公立高等学校授業料不徴収交付金(以下「交付金」という。)は、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的とする「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(平成22年法律第18号)等に基づき、国が地方公共団体に対して交付するものである。
交付金の交付額は、同法によると、同法の「公立高等学校(注)
については、授業料を徴収しないものとする。」との規定の適用がないとしたならば、地方公共団体が徴収することとなる年間の授業料に相当す額(以下「年間授業料相当額」という。)に相当する金額とされている。そして、年間授業料相当額については、「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行令」(平成22年政令第112号)に基づき、当該地方公共団体に係る公立高等学校に当該年度の10月1日に在学する生徒の数を公立高等学校基礎授業料月額の12倍に相当する額に乗じて得た額に、文部科学大臣が財務大臣と協議して定める率を乗じて算定するとされている。また、文部科学省は、交付金の算定対象とする生徒の数には、学年による教育課程の区分を設けず決められた単位を修得すれば卒業が認められる単位制の公立高等学校に在学している生徒のうち、受講する教科の単位登録をしていない生徒の数を含めないとしている。
本院が、交付金の算定等について、23都道府県及び1市において会計実地検査を行ったところ、次のような事態が見受けられた。
部局等 | 補助事業者 (事業主体) |
年度 | 年間授業料相当額 | 左に対する交付金交付額 |
不当と認める年間授業料相当額 |
不当と認める交付金交付額 | 摘要 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(30) | 山口県 | 山口県 | 22 | 2,633,749 | 2,633,749 | 3,527 | 3,527 | 交付金の算定対象とならない生徒を含めていたもの |
山口県は、平成22年度に、10月1日に県立高等学校に在学していた生徒28,148人に係る年間授業料相当額を2,633,749,721円と算定し、同額の交付金の交付を受けていた。
しかし、上記の28,148人の中には、単位制の県立高等学校に在学しているものの受講する教科の単位登録をしていない生徒655人が含まれていた。
したがって、上記の655人を交付金の算定対象とする生徒の数に含めずに適正な交付金の交付額を算定すると2,630,222,201円となり、交付金3,527,520円が過大に交付されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、交付金の算定対象とする生徒の数についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。