会計名及び科目 | 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)主要食糧需給安定対策費 | |
食料安定供給特別会計(業務勘定) (項)事務取扱費 | ||
部局等 | 農林水産本省 | |
契約名 | 総合食料局情報管理システム運用支援業務等6件 | |
契約の概要 | 総合食料局情報管理システムを円滑かつ安定的に運用するため、同システムの維持管理、障害復旧、ソフトウェアの保守等の業務を行わせるもの | |
支払額 | 5億0248万余円
(平成20年度〜23年度)
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契約の相手方 | 3 会社 | |
契約 | 平成20年4月、21年4月、22年4月、23年4月 一般競争契約 | |
積算額 | 5億2404万余円
(平成20年度〜23年度)
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上記のうち運用支援業務管理経費及び保守の請負業務管理経費の積算額 | 3999万余円
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低減できた積算額 | 3610万円
(平成20年度〜23年度)
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農林水産省は、政府が所有する米麦の売買等に関する業務を実施するため、政府所有米麦の在庫、販売及び経理に係る情報を一元的に管理し、関係者の需要に応じた情報を機動的に提供する総合食料局情報管理システム(以下「情報管理システム」という。)を構築して運用している。そして、情報管理システムを円滑かつ安定的に運用するため、一般競争契約により、平成20年度から23年度までの各年度において、情報管理システムの運用支援業務に係る4件の契約(以下「運用支援業務契約」という。)を締結するとともに、22、23両年度において、情報管理システムの保守業務に係る2件の契約(以下「保守業務契約」という。)を締結して、これらの業務を計3会社に請け負わせている。
上記業務のうち、情報管理システムの運用支援業務は、情報管理システムの維持管理、稼働状況の監視等について、システム運用技術者(注1)
等を農林水産本省(以下「本省」という。)に常駐させるなどして行わせるものであり、また、情報管理システムの保守業務は、情報管理システムの業務アプリケーション(注2)
の障害対応等であって、運用支援業務では技術的に対応できない業務をシステムエンジニア(注3)
等に行わせるものである。
同省は、情報管理システムの運用支援業務及び保守業務に係る前記計6件の請負契約の予定価格について、適用する積算基準等を制定していないことから、システム運用技術者等及びシステムエンジニア等の市販の積算参考資料に掲載されている1か月分の人件費単価(以下「月額単価」という。)に仕様書に基づく必要な人数、実施期間をそれぞれ乗ずるなどして積算している。
(注1) | システム運用技術者 情報システムに係る運用業務等を行う技術者
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(注2) | 業務アプリケーション 業務手続をシステム化したソフトウェア
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(注3) | システムエンジニア 情報システムに係る機能設計等の業務を行う技術者
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本院は、本省において、経済性等の観点から、本省が20年度から23年度までに3会社と締結した前記の6契約(支払額計5億0248万余円、予定価格の積算額計5億2404万余円)を 対象として、予定価格の積算が適切に行われているかなどに着眼して、上記の契約の関係書類等を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
20年度から23年度までの運用支援業務契約(契約件数4件、積算額計2億6963万余円)の予定価格についてみると、農林水産省は、情報管理システムの維持管理、障害発生の受付等を行う技術者の派遣、運用支援業務管理等の項目ごとに、システム運用技術者等の月額単価に人数と実施期間をそれぞれ乗ずるなどして各項目に必要な経費を算出し、これらを合算して積算していた。
上記の各項目に係る経費のうち、運用支援業務管理に係る経費(以下「運用支援業務管理経費」という。)は、システム運用技術者が常駐している平日の午前9時30分から午後6時15分(21年度までは午後6時)までの時間(以下「常駐時間」という。)以外の時間に業務を行った場合に必要となる経費として、システム運用技術者の人件費等の合計額に10%を乗じて、20年度5,106,134円、21年度6,189,952円、22年度5,919,899円、23年度5,605,726円、計22,821,711円と積算していた。
これについて、同省は、20年度については、前年度まで当該業務を外注していないときの担当職員の残業時間が通常勤務時間の1割程度であったこと、21年度以降については、20年度に実施した本件契約において、常駐時間以外に業務を行った日数が業務を行った全日数のうちの1割程度であったことによるとしているが、根拠となる資料がないなど積算の根拠は明確になっていない。
そして、前記の運用支援業務管理経費の額を実際に業務を行ったシステム運用技術者の月額単価を基に業務に従事した時間に換算すると、20年度で延べ728時間分、21年度で延べ889時間分、22年度で延べ874時間分、23年度で延べ827時間分に相当するものとなっていた。
しかし、システム運用技術者が実際に常駐時間以外に業務を行っていた時間は、仕様書等に基づいて常駐時間を短縮することにより対応していた分を除くと、20年度では延べ35時間、21年度では延べ38時間、22年度では延べ254時間、23年度では延べ177時間となっていた。
したがって、同省は、当該業務に係る人件費の積算に当たっては、業務の実態を反映した積算を行っていないと認められた。
22、23両年度の保守業務契約(契約件数2件、積算額計2億5440万余円)の予定価格についてみると、同省は、業務アプリケーションの保守管理、障害保守及び予防保守、保守の請負業務管理等の項目ごとに、システムエンジニア等の月額単価に人数と実施期間をそれぞれ乗ずるなどして各項目に必要な経費を算出し、これらを合算して積算していた。
上記の各項目に係る経費のうち、保守の請負業務管理に係る経費(以下「保守の請負業務管理経費」という。)は、システム運用担当の本省の職員が運用している平日の午前9時30分から午後6時15分までの時間(以下「通常運用時間」という。)以外の時間に業務アプリケーションに障害等が発生したときに、システムエンジニアが障害復旧等の業務を行った場合に必要となる経費として、システムエンジニア等の人件費の合計額に10%を乗じて、22年度9,551,687円、23年度7,619,140円、計17,170,827円と積算していた。
これについて、同省は、22年度の本件契約の締結以前に同種の契約を実施したことがなかったため、20年度から実施している前記(1)の契約の予定価格の積算方法と同様に積算したとしているが、その根拠となる資料がないなど積算の根拠は明確になっていない。
そして、前記の保守の請負業務管理経費の額を実際に業務を行ったシステムエンジニアの月額単価を基に業務に従事した時間に換算すると、22年度で延べ1,344時間分、23年度で延べ1,072時間分に相当するものとなっていた。
しかし、システムエンジニアが通常運用時間以外の時間に障害復旧等の業務を行っていた時間は、22年度では延べ43時間、23年度では延べ2時間となっていた。
したがって、同省は、当該業務に係る人件費の積算に当たっては、業務の実態を反映した積算を行っていないと認められた。
このように、情報管理システムの運用支援業務及び保守業務に係る請負契約の予定価格の積算に当たり、運用支援業務管理経費及び保守の請負業務管理経費について、業務の実態を把握しないまま、人件費等の合計額に一定の率を乗じて積算している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
運用支援業務管理経費及び保守の請負業務管理経費の積算額計3999万余円について、業務の実態を踏まえて修正計算すると、計381万余円となり、積算額を約3610万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、同省において、情報管理システムの運用支援業務及び保守業務に係る請負契約の予定価格の積算に当たり、運用支援業務管理経費及び保守の請負業務管理経費について、業務の実態を十分に把握していないこと、予定価格を積算するための基準等を整備していないことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省は、24年7月に、情報管理システムの運用支援業務及び保守業務に係る請負契約の予定価格を業務の実態を反映して積算するための基準を整備して、これに基づき積算することなどとする処置を講じた。