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  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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広域連携等バイオマス利活用推進事業により整備した施設について、その運用を中止したことによる国庫補助金相当額の返還額を過小に算定していたもの


(235) 広域連携等バイオマス利活用推進事業により整備した施設について、その運用を中止したことによる国庫補助金相当額の返還額を過小に算定していたもの

会計名及び科目 一般会計 (部)雑収入 (款)諸収入 (項)雑入
部局等 九州農政局
補助事業者(事業主体) 有限会社御笠環境サービス
国庫補助金交付額 48,932,000円 (平成18年度)
補助事業で整備された施設の運用中止年月日 平成20年12月26日
上記施設の処分に係る報告書の提出年月日 平成21年 7月31日
上記報告書に基づき返還された国庫補助金相当額 23,666,128円 (平成21年度)
過小となっていた返還額 4,279,599円  

1 補助事業の概要等

(1) 補助事業の概要

 九州農政局(以下「農政局」という。)は、平成18年度に、農村振興対策事業推進費補助金等交付要綱(平成12年12構改B第349号農林水産事務次官依命通知。以下「交付要綱」という。)等に基づき、有限会社御笠環境サービス(以下「会社」という。)が広域連携等バイオマス利活用推進事業(以下「推進事業」という。)として実施した、メタン発酵により食品残さなどから液肥等を生産するハイブリッドバイオマス変換施設(以下「変換施設」という。)の整備等(事業費97,864,000円、補助対象事業費同額)に対して、農村振興対策事業推進費補助金48,932,000円を交付している。そして、農政局は、19年4月に会社から実績報告書の提出を受けて、同月に同額で国庫補助金の額の確定を行っている。

(2) 補助事業等により取得した財産の管理等

 補助事業等の実施主体が補助事業等により取得した財産については、交付要綱等において、補助事業の完了後も補助金交付の目的に従ってその効率的な運営を図らなければならないとされている。そして、農政局は、会社に対する補助金の交付決定通知書においても、同様の条件を補助金の交付の条件として明示している。
 また、農林水産省は、「補助事業等により取得し、又は効用の増加した財産の処分等の承認基準について」(平成20年20経第385号農林水産省大臣官房経理課長通知)において、補助事業で取得した財産をその処分制限期間内に補助金等の交付の目的に反して使用するなどしようとするときは、農林水産大臣(事務委任を受けた地方農政局長等を含む。以下同じ。)の承認を受けなければならず、農林水産大臣は、その承認をするときは、残存簿価等に係る国庫補助金相当額の納付等を条件とすることとしている。

(3) 変換施設の処分に係る国庫補助金相当額の返還

 会社は、メタン発酵処理が安定しなかったなどとして変換施設の操業を断念し、20年12月に九州農政局長に協議書を提出してその運用を中止していた。そして、会社は、21年3月に変換施設の処分に係る申請書を九州農政局長に提出してその承認を受け、変換施設を解体するなどした上で、同年7月にその処分に係る報告書(以下「処分報告書」という。)を九州農政局長に提出し、同年10月に国庫補助金相当額23,666,128円を国に返還していた。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、変換施設の運用の中止に伴い返還された国庫補助金相当額が適正に算定されているかなどに着眼して、農政局から処分報告書等の書類を徴するなどして検査を行うとともに、会社において、実績報告書、財産管理台帳等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 農政局は、会社から提出された処分報告書に基づき、21年7月における変換施設の残存価格等を基に推進事業に係る国庫補助金相当額の返還額を前記のとおり23,666,128円と算定していた。
 しかし、会社は、推進事業で取得した変換施設の運用を20年12月に中止していたことから、この時点で、補助金の交付決定等において明示されていた補助金交付の目的に従ってその効率的な運営を図らなければならないという条件を満たしていなかったこととなる。このため、農政局において、21年7月における変換施設の残存価格等を基に国庫補助金相当額の返還額を算定していたことは適切とは認められない。
 したがって、国庫補助金相当額の返還額を、変換施設の運用を中止した20年12月における残存価格等を基に算定すると27,945,727円となり、前記返還額との差額4,279,599円が過小となっていて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、農政局において補助事業の中止に伴う国庫補助金相当額の返還額の算定方法についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。