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国民健康保険団体連合会等補助金により整備されて活用されていない機器等について、保険者事務共同電算処理事業等において早期に活用する方策を検討するなどして、有効活用を図るよう改善の処置を要求したもの


(7) 国民健康保険団体連合会等補助金により整備されて活用されていない機器等について、保険者事務共同電算処理事業等において早期に活用する方策を検討するなどして、有効活用を図るよう改善の処置を要求したもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)医療保険給付諸費
部局等 厚生労働本省
補助の根拠 国民健康保険法(昭和33年法律第192号)
補助事業者
(事業主体)
47国民健康保険団体連合会
補助事業 保険者事務共同電算処理事業
補助事業の概要 社会保障カードが導入された際に医療機関等が被保険者資格をオンラインで照会することなどを可能とするために行う基盤整備に関する事業
基盤整備に関する事業費の額 41億4986万余円 (平成21年度)
上記のうち活用が図られていない機器等に係る額 13億5593万余円  
上記に係る国庫補助金相当額 13億5593万円  

【改善の処置を要求したものの全文】

 国民健康保険団体連合会等補助金による基盤整備事業で整備した機器等の活用について

(平成24年10月26日付け 厚生労働大臣宛て)

 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 事業の概要

(1) 国民健康保険団体連合会及び国民健康保険団体連合会等補助金の概要

 国民健康保険は、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)等が保険者となって、被用者保険の被保険者及びその被扶養者等を除き、当該市町村の区域内に住所を有する者等を被保険者として、その疾病、負傷、出産又は死亡に関して、療養の給付、出産育児一時金の支給、葬祭費の支給等の給付を行う保険である。
 保険者は、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づき、共同してその目的を達成するために、各都道府県知事の認可を受けて国民健康保険団体連合会(以下「国保連合会」という。)を設立することができるとされており、現在、47都道府県にそれぞれ設立されている。国保連合会は、国民健康保険に係る診療報酬の審査及び支払に関する事業のほか、保険給付の記録等の事務を保険者が共同して電子計算機により処理する保険者事務共同電算処理事業(以下「共同電算処理事業」という。)等の事業を行っている。
 そして、貴省は、国民健康保険事業の円滑かつ健全な運営を期すことを目的として、全国の国保連合会等に対して、国民健康保険団体連合会等補助金(以下「国庫補助金」という。)を交付しており、共同電算処理事業もその交付対象としている。

(2) 社会保障カードをめぐる状況

 社会保障カード(仮称。以下同じ。)は、年金手帳、健康保険証及び介護保険証の機能を1人1枚のカードに集約するものである。この社会保障カードの導入は、情報通信技術を活用して、利用者が年金、医療及び介護といった社会保障分野のより良いサービスを安心して利用できる社会を実現するための重要な取組とされ、平成23年度中に導入することを目指すこととされていた。その後、社会保障分野における情報通信技術を活用した取組については、社会保障分野だけでなく、税分野も含めた社会保障及び税共通の番号制度(いわゆるマイナンバー)の導入を進めることが政府において決定されるなど、社会保障カードに代わる新たな制度の導入に向けた検討が進められている。

(3) 基盤整備事業に対する国庫補助金の交付状況等

 国保連合会は、21年度に、貴省の指示に基づき、社会保障カードの導入に向けた環境整備の一環として、医療機関等が被保険者資格をオンラインで照会することなどを可能にするための基盤整備(以下、この基盤整備に係る事業を「基盤整備事業」という。)を実施している。そして、貴省は、これに要する経費を共同電算処理事業として、国庫補助金の交付対象に含めている( 参照)。

 基盤整備事業の概要図

図基盤整備事業の概要図

 基盤整備事業に要する経費は、〔1〕 医療機関等と国保連合会の間における被保険者資格の照会の受付と確認結果の返信を行うためのサーバ等の機器の購入及びこのためのシステムの開発(以下、これらの機器及びシステムを合わせて「機器」という。)、〔2〕 国保連合会と保険者の間の回線の新設又は拡張(以下「回線の新設又は拡張」という。)、〔3〕 保険者が被保険者資格の異動情報を随時に登録するための端末(以下「端末」という。)の購入、〔4〕 保険者が登録した被保険者資格の異動情報の更新等を行うためのシステムの開発(以下「システム開発」という。)並びに〔5〕 システムを稼動させる上で必要となるソフトウェア(以下「ソフトウェア」という。)の購入に係る経費となっている。
 基盤整備事業に係る事業費の総額は、表1 のとおり、41億4986万余円に上っており、貴省は、同額の国庫補助金を国保連合会に対して交付している。

表1  基盤整備事業に係る事業費及び国庫補助金交付額

(単位:千円)

