会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)林野庁 | (項)林業・木材産業等振興対策費 |
(平成19年度以前は、 | (項)林業振興費) | ||
部局等 | 林野庁 | ||
補助の根拠 | 予算補助 | ||
補助事業者(事業主体) | 全国木材協同組合連合会 | ||
補助事業 | 木材供給高度化設備リース促進資金造成事業 | ||
補助事業の概要 | 全国木材協同組合連合会が、製材機、木材乾燥機等の機械設備をリースによって導入する製材業者等に対して、当該リース料の一部について助成を行うもの | ||
平成14年度以降に実施され22年度末までに助成期間が終了した助成件数及び助成額 | 62件 | 2億4979万余円 | |
上記のうち事業の効果が十分発現していないと認められる助成件数及び助成額 | 22件 | 8326万余円 | |
上記に対する国庫補助金相当額 | 8326万円 |
(平成24年3月30日付け 林野庁長官宛て)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
貴庁は、我が国の木材産業等を巡る情勢が需給構造の変化による外材との競合の激化等、極めて厳しい状況にある中で、木材産業の構造改革の推進を積極的に支援していく必要があることから、林業・木材産業等振興対策事業実施要綱(平成17年16林政経第161号農林水産事務次官依命通知。平成16年度以前は林業生産流通総合対策基本要綱)、木材産業原料転換等構造改革緊急対策事業実施要領(平成21年20林政産第99号林野庁長官通知。16年度以前は林業生産流通総合対策事業実施要領)等(以下、これらを合わせて「要綱等」という。)に基づき、14年度から、全国木材協同組合連合会(以下「全木協連」という。)に木材供給高度化設備リース促進資金造成事業(以下「リース促進事業」という。)を実施させている。
リース促進事業は、全木協連が、製材機、木材乾燥機等の機械設備をリースによって導入する製材業者等に対して当該リース料の一部について助成(助成期間はおおむね5年以内。助成額はリース総額の6〜9%)を行うものである。要綱等によると、助成の条件は、地域材の供給力の増大と品質の安定・向上を図るための計画を有し、当該計画を達成することが確実と認められることとされている。
貴庁は、全木協連に対し、リース促進事業に係る助成資金の造成及びその運営に必要な経費を対象に国庫補助金を交付しており、14年度から22年度までの間の国庫補助金交付額は資金造成費8億0316万余円、運営経費4039万余円、計8億4356万余円に上っていて、22年度末資金残高は3億2422万余円(うち助成決定額3億2166万余円)となっている。
全木協連は、要綱等に基づき、全国木材協同組合連合会木材供給高度化設備リース促進事業助成金交付規程(以下「交付規程」という。)を定めており、要綱等及び交付規程によると、リース促進事業の手続は次のとおりである。
〔1〕 助成申請者は、リース会社とリース契約を締結した後、全木協連に対して、リース料助成申請書(以下「助成申請書」という。)を提出して助成申請を行う。
助成申請書には、助成申請者が販売した木材及び木材製品の最近1か年の数量等を地域材を使用したものと外材を使用したものとに分けて記載するとともに、要綱等で助成の条件とされている計画として、助成期間中に助成対象設備で使用する地域材及び外材それぞれの目標取扱量(以下「目標取扱量」という。)等について年度ごとに記載した「助成対象設備に係る目標取扱計画」(以下「目標取扱計画」という。)等を添付することとされている。
〔2〕 全木協連は、全木協連に設置する審査委員会の審査を経て助成を決定する。
〔3〕 全木協連は、助成が決定した申請者(以下「設備借受者」という。)及びリース会社に助成決定の通知を行い、その後、設備借受者及びリース会社との間で三者契約を締結する。
〔4〕 設備借受者は、リース物件を借り受けた月以降、毎月リース会社に対して全木協連からの助成額を控除した金額をリース料として支払う。
〔5〕 リース会社は、3か月ごとに全木協連にリース料の助成の請求を行い、全木協連は、請求内容を審査してリース会社に助成額を支払う。
〔6〕 設備借受者は、助成期間中の各年度において、助成対象設備で使用した地域材及び外材それぞれの実績取扱量等を記載した「助成対象設備の使用状況及び当該設備の事業効果報告書」(以下「報告書」という。)を翌年度の5月末日までに提出する。
