会計名及び科目 | 年金特別会計(児童及び子ども手当勘定) | |
(項)児童手当及び子ども手当交付金 | ||
部局等 | 厚生労働本省 | |
国庫負担の根拠 | 平成22年度等における子ども手当の支給に関する法律(平成22年法律第19号) | |
平成23年度における子ども手当の支給等に関する特別措置法(平成23年法律第107号) | ||
補助事業者 | 210市区町 | |
(事業主体) | ||
国庫負担対象事業 | 子ども手当給付事業 | |
受給資格者の認定が適切とは認められない受給者数 | 3,072人 | |
上記に係る子ども手当の支給額 | 11億0674万余円 | (平成22、23両年度) |
上記のうち子ども手当交付金相当額 | 8億8003万余円 | |
上記のうち特例交付金分を差し引いた額 | 1億7242万円 |
子ども手当は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)により、「平成22年度等における子ども手当の支給に関する法律」(平成22年法律第19号)、「平成23年度における子ども手当の支給等に関する特別措置法」(平成23年法律第107号。以下「特別措置法」という。また、これらを合わせて「子ども手当法」という。)等に基づき、次代の社会を担う子どもの健やかな育ちを支援することなどを目的として、日本国内に住所を有し、15歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子どもを監護し、かつ、これと生計を同じくするその父母等に対して、平成22年度から支給されているものである。
一方、児童手当は、市町村により、児童手当法(昭和46年法律第73号)に基づき、日本国内に住所を有し、小学校修了前までの児童を監護し、かつ、これと生計を同じくするその父母等に対して、21年度まで支給されていたものである。
子ども手当には、家計の収入がどのように変動しても確実に支給される仕組みとするために、児童手当に設けられていた所得制限はない。
そして、特別措置法において、24年度以降の恒久的な子どものための金銭の給付の制度について、子ども手当法に規定する子ども手当の額等を基に、児童手当法に所要の改正を行うことを基本として、法制上の措置を講ずることとされている。
市町村は、新規に子ども手当の認定を請求する者から提出された認定請求書及び児童手当から継続して受給する者から提出された現況届について、受給資格等を調査確認して、支給要件を満たす者と認定したときは、毎年2月、6月及び10月の3回、所定の額を支給することとなっている
子ども手当法によれば、父母が父及び母の子である子どもを監護し、かつ、これと生計を同じくするときは、子どもは父母のうちいずれか子どもの生計を維持する程度の高い者によって監護され、かつ、これと生計を同じくするものとみなすこととされている。
そして、この判断について、「平成22年度における子ども手当の支給に関する法律等の施行について」(平成22年雇児発0331第17号厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)及び「平成23年度における子ども手当の支給等に関する特別措置法等の施行について」(平成23年雇児発0930第2号厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知。以下、これらを合わせて「施行通知」という。)によれば、〔1〕 住民票上の世帯主、〔2〕 父母の収入の状況、〔3〕 健康保険の適用状況、〔4〕 住民税等の扶養控除の適用状況等を総合的に考慮することとされており、市町村の子ども手当支給担当者は施行通知により受給資格者を認定することとされている。
この受給資格者の認定に当たっては、子ども手当法において、市町村は官公署に対して、必要な書類の閲覧又は資料の提供を求めることができることなどが規定されているが、受給資格者の配偶者の所得情報等を求めることはできない。
なお、児童手当法には、市町村は受給資格者の資産又は収入の状況については、官公署に対して必要な書類の閲覧又は資料の提供を求めることができることなどが規定されていたが、受給資格者の配偶者についてはこのように規定されていなかった。
国は、子ども手当法において、市町村に対して、子ども手当の支給に要する費用を負担するために交付金を交付することとされており、この交付金(以下「子ども手当交付金」という。)の額は、22年度1兆6137億5084万余円、23年度1兆8263億8322万余円となっている。
そして、子ども手当の受給資格者が地方公務員である場合は、当該地方公務員が所属する都道府県又は市町村(以下「所属庁」という。)が子ども手当の支給を行うこととされており、その費用についても所属庁が負担することとされていることから、国が交付する子ども手当交付金の算定対象とはなっていない。
さらに、地方公務員に係る子ども手当の支給に要する費用が増えたことなどから、地方負担の増加分等に対応するために、地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律(平成11年法律第17号)に基づき、22、23両年度に児童手当及び子ども手当特例交付金(以下「特例交付金」という。)が都道府県及び市町村に対して交付されている。
子ども手当について受給資格者が地方公務員である場合は、その費用を所属庁が負担することとされていることから、市町村において受給資格者の認定が適切に行われない場合には、国の費用負担が異なることとなる。