項目 事業費(国庫補助金交付額同額)
〔1〕 機器 1,365,536
〔2〕 回線の新設又は拡張 222,898
〔3〕 端末 259,746
〔4〕 システム開発 564,000
〔5〕 ソフトウェア 1,737,688
4,149,869

2 本院の検査結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 前記のとおり、社会保障カードに代わる新たな制度の導入に向けた検討が進められているなど、社会保障分野における情報通信技術を活用した取組をめぐる状況は変化している。
 そこで、本院は、有効性等の観点から、国庫補助金により整備された機器等が活用されているかなどに着眼して、貴省及び26国保連合会(注) において会計実地検査を行うとともに、26国保連合会を含む全47国保連合会から、21年度の基盤整備事業の実施状況、機器等の活用状況等について報告を求めて、その内容を分析するなどの方法により検査を行った。

 26国保連合会  北海道、山形県、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、福井県、長野県、静岡県、愛知県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、島根県、岡山県、徳島県、香川県、高知県、福岡県、長崎県、宮崎県、鹿児島県各国保連合会

 (検査の結果)

 検査したところ、基盤整備事業により国保連合会に整備された機器等の活用状況は、表2 のとおりとなっていた。

表2 47国保連合会における機器等の活用状況(平成24年6月末現在)

項目 活用 未活用 未活用の機器等に係る国庫補助金相当額
(千円)
  単位
〔1〕
機器

サーバ 4 140 144 491,941
システム 0 47 47 859,957
〔2〕
回線の新設又は拡張

26 0 26
〔3〕
端末

2,302 37 2,339
〔4〕
システム開発

47 0 47 4,031
〔5〕
ソフトウェア

47 0 47
1,355,931
注(1)  機器等の整備については、「〔1〕 機器」のサーバ及び「〔3〕 端末」を除き、1国保連合会に1式ずつ整備されたとして整理している。ただし、「〔2〕 回線の新設又は拡張」については、21国保連合会が既設の回線で対応が可能であったことから回線の新設又は拡張を実施しておらず、このため計が26式となっている。
注(2)  「〔1〕 機器」については、サーバ及びシステムのほか無停電電源装置等の付随機器も整備しているが、付随機器のみを活用していたものは、当該付随機器に係る国庫補助金相当額を「未活用の機器等に係る国庫補助金相当額」から控除している。
注(3)  「〔3〕 端末」について、東日本大震災により被災し廃棄処分された端末(計7台)については、「活用」に含めている。

 すなわち、回線の新設又は拡張、システム開発及びソフトウェアについては、それらの整備を行った全ての国保連合会において、被保険者資格の異動情報の管理等に活用されていた。
 しかし、機器については、47国保連合会において、社会保障カードの導入が実現していないため、これに係るシステム(国庫補助金相当額8億5995万余円)については全く活用されておらず、サーバ等の機器についても、47国保連合会に設置されたサーバ144台のうち、国保連合会と保険者との間のファイル交換等のために活用されていた4国保連合会に設置された4台を除き、140台(国庫補助金相当額4億9194万余円)が活用されていない状況となっていた。
 また、端末2,339台のほとんどは、被保険者資格の異動情報の登録等を行うための端末として活用されていたものの、10国保連合会が保有する37台(国庫補助金相当額403万余円)については、保険者において梱包されたまま保管されていたり、保険者に設置されることなく国保連合会において故障時の代替機として保管されていたりしていて、活用されていない状況となっていた。

 (改善を必要とする事態)

 国保連合会において、基盤整備事業により整備された機器や端末が活用されないままとなっている事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、社会保障カードに代わる新たな制度の導入に向けた検討が進められている状況の下、貴省において、社会保障カードの導入に向けて整備した機器や端末の活用状況を十分に把握しておらず、これらが活用されていないことについての対応策の検討や国保連合会に対する具体的な指示を行っていないことなどによると認められる。

3 本院が要求する改善の処置

 社会保障分野においては、現在、政府全体で新たな制度の導入に向けた各種の検討が進められており、貴省においても、これまでの社会保障分野における情報連携基盤に関する検討結果等を活かしつつ、その検討に参画しているところである。そして、社会保障カードの導入のために基盤整備事業により整備されたものの活用されていない機器及び端末については、可能な限り新たな制度において活用されることが望まれる。しかし、これらの機器等については、整備後、既に2年以上が経過しており、経年による陳腐化等により新たな制度において活用が困難になることも懸念される。
 ついては、貴省において、基盤整備事業で整備された機器等の活用状況を把握した上で、活用されていない機器等について、各国保連合会が行う共同電算処理事業等において早期に活用するための方策を検討し、これを国保連合会に対して指示することにより、国庫補助金により整備した機器等の有効な活用を図るよう改善の処置を要求する。