部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(225) | 沖縄総合事務局 | 沖縄県 (事業主体) |
— | 畑地帯総合整備 | 21、22 | 97,125 | 72,843 | 2,686 | 2,014 |
この補助事業は、沖縄県が、国頭郡金武町小浜地区において、農業用水を確保することなどを目的として、掘削した地盤上に鉄筋コンクリート構造の逆T型擁壁(高さ3.9m〜4.5m、底版幅2.0m〜4.7m。以下「擁壁」という。)を設置するなどして貯水池の築造等を行ったものである。
そして、同県は、擁壁の設計に当たり、擁壁背後の地面の高さが一定でないことから、擁壁背後の盛土の高さを擁壁の天端から1.0m下方、天端から0.5m下方又は天端と同じのいずれかとして(参考図1
参照)、それぞれの高さごとに擁壁の応力計算を行っていた。このうち背後の盛土の高さが天端から1.0m下方の擁壁については、擁壁に作用する土圧等を計算した結果、縦壁背面側及びかかと版上面側に主鉄筋として径13mmの鉄筋を25cm間隔で配置すれば、これに生ずる引張応力度(注)
が許容引張応力度(注)
を下回ることから、応力計算上安全であるとしていた。
その後、同県は、工事の実施期間中に、本件補助事業終了後に貯水池の維持管理を行う者から、貯水池内部にたまった塵芥(じんかい)等を搬出するための管理用進入道路の設置の要望があったことから、管理用進入道路を設置する設計変更を行っていた。そして、これに伴い、管理用進入道路の貯水池内部への進入口に隣接する延長8.5mの区間(以下「進入口隣接区間」という。)の擁壁については、その背後の地面を進入口の高さまで緩やかにすりつける必要があったため、当初設計で想定していた擁壁の天端から1.0m下方の高さではなく、天端から約0.5m下方の高さまで盛土を施工していた(参考図2
参照)。
しかし、このように、擁壁背後の盛土を高くした場合は、擁壁に作用する土圧が増加することになるため、擁壁の応力計算を改めて行う必要があったのに、同県は、これを行うことなく当初設計のまま施工していた。
そこで、実際の盛土の施工状況に基づき、進入口隣接区間の擁壁に作用する土圧等を計算し、この土圧等により改めて擁壁の応力計算を行ったところ、縦壁背面側及びかかと版上面側に配置されている主鉄筋に生ずる引張応力度は、それぞれ常時217.2N/mm2
、224.9N/mm2
、地震時296.6N/mm2
、307.1N/mm2
となり、常時の許容引張応力度157N/mm2
、地震時の許容引張応力度264N/mm2
をいずれも上回っていて、応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、本件貯水池のうち進入口隣接区間の擁壁等(工事費相当額2,686,596円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額2,014,947円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、貯水池の設計変更に当たり、擁壁の応力計算を改めて行う必要性に対する認識が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図1 )
(参考図2 )