴省は、18年度銀貨幣及び19年度銀貨幣の販売価格についてはそれぞれの製造費用を上回っていたことから、適正であったとしている。
しかし、貴省は、銀貨幣の製造を行わせるため、その原材料である銀の全量について、一般会計に設置されている貨幣回収準備資金が保有していた地金を造幣局に支給していた。このため、貴省は、銀貨幣の製造費用については、原材料費である銀の地金の帳簿価額に造幣局に金銭で支払う加工費等を加えた額にしていた。そして、貴省は、原材料費については、その帳簿価額を回収すれば足りることから、銀の地金の帳簿価額が時価とかい離が生じていたとしても、販売価格に地金の時価を反映させるような検討を行っていなかった。
そこで、18年度銀貨幣及び19年度銀貨幣の原材料費についてみたところ、貴省は支給した銀の帳簿価額である626円及び622円としていたが、これらは17、18両年度末の銀の時価1,331円及び1,598円とはそれぞれ704円及び976円の価格差が生じており、そのかい離率(時価/帳簿価額)は、それぞれ212%及び256%と大幅なものとなっていた。このように帳簿価額と時価には大幅なかい離が生じていたことから、地金の時価を反映させた販売価格としていれば一般会計の収入額を増加させることができたと認められる。
したがって、18年度銀貨幣及び19年度銀貨幣はそれぞれ7万個及び8万個が製造、販売されていたことから、原材料費を地金の時価の1,331円及び1,598円として販売価格の上昇による販売数量への影響を考慮せずに販売価格を設定したとして販売収入額を試算すると、一般会計は18年度銀貨幣で4928万円、19年度銀貨幣で7808万円、計1億2736万円の増収が図られたと認められる。
以上のように、プルーフ貨幣セットについて流通用貨幣の製造費用を超えて一般会計に負担が生じていたり、銀貨幣の販売価格について地金の時価が上昇していることを踏まえて、時価を反映させるなどの検討を十分に行っていなかったりしている事態は適切とは認められず、改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、プルーフ貨幣セットについて、一般会計の負担を流通用貨幣の製造費用の範囲内となるように販売価格を設定する検討が十分でなかったこと、銀貨幣の販売価格について、地金の時価を反映させるなどの検討が十分でなかったことなどによると認められる。
貴省は、国の財政事情が厳しい中で今後も引き続き販売用貨幣を発行することが見込まれる。
ついては、貴省において、プルーフ貨幣セットについて、一般会計の負担を流通用貨幣の製造費用の範囲内となるように販売価格を設定するよう、改善の処置を要求する。
また、貴省において、今後新たに銀貨幣の発行を決定する際には、原材料として使用している地金の時価を販売価格に反映させる方策を検討するなどして、需要動向を勘案した上で、一般会計の収入額の増加に努めるよう、意見を表示する。