そこで、本院は、合規性等の観点から、受給資格者のうち配偶者が地方公務員である場合について、その認定が適切に行われ、子ども手当交付金の交付額が適切に算定されているかなどに着眼して、配偶者が地方公務員である子ども手当の受給者について、23都道府県(注)
の240市町村において、22、23両年度に交付された子ども手当交付金を対象として、当該受給者の受給状況を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
受給資格者の配偶者の所得について、市町村の確認方法をみたところ、23都道府県の204市区町は確認していない又は原則として聴取により確認していた。このうち、23都道府県の184市区町においては、22、23両年度において、地方公務員である配偶者の所得の方が相当程度高いと認められた受給者が2,655人、子ども手当の支給額が計9億6878万余円となり、これに対する子ども手当交付金相当額が計7億7057万余円となることから、特例交付金分を差し引いた額は計1億5102万余円となっていた。
上記の市区町は、子ども手当法において、受給資格者の認定に当たり、官公署に対して必要な書類の閲覧又は資料の提供を求めることができることなどが規定されていたが、受給資格者の配偶者の所得情報等を求めることはできないことから、配偶者の所得について、課税台帳の閲覧等を行わなかったとしていた。
A市は、受給資格者Bの認定に当たり、県職員である配偶者Cの所得を原則として聴取により確認したとしていたが、配偶者Cの所得を正確に把握せずに住民票上の世帯主名により判断するなどして、Bを受給資格者としていた。そして、受給者であるBの所得は約90万円である一方、配偶者Cの所得が約420万円とBの所得を相当程度上回っており、また、配偶者Cは健康保険の世帯主で住民税においても子どもを扶養親族としていた。
このようなことから、A市は、平成22、23両年度において、上記のように地方公務員である配偶者の所得の方が相当程度高いことから、子どもの生計を維持する程度が高いと認められた受給者がBを含めて、計55人見受けられた(55人に係る子ども手当交付金相当額1434万余円、特例交付金分を差し引いた額は500万余円)。
16都道府県の36市町村は配偶者の所得を書類等により確認していた。このうち、16都道府県の26市町においては、22、23両年度において、地方公務員である配偶者の所得の方が相当程度高いと認められた受給者が417人、子ども手当の支給額が計1億3795万余円、これに対する子ども手当交付金相当額が計1億0945万余円となることから、特例交付金分を差し引いた額は計2140万余円となっていた。
上記の市町は、施行通知において、父母のいずれを子どもの生計を維持する程度が高い者であると判断するかは、父母の収入の状況等を総合的に考慮することとされていたことから、必ずしも配偶者の所得によって判断しなかったとしていた。
しかし、(1)及び(2)においては、受給者より配偶者の所得が相当程度高いことから、配偶者を受給資格者と認定すべきであったと認められた。
このことから、共に子どもを監護して、かつ、生計を同じくしている地方公務員の配偶者がいる受給者で、配偶者の所得の方が、受給者よりも相当程度高いと認められた者は、23都道府県の210市区町において、受給者数3,072人、子ども手当の支給額計11億0674万余円、これに対する子ども手当交付金相当額計8億8003万余円、特例交付金分を差し引いた額は計1億7242万余円となっていた。
このように、受給資格者の認定が適切に行われないことにより、所属庁が負担すべき額について、国費である子ども手当交付金を財源とした子ども手当が市区町から支給されることになっている事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
ア 子ども手当法に、受給資格者の認定に当たり、市町村は官公署に対して、認定に必要な書類の閲覧又は資料の提供を求めることができることなどが規定されていたが、受給資格者の配偶者の所得情報等を求めることはできないことから、市町村において、受給資格者の配偶者の所得の確認を十分に行わなかったこと
イ 施行通知に、受給資格者の認定に当たり、父母のいずれを子どもの生計を維持する程度が高い者であると判断するかについては、父母の収入の状況等を総合的に考慮することとされていたのに、その際に父母の所得をどのように取り扱うかなどについての基準が明確でなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、厚生労働省は、児童手当法には、市町村が受給資格者の資産又は収入の状況については、官公署に対して必要な書類の閲覧又は資料の提供を求めることができることなどが規定されていたが、受給資格者の配偶者についてはこのように規定されていなかったことから、24年度以降に支給されることとなった児童手当において、受給資格者の認定が適切に行われるよう、次のような処置を講じた。
ア 市町村において、児童手当の受給資格者とともにその配偶者の所得の確認を十分に行うことができるように、配偶者の所得情報等について、官公署に対して資料の閲覧又は提供を求めることができるようにすることを含む法律案を作成し、「児童手当法の一部を改正する法律」(平成24年法律第24号)は、24年3月31日に公布され、上記の改正部分については同年4月1日から施行することとされた。
イ 受給資格者の認定に当たり、父母のいずれを子どもの生計を維持する程度が高い者と判断するかについては、まず父母の所得の状況を考慮するよう、同年3月に市町村に対して通知を発するなどした。