また、要綱等及び交付規程において、全木協連は、設備借受者による目標取扱計画の達成が著しく困難と認めるなどの場合であって、正当な理由がなく、かつ、改善の見込みがないと認めるときは、審査委員会の審査を経て、助成を中止したり助成相当額を返還させたりすることができると定められている。
23年7月に閣議決定された「森林・林業基本計画」では、「木材自給率50%以上を目指すべき姿」として、木材の安定供給体制の確立等を通じ、輸入材に対抗し得る競争力を持った林業・木材産業の育成を着実に推進することとしており、貴庁は、木材産業の構造改革を推進して地域材の供給力を増大させるなどのために、リース促進事業等の諸施策を実施している。
そこで、本院は、有効性等の観点から、木材自給率50%以上を目指す施策の一環であるリース促進事業において、地域材の供給力を増大させるという事業効果が十分発現しているか、全木協連の事業執行体制が整備されているかなどに着眼して検査した。
14年度以降に実施されたリース促進事業のうち、22年度末までに助成期間が終了した助成件数62件、助成額計2億4979万余円を対象として、貴庁及び全木協連において、助成申請書、報告書等により会計実地検査を行った。そして、このうち6件については、設備借受者に対しても実地に調査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
ア 地域材使用比率の状況について
要綱等においては、リース促進事業の助成の条件として具体的及び定量的な数値等が定められていないことから、全木協連は、要綱等における助成の条件を具体化したものとして、設備借受者の助成対象設備で使用する地域材と外材との合計の実績取扱量に対する地域材の実績取扱量の比率(以下「地域材使用比率」という。)が、助成期間終了時においておおむね5割を超えることをリース促進事業の採択の目安として運用していた。
そこで、本院が、報告書により助成期間終了時の属する年度(以下「助成期間終了年度」という。)の地域材使用比率の状況について検査したところ、全木協連は、助成期間終了年度の実績取扱量等については前年度の報告書を基に予想できるなどとして、検査の対象とした62件中36件について、交付規程に基づき提出させることとなっている助成期間終了年度の報告書を提出させておらず、助成期間終了年度の地域材使用比率を把握することができなかった。このようなことから、実際に提出があった報告書に基づき地域材使用比率が最高であった年度の数値(以下「地域材使用比率最高値」という。)の状況を62件についてみたところ、表1
のとおりとなっていた。
地域材使用比率最高値 | 0% | 0%超10%以下 | 10%超20%以下 | 20%超30%以下 | 30%超40%以下 | 40%超50%以下 | 50%超75%以下 | 75%超100% | 合計 |
件数 | 1 注2 | 1 | 3 | 2 | 6 | 8 | 13 | 28 | 62 |
計 | 21 (33.9) |
41 (66.1) |
62 (100.0) |
注(1) | ( )内の数値は合計件数62件に対する割合 |
注(2) | 設備借受者が助成開始年度内に倒産したため、地域材使用比率最高値を0%としている。 |
すなわち、地域材使用比率最高値が50%以下となっていたものが62件中21件(助成額8062万余円、国庫補助金相当額同額。件数比33.9%)あり、これらの21件については地域材使用比率が一度もリース促進事業の採択の目安となる50%を超えていなかったことから、同事業の事業効果が十分発現していない状況となっていた。なお、これらの21件の中には、設備借受者が助成期間中に倒産等したものが3件あり、このうち1件は助成を開始した年度内の倒産であった。
また、地域材使用比率最高値が50%を超えていた41件のうち、助成期間終了年度(助成期間終了年度の報告書がない18件については、提出を受けた最終年度。以下同じ。)における地域材使用比率が50%以下となっていたものが1件(地域材使用比率0%、助成額264万余円、国庫補助金相当額同額)あり、この1件については、リース促進事業の事業効果の発現が求められる助成期間終了年度において地域材が全く使用されていなかったことから、上記の21件と同様に、同事業の事業効果が十分発現していない状況となっていた。
イ 地域材の販売比率と地域材使用比率最高値との対比について
