厚生労働省は、大規模地震等の災害時に重要な役割を果たす災害拠点病院等のうち、都道府県が指定した医療機関の耐震化整備を行うための基金の造成に必要な経費として、都道府県に対して、平成21、22両年度に交付金を交付している。しかし、指定した医療機関等が耐震化整備の実施を辞退したことにより、一部の交付金が不要となる事態が見受けられた。
したがって、厚生労働省において、耐震化整備を実施する医療機関を新たに指定することが可能となるように医療施設耐震化臨時特例基金管理運営要領等を改正するなどして基金の有効活用を図るとともに、新たに指定する医療機関がないなど基金を活用する見込みがない場合は、活用されずに不要となる交付金を早期に国庫に返還させる仕組みを作る処置を講ずるよう、厚生労働大臣に対して23年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、23年12月に医療施設耐震化臨時特例基金管理運営要領を改正して、次のような処置を講じていた。
ア 指定した医療機関等が耐震化整備の実施を辞退して、厚生労働省からの交付金の交付額に対して残余が生ずることとなった場合、新たに耐震化整備を実施する医療機関を23年度末までに指定することが可能となるようにしたことから、14都府県において29医療機関が新たに指定されたことにより、当該医療機関に交付する助成金の額(予定額計62億4559万余円)について基金の有効活用を図った。
イ 基金を活用する見込みがない場合に活用されずに不要となる交付金は基金の解散を待つことなく早期に国庫に返還できる仕組みを作ったことから、17都府県において不要となる交付金の額(予定額計56億5688万余円)について基金から返還されることとなった。