部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(220) | 林野庁 | 埼玉県 (事業主体) |
— | 水源地域整備 | 22 | 44,478 | 22,239 | 11,600 | 5,800 |
この補助事業は、埼玉県が、秩父市中津川地内において、大山沢左岸上部の崩壊した山腹の法面を安定させることなどを目的として、護岸工、簡易法枠工等を実施したものである。このうち、護岸工(高さ4.0m、延長85.0m)は、流水の作用による浸食を防止するなどのため、沢部の左岸側の法尻部に、割栗石を詰めた透過性のある鋼製のかご枠(長さ1.0m又は2.0m、幅1.0m、高さ0.5m)を8段に積み重ねて設置したものである(参考図参照
)。
そして、「河川災害復旧護岸工法技術指針(案)」(社団法人全国防災協会編)によると、本件のように透過性のある護岸工法においては、土砂の吸出しを防止するため、護岸工の下面及び背面の全てに吸出し防止材(注)
を設置することが標準とされており、本件護岸工で採用した材料メーカーの設計・施工マニュアル等においても、鋼製のかご枠を積み重ねた護岸工の下面及び背面の全てに吸出し防止材を設置することとされている。
同県は、本件工事の設計前に現地の状況を確認した際、表土が主として粒径の大きな転石から成っていたことから、本件護岸工の下面及び背面の土質も主として粒径の大きな転石から成っており、流水による吸出しを受けて土砂が割栗石の空隙から流出するおそれについて考慮する必要はないと判断し、吸出し防止材を全く設置しない設計として、これにより施工していた(参考図
参照)。
しかし、本院が会計実地検査時(平成24年2月)に本件護岸工の下面及び背面の土質について確認したところ、土砂に分類されるれき質土であった。
このため、本件護岸工においては、流水による吸出しを受けて土砂が吸出し防止材を設置していない下面及び背面から流出するおそれがあることから、下面及び背面の全てに吸出し防止材を設置する必要があったと認められる。
したがって、本件護岸工(工事費相当額11,600,000円)は、設計が適切でなかったため、下面及び背面から土砂が流出してその安定が損なわれるおそれがあり、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額5,800,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、本件護岸工の設計に当たり、護岸工の下面及び背面の土質の判定を誤ったこと、護岸工における吸出し防止材の設置の必要性についての検討が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図 )
護岸工の概念図
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(221) | 林野庁 | 山梨県甲斐市 (事業主体) |
— | 美しい森林づくり基盤整備交付金 | 22 | 73,675 | 69,631 | 13,538 | 12,794 |
この交付金事業は、甲斐市が、同市漆戸地内において、既存の橋りょうを新橋(橋長14.6m、幅員6.4m〜7.4m)に架け替えるために、橋りょう下部工(橋台2基)、護岸工等を実施したものである。このうち、護岸工(高さ4.5m〜7.6m、左右両岸の工事区間延長は合計85.7m)は、橋りょう下部の河岸を保護するために、左右両岸の橋台の前面側及び上下流側にブロック積護岸等を築造するものである(参考図
参照)。
本件護岸工の設計は、建設省河川砂防技術基準(案)同解説(社団法人日本河川協会編)等に準拠して山梨県が制定した「河川ハンドブック」及び「土木工事設計マニュアル砂防編」(以下、これらを合わせて「設計基準」という。)に基づき行われている。設計基準によると、計画河床から護岸の基礎底面までの深さ(以下「根入れ深さ」という。)については、流水による河床の洗掘に対応するために、護岸の基礎底面の土質が岩盤の場合は50cm程度、土砂の場合は河床勾配に応じて1m又は1.5m程度確保することとされている。
同市は、橋台2基の施工位置において1本ずつ実施したボーリング調査の結果に基づき、護岸の基礎底面の位置する層の土質を軟岩と判定していた。このため、本件護岸工については、根入れ深さを50cm程度確保するとともに、計画河床から護岸の基礎底面まで埋戻しコンクリートを護岸の前面側に設置することにより護岸と河床の岩盤とを一体化させることとして設計し、これにより施工していた。
しかし、本院が会計実地検査時(平成24年1月)に上記のボーリング調査で採取したコアを検証するとともに、現地において河床の土質を確認するなどしたところ、本件工事区間の護岸の基礎底面の位置する層の土質は軟岩ではなく、土砂に分類されるれき質土であった。この場合は、設計基準によると、根入れ深さを1m程度確保する必要があることから、本件護岸工は根入れ深さが不足しており、河床の洗掘が進行すると護岸等に損傷を生ずるおそれがある状況となっていた。現に、護岸の基礎の前面の河床に多数の洗掘箇所が見受けられ、実際に確保していた66cmから73cmまでの根入れ深さに対して最大で65cmの洗掘が生じていた(参考図
参照)。
したがって、本件護岸工(工事費相当額13,538,000円)は設計が適切でなかったため、護岸等が河床の洗掘に対応できない構造となっていて、工事の目的を達しておらず、これに係る交付金相当額12,794,994円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において、委託した設計業務の成果品の内容に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図 )
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(222) | 沖縄総合事務局 | 沖縄県
(事業主体) |
— | 水源地域整備 | 22、23 | 33,201 | 29,880 | 9,937 | 8,943 |
この補助事業は、沖縄県が、名護市幸喜地内において、簡易水道の水源である渓流の水源かん養機能等を向上させるために、谷止工、護岸工等を実施したものである。このうち、護岸工(高さ4.5m、延長29.0m)は、沢部の流水の作用による渓岸の浸食を防止するなどのために、沢部の右岸側に、丸太を組み合わせた校倉式の枠に割栗石を詰めた透過性のある護岸を築造するものである(参考図
参照)。
そして、「河川災害復旧護岸工法技術指針(案)」(社団法人全国防災協会編)及び同県が制定した土木工事設計要領によると、透過性のある護岸工法においては、土砂の吸出しを防止するために、護岸の背面の全てに吸出し防止材(注)
を設置することとされており、また、吸出し防止材の継目部には、重ね幅を10cm以上確保することとされている。
同県は、本件護岸工の設計に当たり、護岸の背面の土質が砂質土であることから、背面の全てに吸出し防止材を設置することとして、これにより施工していた。
しかし、本件護岸工の設計図書には、吸出し防止材の重ね幅について明示されていなかったことなどから、会計実地検査時(平成24年2月)に、本件護岸工の背面に設置された吸出し防止材の施工状況について確認したところ、吸出し防止材の継目部の重ね幅が確保されていない状態で施工されていて、継目部に隙間が生じている状況となっていた。
このため、本件護岸工においては、流水の作用により吸い出された土砂が、吸出し防止材の継目部の隙間から流出するおそれがあると認められる。
したがって、本件護岸工(工事費相当額9,937,000円)は、設計が適切でなかったため、護岸の背面土砂が流出してその安定が損なわれるおそれがあり、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額8,943,030円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、吸出し防止材を設置する際には継目部の重ね幅を確保する必要性についての認識が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図 )
(220)-(222)の計 | 151,354 | 121,750 | 35,075 | 27,538 |