本院が、62件のうち、助成申請書に販売に関する事項の記載がなかったなどの理由により販売数量が把握できなかった5件を除く57件について、助成申請時の最近1か年における木材及び木材製品の全販売数量に対する地域材を使用した木材及び木材製品の販売数量の比率(以下「地域材の販売比率」という。)を算定し、地域材の販売比率と地域材使用比率最高値との関係についてみたところ、表2 のとおりとなっていた。
地域材使用比率最高値 | 50%超 | 50%以下 | 計 |
\ | |||
地域材の販売比率 | |||
50%超 | 27 | 1 | 28 |
50%以下 | 10 | 19 | 29 |
計 | 30 | 20 | 57 |
すなわち、地域材の販売比率が50%を超えていた28件についてみると、27件が地域材使用比率最高値も50%を超えていたことから、地域材の販売比率が50%を超える場合には、地域材使用比率最高値も50%を超える傾向にあると認められた。一方、助成申請時に地域材の販売比率が50%以下であった29件についてみると、地域材使用比率最高値が50%を超えたもの10件(件数比34.5%)と50%以下であったもの19件(件数比65.5%)とに分かれていた。
A社は平成15年5月から21年4月までの6年間に、リース料助成額7,682,400円の助成を受けており、助成申請書に基づく地域材の販売比率は1.0%であったが、目標取扱計画における助成期間終了年度の地域材使用比率は52%に達するとしていた。しかし、同社は、助成開始後も外材の方が仕入れが安定しているなど有利であること、製造する部材によっては強度等の品質が良いことなどを理由として外材を多く取り扱ったため、同社の地域材使用比率最高値は13.2%にとどまっていた。
そして、地域材使用比率最高値が50%を超えた前記の10件に係る設備借受者の地域材使用の取組について本院が調査したところ、表3 のとおりとなっていた。
取組項目 | 回答数 | 具体的な内容(一部抜粋) |
会社全体の方針として明確に地域材拡大を打ち出した | 9 | 伝統的な仕様にこだわりをもった |
取引先地場工務店への地域材利用の宣伝と設計等の支援を行った | ||
地域材の調達拡大に努力した | 8 | 一括発注で価格の優位性を確保した |
間伐材を素材生産者から直送で供給してもらった | ||
地域材製品の販売拡大のため努力した | 8 | 加工を工夫した上で、工務店、大工及び同業者にサンプルを配布し、販売促進に務めた |
地元や韓国で展示等を行い、大手メーカーとの連携による商品の企画開発を行った |
すなわち、前記の10件について助成開始後に地域材の使用が増加したのは、取引先地場工務店への地域材利用の宣伝や設計等の支援、一括発注等による地域材の調達、工務店等と連携しての地域材製品の販売促進等、地域材を使用することへの積極的な取組が主たる要因であると認められた。
B社は平成15年6月から22年5月までの7年間に、リース料助成額25,588,800円の助成を受けており、助成申請書に基づく地域材の販売比率は29.2%であったが、目標取扱計画における助成期間終了年度の地域材使用比率は68%に達するとしていた。そして、同社は、助成開始後に、県外からも地域材を調達したり、住宅以外の木造建築物でも地域材のプレカット加工を扱ったりする取組を行った結果、同社の地域材使用比率最高値は80.1%となっていた。
ア 助成申請に対する審査について
(ア) 審査において留意すべき事項について
助成申請書に添付される目標取扱計画には、助成開始後における地域材使用への取組に係る会社の方針、地域材の仕入先、取引先等について具体的に記載した資料がないため、審査に際し、目標取扱量の確実性や妥当性を十分検討することができない状況であった。そして、実際に行われている審査の内容についてみると、リース料が妥当であるか、目標取扱計画からみて助成期間終了年度における地域材使用比率が50%を超える値になるかなどについて確認する程度にとどまっていた。
そして、前記のとおり、地域材の販売比率が50%以下でも、地域材使用比率最高値が50%を超えている設備借受者が、助成開始後に地域材使用の取組を積極的に行っている状況に鑑みれば、全木協連においては、助成申請に対する審査に際し、助成申請書に基づき地域材の販売比率を算定した上で、特に、地域材の販売比率が50%以下の助成申請案件については、助成申請者の助成開始後の地域材の調達、地域材製品の販売拡大等に対する積極性、確実性等を慎重に検討することなどに留意して審査を行う要があったと認められる。
(イ) 審査委員会の審査体制について
