(3件 不当と認める国庫補助金 73,448,859円)
森林整備加速化・林業再生基金事業(以下「基金事業」という。)は、都道府県が「森林整備加速化・林業再生事業費補助金交付要綱」(平成21年21林整計第82号農林水産事務次官依命通知。以下「交付要綱」という。)等に基づき、間伐等の森林整備の加速化と間伐材等の森林資源を活用した林業・木材産業等の地域産業の再生を図るなどのため、間伐、木材加工流通施設等整備、地域材利用開発等を実施する事業主体に対して、これらに要する経費を補助するものである。
そして、林野庁は、基金事業の財源に充てるため、都道府県に対し国庫補助金を交付して基金を造成させており、都道府県は、この基金を取り崩して事業主体に対して補助金を交付している。
本院が、17都道県において会計実地検査を行ったところ、東京都及び鳥取県の3事業主体が実施した基金事業において、次のような事態が見受けられた。
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 |
不当と認める事業費 |
不当と認める国庫補助金等相当額 |
|
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(197) | 林野庁 | 東京都 | 東京都森林組合 (事業主体) |
森林整備加速化・ 林業再生基金 |
21 | 67,961 | 49,935 | 67,961 | 49,935 |
東京都森林組合(以下「組合」という。)は、平成21年度に、126施業箇所、計199.7haの間伐を事業費67,961,142円で実施したとして、東京都が22年1月に国庫補助金の交付決定を受けて造成した基金を取り崩した補助金49,935,000円(国庫補助金相当額同額)の交付を受けていた。
しかし、交付要綱等によると、基金事業は、原則として、国庫補助金の交付決定を受けてから着手することとされているのに、本件間伐は、組合において、東京都の単独事業等として、基金事業の創設(21年5月)前の21年4月から、順次着手されていて、東京都が国庫補助金の交付決定を受ける前には全ての施業箇所で着手されていた。そして、東京都は、国庫補助金の交付決定を受けると、本件間伐を基金事業として実施したこととする旨を組合に通知し、組合は、これに基づき、東京都に基金事業の実績報告書を提出していた。
したがって、本件基金事業は、補助の対象とは認められず、これに係る国庫補助金相当額49,935,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、東京都において補助事業の適正な実施に対する認識が十分でなかったことなどによると認められる。
(198) | 林野庁 | 東京都 | 村上建設株式会社 (事業主体) |
森林整備加速化・ 林業再生基金 |
22 | 43,519 | 16,875 | 33,750 | 16,875 |
村上建設株式会社(立川市所在。以下「村上建設」という。)は、平成22年度に、木材加工流通施設等整備を実施するため無垢材連結パネル製造機等(以下「パネル製造機等」という。)を契約相手方の会社(以下「会社」という。)から購入するなどの事業を事業費43,519,000円で実施したとして、23年3月に東京都に実績報告書を提出して、パネル製造機等の購入費33,750,000円を補助対象事業費とする額の確定を受けて、同年5月に補助金16,875,000円(国庫補助金相当額同額)の交付を受けていた。
しかし、村上建設は、会社が村上建設の工房内に設置したパネル製造機等に不具合があるとして、実際には、会社に購入代金の一部しか支払っていなかったため、その所有権の移転を受けておらず、また、事業の用に供していなかった。
したがって、本件基金事業は実施されておらず、これに係る国庫補助金相当額16,875,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、村上建設において基金事業の適切な実施に対する認識が十分でなかったこと、東京都において実績報告書の審査及び確認並びに村上建設に対する指導等が十分でなかったことなどによると認められる。
(199) | 林野庁 | 鳥取県 | 株式会社オロチ (事業主体) |
森林整備加速化・ 林業再生基金 |
22 | 18,663 | 18,663 | 6,638 | 6,638 |
株式会社オロチ(日野郡日南町所在)は、平成22年度に、同社の敷地内において、地域材利用開発事業として、地域材を用いて製造した新製品を梁(はり)に使用した建築物の展示、梁のたわみ量のデータ収集等を行うため、木造平家建ての実証展示施設(延べ面積150m2
。以下「展示施設」という。)の建築等を事業費18,663,859円で実施し、補助金18,663,859円(国庫補助金相当額同額)の交付を受けていた。
建築基準法(昭和25年法律第201号)によると、展示施設は、同法に規定する建築物に該当することから、安全な構造のものとして政令で定める技術的基準に適合するものでなければならず、建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)等によると、建築物の基礎の構造については鉄筋コンクリート造とするなどとされている。
しかし、展示施設の柱の脚部は、全て既設のアスファルト舗装上に敷設された鉄板に溶接されているだけで、基礎が設けられていなかった(参考図
参照)。
したがって、展示施設(事業費6,638,859円)は基礎が設けられていないなどのため、安全な構造物としての技術的基準に適合しない違法な建築物となっており、展示、梁のたわみ量のデータ収集等のために使用することができないものとなっていて、補助の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額6,638,859円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同社において建築物の安全性に対する配慮及び関係法令についての認識が欠けていたこと、鳥取県において同社に対する指導等が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図
)
(197)(199)の計 | 130,144 | 85,473 | 108,350 | 73,448 |