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  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 厚生労働省|
  • 平成22年決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

緊急人材育成支援事業の実施状況及び求職者支援制度について


(8) 緊急人材育成支援事業の実施状況及び求職者支援制度について

平成22年度決算検査報告参照

1 本院が表示した意見

 中央職業能力開発協会は、厚生労働省からの交付金を財源として基金を造成して、この基金を活用して、職業訓練(以下「基金訓練」という。)の実施、受講者に対する支援給付金の支給等の緊急人材育成支援事業を行っている。しかし、〔1〕 受講を途中でやめた者等に対する支援給付金の支給が基金訓練等の受講期間に応じたものとなっていない事態、〔2〕 支援給付金の受給資格認定の審査において、支給の要件である世帯の主たる生計者であることの確認方法が必ずしも適切でない事態、〔3〕 支援給付金の事後的調査について、必ずしも受給資格要件の確認を十分に行える体制となっていない事態、〔4〕 基金訓練の就職状況報告書の様式に改善の余地があったり、就職状況報告書の回収率が十分でなかったりなどしている事態、〔5〕 公共職業安定所(以下「安定所」とう。)における職業相談の内容が適切に記録されていなかったり、受講者の訓練の修了状況を安定所において適切に把握していなかったりしている事態、〔6〕 基金訓練の訓練コースについての情報提供を行う際に、訓練実施機関が従前に開講した同種の訓練コースの就職実績を受講希望者に対して開示していない事態が見受けられた。
 したがって、厚生労働省において、緊急人材育成支援事業の制度を基に平成23年10月に創設された求職者支援制度の実施に当たり、厚生労働大臣が認定する認定職業訓練等を受けることを容易にするための職業訓練受講給付金が適正に支給されるよう、また、事業効果を適切に把握し十分に発現される体制となるよう、〔1〕 職業訓練受講給付金の支給を認定職業訓練等の受講期間に応じたものとしたり、〔2〕 支給の要件の確認に当たり住民票等の証明書類により申請者の世帯構成を把握した上で、同一住所における申請者以外の職業訓練受講給付金受給者の有無の確認を行ったり、〔3〕 必要な場合には金融機関への照会等に対する協力を得ることができる体制を整備したり、〔4〕 認定職業訓練受講者の就職率について、より適切に把握したり、〔5〕 安定所において毎回の職業相談の内容を適切かつ具体的に記録することを徹底したり、安定所に求職の申込みをしている者(雇用保険被保険者及び受給資格を有するものを除く。)のうち職業訓練等の支援措置を行う必要があると安定所長が認めた者(以下「特定求職者」という。)の訓練の修了状況を適切に把握したり、〔6〕 受講希望者に対して訓練実施機関が従前に開講した同種の訓練コースの就職実績を開示する方法を検討したりするよう、厚生労働大臣に対して23年9月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。

2 当局が講じた処置

 本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
 検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、23年9月までに必要な規程を整備するなどして、次のような処置を講じていた。

ア 職業訓練受講給付金について、支給の対象となる受講期間の出席状況を確認した上で支給し、支給の対象となる受講期間が短期間である場合は、当該日数に応じた金額を支給することとした。

イ 職業訓練受講給付金の事前審査の際に住民票等を提出させることとして、求職者支援システムで住所検索を行うことにより、同一住所における申請者以外の職業訓練受講給付金受給者の有無の確認を行うこととした。

ウ 職業訓練受講給付金の支給要件の事後的な確認に当たり、必要な場合には官公署や銀行等に調査を行うことについて、受講を開始する日以前に書面により本人の同意を求めることとした。

エ 就職状況報告書に記載する就職率の算出方法を明示するとともに、訓練実施機関が認定職業訓練受講者から回収する同報告書の回収率も訓練実施機関の認定要件とするなどして就職状況の把握に努めることとした。

オ 安定所において訓練を必要と認めた理由等を具体的に記録するとともに、訓練の修了状況について訓練実施機関又は特定求職者本人からの報告等により適切に把握することとして、訓練終了後において未就職である者に対しては担当者制による就職支援等を実施することとした。

カ 職業訓練の認定等の業務を行う独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構のホームページ上で、訓練実施機関が従前に実施した同種の訓練コースの就職実績(就職率)を掲載することとした。