部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(224) | 沖縄総合事務局 | 沖縄県 | 南城市 (事業主体) |
農山漁村活性化プロジェクト支援交付金 | 22、23 | 46,764 | 37,411 | 5,327 | 4,261 |
この交付金事業は、南城市が、福原地区において、土水路の農業用排水路を鉄筋コンクリート製に改修して農地の浸水被害等を防止するために、水路工(延長190.4m)、ボックスカルバート工等を実施したものである。このうち水路工は、工場で製作されたL型ブロック(高さ2.4m〜3.8m、幅0.9m〜1.0m)を左右に配置して側壁とし、その間を鉄筋で連結して底版コンクリート(厚さ0.2m、幅1.3m〜1.6m)を打設するなどしてU型の水路等を築造するものである(参考図
参照)。
同市は、本件水路工を地形の状況等に応じて標準部(延長134.4m)、落差工部(延長20.0m)等に区分し、その設計を土地改良事業計画設計基準・設計「水路工」(農林水産省農村振興局制定)等に基づいて行っていた。そして、標準部及び落差工部については、いずれも側壁背後の地面が水平であるとして側壁及び底版に作用する土圧等を算定し、側壁及び底版の主鉄筋に生ずる引張応力度(注1)
が許容引張応力度(注1)
を下回ること、コンクリートに生ずる曲げ圧縮応力度(注2)
が許容曲げ圧縮応力度(注2)
を下回ることなどから、応力計算上安全であるとして、これにより施工していた。
しかし、側壁背後の実際の地形を確認したところ、標準部及び落差工部の一部の区間については、側壁天端から上方に勾配のある傾斜地となっていた(参考図
参照)。このような場合には、側壁及び底版に作用する土圧が側壁背後の地面が水平である場合より増加することとなる。
そこで、側壁背後の地形を傾斜地として側壁及び底版に作用する土圧等を算定し、改めて応力計算を行ったところ、標準部延長16.6mの区間、落差工部延長8.0mの区間、計24.6mの区間については、次のとおり、側壁及び底版の主鉄筋に生ずる引張応力度及びコンクリートに生ずる曲げ圧縮応力度が応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
ア 側壁
(ア) 主鉄筋に生ずる引張応力度は、標準部延長16.6mの区間で178.30N/mm2
から212.00N/mm2
、落差工部延長8.0mの区間で209.95N/mm2
から226.80N/mm2
となり、いずれも許容引張応力度176N/mm2
を上回っていた。
(イ) コンクリートに生ずる曲げ圧縮応力度は、落差工部延長8.0mの区間で11.64N/mm2
から12.57N/mm2
となり、許容曲げ圧縮応力度11N/mm2
を上回っていた。
イ 底版
(ア) 主鉄筋に生ずる引張応力度は、標準部延長16.6mのうち1.8mの区間で191.30N/mm2
、落差工部延長8.0mの区間で177.77N/mm2
から195.10N/mm2
となり、いずれも許容引張応力度176N/mm2
を上回っていた。
(イ) コンクリートに生ずる曲げ圧縮応力度は、落差工部延長8.0mの区間で10.55N/mm2
から11.58N/mm2
となり、許容曲げ圧縮応力度8N/mm2
を上回っていた。
したがって、本件水路工のうち延長計24.6mの区間(工事費相当額5,327,369円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額4,261,895円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において委託した設計業務の成果品に誤りがあったのにこれに対する検査が十分でなかったこと、沖縄県において同市に対する指導及び監督が十分でなかったことなどによると認められる。
(注1) | 引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。
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(注2) | 曲げ圧縮応力度・許容曲げ圧縮応力度 「曲げ圧縮応力度」とは、材に外から曲げようとする力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力のうち圧縮側に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容曲げ圧縮応力度」という。
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(参考図 )