会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)国立ハンセン病療養所 (項)国立ハンセン病療養所共通費 (項)国立ハンセン病療養所施設費 |
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部局等 | 国立療養所松丘保養園 | ||
工事名 | (1) | 国立療養所松丘保養園不自由者棟更新築整備その他工事 | |
(2) | 汽缶棟貫流ボイラー1号缶缶体他部品取替 | ||
工事の概要 | (1) | 多管式小型貫流ボイラー4基の導入工事等を行うもの | |
(2) | 多管式小型貫流ボイラー1基の缶体等の取替えを行うもの | ||
工事費 | (1) | 244,650,000円 | |
(2) | 4,725,000円 | ||
計 | 249,375,000円 | ||
請負人 | (1) | 内海工業株式会社 | |
(2) | 株式会社ムラバヤシ | ||
契約 | (1) | 平成17年10月 一般競争契約 | |
(2) | 平成22年 3月 一般競争契約 | ||
支払 | (1) | 平成18年 1月、4月 | |
(2) | 平成22年 4月 | ||
不当と認める工事費 | (1) | 57,355,231円 | (平成17年度) |
(2) | 4,725,000円 | (平成21年度) | |
計 | 62,080,231円 |
国立療養所松丘保養園(青森県青森市所在。以下「療養所」という。)は、平成17年度に、国立療養所松丘保養園不自由者棟更新築整備その他工事(以下「更新築工事」という。)を工事費244,650,000円で実施している。更新築工事は、不自由者棟更新築整備工事、汽缶更新工事、園内融雪道路整備工事等で構成されており、このうち汽缶更新工事は、多管式小型貫流ボイラー(注1)
(以下「貫流ボイラー」という。参考図
参照)4基を導入するものであり、これにより、療養所は、18年3月から貫流ボイラーの稼働を開始している。
その後、療養所は、21年1月から5月までの間に、設置した貫流ボイラーの附属機器であるエコノマイザー(注2)
4基から水漏れが発生し、同年5月に貫流ボイラー缶体1基からも水漏れが発生したため、21年度に、汽缶棟貫流ボイラー1号缶缶体他部品取替(以下「缶体等取 替工事」という。)を工事費4,725,000円で実施し、貫流ボイラーの缶体及びエコノマイザー(以下、これらを合わせて「缶体等」という。)各1基の取替えを行っている。なお、療養所は、残りの3基の貫流ボイラーについては、エコノマイザーの使用を中止したまま使用していたが、そのうち1基については、23年5月に缶体から水漏れが発生したため使用を中止している。
(注1) | 多管式小型貫流ボイラー 給水ポンプによって水管の一端から押し込んだ水を伝熱面である水管を通して加熱し、他端から蒸気として発生させる構造のボイラーで、多数の水管によって構成されたものを多管式貫流ボイラーという。
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(注2) | エコノマイザー 排気ガスの熱を利用して燃費を向上させるためのボイラーの附属設備で、排気ガスの煙道に配置する。
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本院は、療養所において、本件両工事について、合規性等の観点から、機器の仕様は適切に検討されていたかなどに着眼して、機械設備工事特記仕様書等(以下「特記仕様書等」という。)の関係書類や設置した貫流ボイラー等を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、療養所は、更新築工事を実施するに当たり、不自由者棟更新築整備工事等の部分については、特記仕様書等の作成を設計業者に委託していたが、汽缶更新工事の部分については、厚生労働本省(以下「本省」という。)が作成した基本設計概要書に基づき、本省の助言及び確認を受けるなどして自ら特記仕様書等を作成していた。
しかし、療養所は、参考とした貫流ボイラーの製品カタログに、エコノマイザー付きの貫流ボイラーを使用する場合にはエコノマイザーへの給水温度を上げる必要がある旨の記載があったのに、これを十分確認していなかった。このため、療養所は、特記仕様書等において、貫流ボイラーの附属機器としてエコノマイザーを設置するよう記載する一方で、エコノマイザーへの給水温度を上げるための装置(以下「給水加熱装置」という。)を設置することについて記載していなかった。さらに、療養所は、更新築工事の際に請負業者から提出された療養所に納入される貫流ボイラーの性能、仕様等を示した書類(以下「納入仕様書」という。)に、「給水温度は50℃以上で使用すること」と明記されていたのに、これについても十分確認しないまま工事を完了させていた。
また、療養所は、缶体等取替工事を実施するに当たっても、更新築工事と同様に、給水加熱装置を設置せずに工事を完了させていた。
このような経緯により、本来必要な給水加熱装置が設置されなかった本件貫流ボイラーは、エコノマイザーへの給水温度が低いことによりエコノマイザーに結露が発生し、その水分と排気ガス中の硫黄分との化学反応により硫酸が生成され、缶体等の金属が腐食して、水漏れが発生したり、水漏れが発生していない缶体等についても今後水漏れが発生するおそれのある状態になっていたりしていた。
したがって、更新築工事において貫流ボイラーに給水加熱装置を設置していないこと、缶体等取替工事においても給水加熱装置を設置することなく缶体等の取替えのみを行っていることなどから、4基の貫流ボイラーが法定耐用年数(15年)より大幅に短い期間で使用できなくなるおそれのある状態になるなどしていて、更新築工事のうち汽缶更新工事(工事費相当額57,355,231円)及び缶体等取替工事(工事費4,725,000円)は工事の目的を達しておらず、工事費相当額計62,080,231円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、療養所において、貫流ボイラーの仕様の検討や納入仕様書の確認が十分でなかったこと、本省において、療養所に対する指導が十分でなかったこと、療養所から提出された特記仕様書等の確認が十分でなかったことなどによると認められる。
貫流ボイラーの概念図