会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)農林水産本省 | (項)農業生産基盤保全管理・整備事業費 |
平成20年度から22年度までは | (項)農業生産基盤整備・保全事業費 | 19 年度以前は、 | (項)農地等保全管理事業費 |
(項)沖縄開発事業費 | |||
(項)北海道開発事業費 | |||
(平成19年度以前は、 | (項)北海道農地等保全管理事業費) | ||
部局等 | 農林水産本省、 6 地方農政局、沖縄総合事務局 | ||
補助の根拠 | 予算補助 | ||
補助事業者 (事業主体) |
12道県 | ||
間接補助事業者(事業主体) | 市50、町57、村6 計113事業主体 | ||
補助事業 | 国営造成施設管理体制整備促進事業(管理体制整備型) | ||
補助事業の概要 | 国営造成施設等を管理する土地改良区等を対象として、都道府県又は市町村が事業主体となって、地域住民等が参画した国営造成施設等の管理体制の整備に係る計画の策定及び更新、管理体制整備の推進並びに管理体制の整備等に対する支援を実施するもの | ||
事業地区数 | 94事業地区 | ||
事業費 | 124億4739万余円
(平成17年度〜23年度)
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上記に対する国 庫補助金額 | 62億1607万余円
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管理水準等の目標に対する達成状況を的確に把握していなかった事業地区数 | 89事業地区 | ||
上記に係る事業費 | 123億3347万余円
(平成17年度〜23年度)
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上記に対する国庫補助金額 | 61億5911万円
(背景金額)
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農林水産省は、農業者及び土地改良区に加え、地域住民等の多様な主体の参加により農地、農業用水等の適切な保全管理を確保し、水源が有するかん養機能、洪水防止機能等の多面的な機能(以下「多面的機能」という。)を発揮させることなどに資するため、平成12年度から、5年間を事業実施期間(第1期は12年度から16年度まで、第2期は17年度から21年度まで、第3期は22年度から26年度まで)として国営造成施設管理体制整備促進事業(管理体制整備型)(以下「管理体制整備事業」という。)を実施している。
管理体制整備事業は、「国営造成施設管理体制整備促進事業実施要綱」(昭和60年60構改D第302号農林水産事務次官依命通知。以下「要綱」という。)等に基づき、国営造成施設(国営土地改良事業等により整備した用排水路、揚排水機場等の農業水利施設をいう。)又はこれと一体不可分な国営附帯県営造成施設(以下、これらを合わせて「国営造成施設等」という。)を管理する土地改良区等(以下「管理主体」という。)を対象として、都道府県又は市町村が事業主体となり、地域住民等が参画した国営造成施設等の管理体制の整備に係る計画(以下「整備計画」という。)の策定及び更新、管理体制整備の推進並びに管理体制の整備・強化に対する支援の各取組を実施するものである(参考図
参照)。
要綱等によると、農林水産省は、管理体制整備事業において、上記の管理体制が整備されるまでの間に事業主体が実施する上記の各取組に要する費用の一部を事業実施期間に限って助成することとされている。そして、補助の対象となる事業費の大部分は、管理体制の整備等に係る支援、すなわち、事業を実施する地区において管理主体が国営造成施設等の管理を行うために要する費用のうち、多面的機能の発揮に相当する費用等に対して支援を行うものとなっている。
また、都道府県は、管理体制整備事業の実施に当たり、整備計画を策定して、事業を実施する地区(以下「事業地区」という。)における農業水利施設について、管理水準(多面的機能の発揮に資する清掃等をどのような頻度で行うかなど)、管理体制(誰が主体となって清掃等を行うかなど)及び費用分担(誰が清掃等の費用を分担するかなど。以下、これらを合わせて「管理水準等」という。)の目標等を明らかにするとともに、事業実施期間中に当該整備計画を年間の活動実績の総括を踏まえて毎年適切に更新することとされている。そして、整備計画の様式は、原則として、対象となる農業水利施設ごとに当該施設が有する多面的機能及び当該多面的機能に係る管理水準等の目標を記載するようになっており、一つの農業水利施設で複数の多面的機能を発揮している場合は、多面的機能ごとに管理水準、管理体制及び費用分担のそれぞれについて目標を設定するようになっている。
そして、農林水産省は、19年度に「国営造成施設管理体制整備促進事業(管理体制整備型)の適切な実施について」(平成19年19農振第1067号農林水産省農村振興局長通知)等を発し、管理体制整備事業の事業効果が十分発揮されるよう、地方農政局等が事業の実施状況を的確に把握し、適時適切な指導を実施することとしている。このため、地方農政局等は、毎年度、都道府県から、事業地区ごとの当該年度の活動実績、目標に照らして有効であった方策、問題点等を明らかにした「活動内容に関する概要調書」(以下「概要調書」という。)の提出を受けて、これを審査するとともに必要に応じて都道府県に対して指導を行うこととなっている。
