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  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
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労働者災害補償保険の保険給付に要した費用のうち事業主から徴収すべき額を徴収していなかったり、誤って徴収する必要がない額を徴収したりなどしていたもの


(188)—(192) 労働者災害補償保険の保険給付に要した費用のうち事業主から徴収すべき額を徴収していなかったり、誤って徴収する必要がない額を徴収したりなどしていたもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(労災勘定) (款)雑収入 (項)雑収入
部局等 5労働局
費用徴収の根拠 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)
費用徴収の概要 事業主が労働保険料の一般保険料を納付しない期間中に発生した事故等について、労働者災害補償保険法の規定により保険給付に要した費用の全部又は一部を事業主から徴収するもの
費用徴収を行っていなかった件数及び額 38件 6,543,643円 (平成18年度〜22年度)
誤って費用徴収を行っていた件数及び額 2件 4,870,515円 (平成18、19、22各年度)

1 費用徴収の概要

(1) 費用徴収

 労働者災害補償保険は、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号。以下「労災保険法」という。)の規定に基づき、労働者の業務上の事由又は通勤による負傷、疾病等に対して療養の給付等の保険給付等を行うものである。
 このうち、保険給付が、事業主が労働保険料の一般保険料を納付しない期間中に発生した事故等について行われた場合には、労災保険法の規定により、都道府県労働局(以下「労働局」という。)はその保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部を同事業主から徴収すること(以下「費用徴収」という。)ができることとされている。

(2) 費用徴収の手続

 費用徴収は、「労働者災害補償保険法第25条(事業主からの費用徴収)の規定の取扱いについて」(昭和47年基発第643号労働省労働基準局長通達)等に基づき、次のとおり行うこととされている( 参照)。

費用徴収の手続(概要)

図費用徴収の手続(概要)

〔1〕 労働基準監督署長は、事業主が一般保険料を「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」(昭和44年法律第84号。以下「徴収法」という。)第27条の規定による督促状で指定した期限内に納付していないなど、通達等で定めた費用徴収の適用の範囲に含まれる事故(以下「費用徴収対象事案」という。)について保険給付を行った場合は、療養を開始した日(即死の場合は事故発生の日)の翌日から起算して3年以内の期間において、支給事由の生じた当該事故に係る休業補償給付、障害補償給付等の保険給付が行われる都度、都道府県労働局長(以下「労働局長」という。)に対してその旨の保険給付通知書(以下「通知書」という。)を送付する。

〔2〕 労働局長は、通知書の送付を受けた後、その内容を審査検討した上で、費用徴収の必要性の有無の判断を行い、費用徴収を行うべきと判断した事案については、通知書の送付を受ける都度、費用徴収の決定を行い、事業主に対して保険給付の額に厚生労働省で定めた割合を乗じて得た額(以下「費用徴収金」という。)を費用徴収を行う旨を通知するとともに、納入告知書を送付する。

 なお、労災保険法において準用する徴収法により、費用徴収金を徴収する権利は保険給付から2年を経過したときは時効によって消滅することとなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、全国47労働局のうち23労働局において、合規性等の観点から、労災保険法等に基づき費用徴収が適正になされているかなどに着眼して、平成18年度から22年度までの間に発生した業務上の事由等による事故について行った保険給付を対象に、滞納事業場名簿等の書類により会計実地検査を実施した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に当該労働局に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 費用徴収過不足の事態

 検査の結果、北海道、埼玉、神奈川、山口、長崎各労働局において、費用徴収対象事案38件の保険給付計54,460,677円に係る費用徴収金計20,102,126円のうち計6,543,643円について徴収していなかったり、2件の保険給付計12,176,297円は費用徴収の対象とならないのに、これに係る費用徴収金計4,870,515円を誤って徴収していたりなどしていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、上記の5労働局及び管内の労働基準監督署において、事業主からの費用徴収の必要性についての認識が十分でなく、その取扱いが徹底されていなかったことなどによると認められる。
 前記の事態を態様別に示すと、次のとおりである。

ア 費用徴収対象事案であるのに、労働基準監督署が労働局へ通知書を送付していなかったなどのため、労働局において費用徴収金の徴収決定等が行われず、徴収していなかったもの(時効が成立したものも含む。)

イ 費用徴収の対象とならない事案であるのに、労働局が誤って費用徴収の必要性があると判断したため、費用徴収金の徴収決定等が行われて、徴収するなどしていたもの上記アの事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

 北海道労働局管内の札幌東労働基準監督署は、業務上の事由により負傷した労働者Aから請求のあった休業補償給付等計4,994,477円を支給決定していた。
 しかし、同労働基準監督署は、事業主が一般保険料を納付しない期間中に発生した事故に係る保険給付であったのに、休業補償給付等計4,994,477円について、特段の理由もなく同労働局へ通知書の送付をしていなかった。
 その結果、上記の保険給付計4,994,477円に係る費用徴収金計1,824,119円について徴収決定等が行われておらず、同額が徴収されていなかった。
 そして、このうち計1,186,061円については、既に時効が成立しているため、徴収することができなかった。

 なお、本院の指摘により、時効が成立しているものを除いた費用徴収金については、全て徴収決定の処置が執られ、また、誤った徴収決定等により既に納付されていた徴収する必要がない費用徴収金については、全て還付決定の処置が執られた。
 これらを労働局別に示すと次のとおりである。

  労働局名 費用徴収を行っていなかった件数 左の額 誤って費用徴収を行っていた件数 左の額(△)
      千円   千円
(188) 北海道 19 4,107
(189) 埼玉 6 930
(190) 神奈川 10 1,262
(191) 山口 1 △1,883
(192) 長崎 3 242 1 △2,986
(188)-(192)の計 38 6,543 2 △4,870