農業共済事業事務費負担金(以下「事務費負担金」という。)は、国が、農業災害補償法(昭和22年法律第185号)に基づき、農業共済組合(以下「組合」という。)等が行う共済事業等に関する事務の執行に必要な経費の一部を負担するものである。
「農業災害補償法第14条の規定による事務費国庫負担金等交付要綱」(昭和45年45農経B第1207号農林事務次官依命通知)等によると、事務費負担金の対象経費は、人件費、旅費、庁費等とされており、人件費のうち雇用保険料等については、平成20年度までは対象経費に含めないこととされていた。また、農作物共済、家畜共済、果樹共済、畑作物共済及び園芸施設共済(以下、これらを合わせて「制度共済」という。)に係る人件費等は対象経費とされているが、組合等が任意に行う共済事業(以下「任意共済」という。)に係る人件費等については、対象経費に含めないこととされている。そして、総務部等の管理業務に従事する職員の人件費のように明確に区分できない経費(以下「共通経費」という。)については、制度共済、任意共済及び管理業務に係る業務時間を業務日誌等によりそれぞれに区分して把握した上で、制度共済に係る業務時間を、制度共済及び任意共済に係る業務時間の合計で除するなどして案分の比率(以下「案分率」という。)を算出し、共通経費に案分率を乗ずるなどして対象経費を算定することとされている。
本院が、28都道府県管内の57組合等において会計実地検査を行ったところ、2組合において、案分率の算出を誤っていたため対象経費を過大に算定していたり、事務費負担金の対象経費に交付対象とならない経費を含めていたりなどしていたため、事務費負担金が過大に精算されるなどしていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、2組合において事務費負担金の適正な算定方法等に対する理解が十分でなかったこと、農林水産本省において事務費負担金の審査及び確認並びに2組合に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
これを事業主体別に示すと次のとおりである。
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(210) | 農林水産本省 | 熊本県農業共済組 (事業主体) |
— | 農業共済事業事務費負担金 | 18〜21 | 6,625,802 | 6,408,415 | 503,667 | 286,279 |
熊本県農業共済組合(熊本市所在)は、平成18年度から21年度までの間に、事務費負担金の対象経費を計6,625,802,284円とする実績報告書を農林水産本省に提出して、これにより事務費負担金計6,408,415,000円の交付を受けていた。
しかし、同組合は、業務日誌において職員の任意共済に係る業務時間しか区分して把握しておらず、残りの時間を全て制度共済に係る業務時間とするなどしていたため、案分率を誤って算出しており、対象経費を過大に算定していた。また、対象経費とならない20年度の雇用保険料を対象経費に含めるなどしていた。
したがって、適正な案分率を算出するなどして、事務費負担金の額を算定すると、計6,122,135,258円となり、前記の事務費負担金の額計6,408,415,000円との差額計286,279,742円が過大に精算されるなどしていて不当と認められる。
(211) | 農林水産本省 | 南和農業共済組合 (事業主体) |
— | 農業共済事業事務費負担金 | 18〜22 | 316,398 | 311,427 | 51,849 | 46,878 |
南和農業共済組合(奈良県五條市所在)は、平成18年度から22年度までの間に、事務費負担金の対象経費を計316,398,734円とする実績報告書を農林水産本省に提出して、これにより事務費負担金計311,427,000円の交付を受けていた。
しかし、同組合は、業務日誌において職員の任意共済に係る業務時間しか区分して把握しておらず、残りの時間を全て制度共済に係る業務時間とするなどしていたため、案分率を誤って算出しており、対象経費を過大に算定するなどしていた。
したがって、適正な案分率を算出するなどして、事務費負担金の額を算定すると、計264,548,800円となり、前記の事務費負担金の額計311,427,000円との差額計46,878,200円が過大に精算されるなどしていて不当と認められる。
(210)(211)の計 | 6,942,201 | 6,719,842 | 555,516 | 333,157 |