全木協連において、助成を決定する審査委員会は、木材加工技術に関する有識者等から構成されているが、企業の財務及び経営に関する有識者が含まれていなかったことから、助成申請者が十分な経営基盤を有するなどして地域材使用の取組を継続して実施し、地域材の供給力増大に結びつけることができる事業者であるかなどについて、十分に審査できる体制になっていなかったと認められる。
イ 助成期間中における設備借受者からの報告等並びに設備借受者への指導及び助言について
(ア) 設備借受者からの報告等について
前記のとおり、助成期間中の各年度の報告書は翌年度の5月末まで全木協連に提出されないこと、報告書に記載された実績取扱量等の数値の根拠を示す書類等が添付されていないことから、報告書の提出を適時適切に受けて、その内容を十分に検証できる体制にはなっていなかったと認められる。
(イ) 設備借受者への指導及び助言について
前記のとおり、要綱等及び交付規程において、目標取扱計画の達成が著しく困難と認められる場合には助成を中止したり助成相当額を返還させたりすることができると定められているものの、助成中止の判断基準、助成相当額の返還方法等については具体的に規定されていない。しかし、これらについて具体的に規定することは、設備借受者に自覚と責任を認識させるとともに、全木協連が指導及び助言を行う際の目安や目標が明確となり、より具体的かつ適時適切な指導及び助言を行う体制を整備することに資すると認められる。
リース促進事業において、62件のうち22件(助成額8326万余円、国庫補助金相当額同額)について、地域材使用比率最高値が50%以下であったり、助成期間終了年度における地域材使用比率が0%であったりしていて、事業効果が十分に発現していない事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。
ア 全木協連において、助成申請に対して地域材の販売比率等に留意した審査を行い、設備借受者に対して助成期間中に適時適切に報告等を行わせ、必要な指導及び助言を行うことについて、事業執行体制の整備が十分行われていなかったこと
イ 貴庁において、リース促進事業における地域材使用比率等に基づく事業効果及び全木協連における事業執行体制の把握が十分でなかったこと。また、全木協連に対して、上記のアに示した事業執行体制の整備についての指導が十分行われていなかったこと
貴庁においては、前記のとおり、「木材自給率50%以上を目指すべき姿」として、輸入材に対抗し得る競争力を持った林業・木材産業の育成を着実に推進することとして諸施策を実施しており、リース促進事業についても、地域材の供給力の増大等に向けて今後も引き続き実施することとしている。
ついては、貴庁において、リース促進事業の効果が十分に発現されるよう、次のとおり改善の処置を要求する。
ア リース促進事業の実施に当たり、地域材使用比率等に基づく事業効果及び全木協連の事業執行体制を的確に把握することとすること
イ 全木協連に対して、次のような責任ある事業執行体制を整備するよう適切に指導すること
(ア) 審査に当たっては、助成申請者の地域材の販売比率の状況を十分に踏まえ、助成申請書に地域材使用についての具体的な取組内容に係る資料を添付させ、これにより目標取扱量の確実性等を確認するなど、採択を慎重に検討するための体制を整備すること
(イ) 助成期間中においては、設備借受者から適時適切に報告を受けて、その内容を検証するとともに、交付規程において助成中止の判断基準等を具体的に規定するなど、設備借受者に対して地域材使用比率の向上のための指導及び助言を適時適切に行う体制を整備すること
本院は、林野庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、林野庁は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 全木協連に対して24年7月に通知を発出して、地域材使用比率等に基づく事業効果や全木協連の事業執行体制を的確に把握することとした。
イ 全木協連に対して責任ある事業執行体制を整備するよう指導し、これに基づき、全木協連は、同月に交付規程を改正するなどして、助成申請者に地域材使用についての具体的な取組内容に係る資料を助成申請書に添付させ、これにより目標取扱量の確実性等を確認することとするなど、採択を慎重に検討するための体制を整備した。また、全木協連は、交付規程等に助成中止の判断基準等を具体的に規定するなどして、設備借受者に対して地域材使用比率の向上のための指導及び助言を適時適切に行う体制を整備した。