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  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
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次世代アスリート特別強化推進事業等の委託に当たり、支払の事実のない賃金を再委託費に含めるなどしていたため、委託費の支払額が過大となっていたもの


(25) 次世代アスリート特別強化推進事業等の委託に当たり、支払の事実のない賃金を再委託費に含めるなどしていたため、委託費の支払額が過大となっていたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)文部科学本省 (項)スポーツ振興費
部局等 文部科学本省
契約名 競技力向上ナショナルプロジェクトにおける「特別強化2016プラン推進事業」(平成21年度)
競技力向上ナショナルプロジェクトにおける「次世代アスリート特別強化推進事業」(平成22年度)
契約の概要 オリンピック競技大会でメダルの獲得が期待できるスポーツ団体に強化プランに基づく強化活動全体を統括する責任者等を配置して、強化活動に継続して専従させるもの
契約の相手方 財団法人日本オリンピック委員会(平成23年4月1日以降は公益財団法人日本オリンピック委員会)
契約 平成21年4月、22年4月 随意契約
支払額
619,295,278円
 (平成21、22両年度)

過大となっていた支払額
3,877,901円
 (平成21、22両年度)

1 委託事業等の概要

(1) 委託事業の概要

 文部科学本省(以下「本省」という。)は、オリンピック競技大会でメダルの獲得が期待できるスポーツの振興のための事業を行うことを主たる目的とする団体(以下「スポーツ団体」という。)に強化活動全体を統括する責任者等(以下「ナショナルコーチ等」という。)を配置し、強化活動に継続して専従させる次世代アスリート特別強化推進事業等を、企画競争による随意契約により、財団法人日本オリンピック委員会(平成23年4月1日以降は公益財団法人日本オリンピック委員会。以下「JOC」という。)に委託している(以下、この委託により実施する事業を「委託事業」という。)。そして、本省は、JOCと締結した委託契約に基づき、委託事業の完了等に伴いJOCから提出された完了報告書を審査するなどした上で、21年度210,570,985円、22年度408,724,293円、計619,295,278円の委託費をJOCに支払っている。

(2) 再委託事業の概要

 JOCは、委託事業をより効率的に実施するために、ナショナルコーチ等の配置に係る労務管理等の事業の一部を、21年度は14スポーツ団体に、22年度は18スポーツ団体に、それぞれ再委託することとして(以下、この再委託により実施する事業を「再委託事業」という。)、各スポーツ団体との間で委託契約(以下「再委託契約」という。)を締結している。再委託契約に係る契約書等によると、再委託事業の対象となる経費は賃金、社会保険料及び謝金とされていて、各スポーツ団体は再委託事業の完了等に伴い、事業収支決算書等を添付した事業実施報告書をJOCに提出しなければならないとされている。
 そして、JOCは、各スポーツ団体から提出された事業実施報告書を精査するなどして再委託事業に要した経費(以下「再委託費」という。)の額を確定し、これを支払うこととしている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、委託費は委託事業の目的に沿って適正に支払われているかなどに着眼して、本省が21、22両年度にJOCに支払った前記の委託費を対象に、本省及びJOCにおいて、委託契約に係る完了報告書、再委託契約に係る事業実施報告書等の関係書類により会計実地検査を行うとともに、各スポーツ団体における再委託費の支払状況等について調査した。

(2) 検査の結果

 検査したところ、21、22両年度にJOCが委託事業を再委託している3スポーツ団体(注) の3再委託契約(再委託費の確定額計64,934,811円)において、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた(ア及びイには事態が重複しているものが1スポーツ団体、1再委託契約ある。)。

ア 実際にはナショナルコーチ等に賃金として支給せずにスポーツ団体に滞留していた額を再委託費に含めていたもの

2スポーツ団体 2再委託契約 上記に係る再委託費 2,142,018円

イ ナショナルコーチ等に対して当該年度に賃金として支給せずに翌年度の7月に賞与として支給していた額を当該年度の再委託費に含めていたもの

1スポーツ団体 1再委託契約 上記に係る再委託費 1,279,763円

ウ 雇用契約を締結しておらず、スポーツ団体が納付していないナショナルコーチ等に係る社会保険料の額を再委託費に含めていたもの

1スポーツ団体 1再委託契約 上記に係る再委託費 456,120円

 したがって、上記の適切とは認められない事態に係る再委託費の額を減額して前記の3再委託契約に係る適正な再委託費の額を算定すると計61,056,910円となることから、前記再委託費の確定額計64,934,811円との差額3,877,901円が過大に支払われており、ひいては委託事業に係る委託費が同額過大に支払われていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、3スポーツ団体において再委託費を適正に算定していなかったのに、JOCにおいて、3スポーツ団体から提出された事業実施報告書に対する審査及び確認が十分でなかったこと、本省において、JOCから提出された完了報告書に対する審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。

3スポーツ団体  財団法人日本レスリング協会、財団法人日本卓球協会(平成24年4月1日以降は公益財団法人日本卓球協会)、社団法人日本フェンシング協会