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  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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民間スポーツ振興費等補助金が過大に交付されていたもの


(8) 民間スポーツ振興費等補助金が過大に交付されていたもの

1件 不当と認める国庫補助金 43,989,000円

 民間スポーツ振興費等補助金(以下「国庫補助金」という。)は、平成23年8月23日まではスポーツ振興法(昭和36年法律第141号)に基づき、また、同月24日以降はスポーツ基本法(平成23年法律第78号)に基づき、我が国のスポーツの振興に寄与することを目的として財団法人日本オリンピック委員会(23年4月1日以降は「公益財団法人日本オリンピック委員会」。以下「JOC」という。)等が行う選手強化事業等に要する費用に対してその経費の一部を国が補助するものである。この補助金の交付額は、上記の選手強化事業等を実施するために必要な経費のうち文部科学大臣が認める経費を補助対象経費として、これに対して予算の範囲内で定額を交付することとなっている。
  本院が、JOCにおいて会計実地検査を行ったところ、次のような事態が見受けられた。

部局等 補助事業者
(事業主体)
補助事業 年度 補助対象経費

左に対する国庫補助金交付額

不当と認める補助対象経費

不当と認める国庫補助金 摘要
千円 千円 千円 千円  
(39) 文部科学本省 財団法人日本オリンピック委員会 選手強化 18〜22 16,779,014 11,258,886 65,957 43,989 専任コーチ等が謝金を実質的に受領していないものなど

 JOCは、選手強化事業の一環として、世界で活躍するトップアスリートの育成を目的とする専任コーチ等設置事業、各競技のオリンピック強化指定選手及びナショナルチームの強化を目的とする強化合宿事業等を行っている。
 このうち、専任コーチ等設置事業はJOCに加盟して、スポーツの振興のための事業を行うことを主たる目的とする団体(以下「スポーツ団体」という。)に、専任コーチ等を設置して、選手の育成、強化等を推進するものである。専任コーチ等は、JOCが定める専任コーチ等に関する規則に基づき、年間を通して活動することとされ、原則として四半期ごとに、その活動状況を活動報告書に記載して、スポーツ団体を経由してJOCに提出することとされている。そして、JOCは、毎月、専任コーチ等に対して謝金を支払っており、その負担については、JOCが国庫補助金を財源として3分の2を、また、スポーツ団体が3分の1をそれぞれ負担することとされている(以下、スポーツ団体が負担する額を「団体負担金」という。)。
 また、強化合宿事業等は、JOCがスポーツ団体に委託して実施するものであり、JOCは、スポーツ団体から提出される実施報告書に基づき、国庫補助金を財源として委託金の対象となる経費の合計に3分の2を乗ずるなどして算定した額により委託金の額を確定しスポーツ団体に支払っている。この委託金の対象経費は、選手等の渡航費、滞在費、旅費、謝金等とされているが、別途国庫補助による助成等を受けている専任コーチ等に対する謝金は委託金の対象にならない経費とされている。
 しかし、専任コーチ等設置事業として5スポーツ団体(注1) に設置された専任コーチ等計12名は、団体負担金の負担の回避を目的として、JOCから受領した謝金の一部をスポーツ団体に寄附(以下「負担回避目的の寄附」という。)していたり、1スポーツ団体(注2) に設置された専任コーチ等4名は、JOCから受領した謝金の大半を当該スポーツ団体の役員に渡していたりしていて、これらに係る謝金計43,676,460円を実質的に受領していなかった。また、3スポーツ団体(注3) に設置された専任コーチ等計3名は、専任コーチ等としての活動をほとんど行っていない期間があるなど、その間は、専任コーチ等としての実態が認められなかったにもかかわらず、謝金計21,690,000円が支払われていた。
 このほか、JOCは、強化合宿事業等において、委託金の対象にならない専任コーチ等に対する謝金計590,665円を含めて委託金の額を確定していた。
 したがって、専任コーチ等設置事業において負担回避目的の寄附により専任コーチ等が実質的に受領していないなどの謝金計65,366,460円に係る国庫補助金計43,577,000円及び強化合宿事業等において委託金の対象にならない謝金計590,665円に係る国庫補助金計412,000円、合計43,989,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
  このような事態が生じていたのは、JOCにおいて、専任コーチ等及びスポーツ団体に対する専任コーチ等設置事業の制度の遵守に関する指導等が十分でなかったこと、スポーツ団体から提出された専任コーチ等の活動報告書、実施報告書等の審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。

(注1)
 5スポーツ団体  社団法人日本ホッケー協会、社団法人日本近代五種・バイアスロン連合(平成23年4月1日以降は社団法人日本近代五種協会(24年4月1日以降は公益社団法人日本近代五種協会)及び一般社団法人日本バイアスロン連盟)、公益社団法人日本カヌー連盟(22年4月7日以前は社団法人日本カヌー連盟)、社団法人日本馬術連盟(24年4月1日以降は公益社団法人日本馬術連盟)、社団法人日本フェンシング協会
(注2)
 1スポーツ団体  社団法人全日本テコンドー協会(平成24年4月1日以降は公益社団法人全日本テコンドー協会)
(注3)
 3スポーツ団体  社団法人日本近代五種・バイアスロン連合、財団法人日本自転車競技連盟、財団法人日本バドミントン協会(平成23年4月1日以降は公益財団法人日本バドミントン協会)