管理体制整備事業の事業効果は、5年間の事業実施期間中に整備された国営造成施設等の管理体制が地域に定着して、事業完了後も引き続き国営造成施設等が適切に管理されるようになることであるが、第1期から第3期まで長期間にわたり事業を実施している事業地区が多数となっており、これらの事業地区における管理主体に対する事業主体の支援等に対して、毎年度多額の国庫補助金が交付されている。
そこで、本院は、有効性等の観点から、管理体制整備事業の実施により、第2期の整備計画で設定されていた管理水準等の目標がどの程度達成されているのか、概要調書は目標の達成状況を的確に把握できるものとなっているかなどに着眼して、農林水産本省及び12道県(注)
において、第2期から引き続き第3期の事業を実施しているなどの94事業地区における管理体制整備事業(17年度から23年度までの事業費計124億4739万余円、国庫補助金計62億1607万余円)を対象として、管理体制整備計画書、概要調書等の関係書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、上記の94事業地区の第2期の整備計画においては多面的機能が3,395件設定されており、これらに係る管理水準等の目標の達成状況等をみると、表 のとおりとなっていた。
目標区分 | 多面的機能に対する目標(A) | 達成していない目標(B) | 割合(B ÷ A) | 道県 | 事業地区 | 事業費 | 国庫補助金 |
管理水準 | 3,395 | 1,368 | 40.2 | 10 | 55 | 9,943,328 | 4,967,155 |
管理体制 | 2,021 | 59.5 | 12 | 79 | 11,949,529 | 5,967,374 | |
費用分担 | 2,484 | 73.1 | 12 | 84 | 11,698,861 | 5,843,966 | |
純計 | 12 | 89 | 12,333,472 | 6,159,111 |
すなわち、12道県89事業地区(17年度から23年度までの事業費計123億3347万余円、国庫補助金計61億5911万余円)において、管理水準については1,368件(40.2%)が、管理体 制については2,021件(59.5%)が、費用分担については2,484件(73.1%)がそれぞれ目標を達成していなかった。
上記を踏まえ、地方農政局等に提出された89事業地区の概要調書についてみると、〔1〕 管理水準について、「取組成果が上がり洪水防止機能を発揮できたが部分的に課題等が見つかった」などと記載されているだけで、具体的な課題が明確に記載されていなかったり、〔2〕 管理体制について、「一定の取組成果が上がった」などと記載されているだけで、有効だった方策が明確に記載されていなかったり、〔3〕 費用分担について、「費用分担について具体化まで至っていない」などと記載されているだけで、今後の方策が明確に記載されていなかったりしている状況となっていて、地方農政局等において管理水準等の目標に対する当該年度の達成状況を的確に把握できるように活動実績や問題点等が明確に記載されていなかった。
秋田県は、雄物川筋地区の整備計画(第2期)において、多面的機能として地区内の用排水路等に洪水防止機能等を設定していた。同県は、整備計画において、洪水防止機能を発揮させるために、年1回の草刈りを年2回とするなどの管理水準の目標を設定するとともに、これを管理主体の職員等に加えて地域住民の協力を得て実施するという管理体制の目標を設定していた。そして、同県は、多面的機能に係る費用の分担を横手市等に求めるなどの費用分担の目標を設定していた。
しかし、用排水路等の多面的機能の趣旨が地域住民に理解されず協力が得られなかったこと、同市等が財政難であるため費用分担の協議が整わなかったことなどから、同事業地区では全ての目標が達成されていなかった。
そして、同県は、平成23年度の概要調書には、一部の地域住民しか理解が得られていないことや費用分担の合意まで至らなかったことしか記載していなかった。
以上のように、第2期の整備計画で設定した管理水準等の目標を達成していなかった事業地区が多数見受けられ、また、地方農政局等に提出された概要調書には、管理水準等の目標に対する当該年度の達成状況が的確に把握できるように活動実績や問題点等が明確に記載されていなかった。このため、このような状況がこのまま継続すると、第2期に引き続き第3期も事業を実施している事業地区においては、第3期の終了年度である26年度までに管理水準等の目標を達成できないおそれがあると認められた。
したがって、前記の89事業地区において、整備計画で設定している管理水準等の目標の達成状況が低調となっている事態及び管理水準等の目標に対する当該年度の達成状況を地方農政局等が的確に把握することができていない事態は適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、地域住民の十分な理解や参画等が得られていないことなどにもよるが、農林水産省において、都道府県が作成する概要調書に各事業地区の毎年度の活動実績や問題点等を明確に記載させていなかったため、管理水準等の目標に対する当該年度の達成状況を的確に把握することができず、必要な指導を適時適切に行っていなかったこと及び管理水準等の目標の達成状況を的確に把握することができないにもかかわらず、概要調書の見直しなどを適切に行っていなかったことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省は、24年8月に通知を発して、地方農政局等が各事業地区における管理水準等の目標に対する毎年度の達成状況を的確に把握し、これを審査して、目標の達成状況が低調となっている事業地区について必要な指導を適時適切に行えるよう概要調書を見直すなどの処置を講じた。