農林水産省は、北海道富良野市等において、昭和47年度から国営東郷土地改良事業を、平成14年度から国営ふらの土地改良事業をそれぞれ実施している。しかし、両事業の一環として築造した東郷ダムに安全に貯水することができない状態が続いているため、現在も受益地において安定的にかんがい用水を利用できない状況が発生しており、38年という長期間にわたって国から多額の事業費が支出されているのに、適時適切に事後評価を行わないまま現在まで事業効果が発現していない事態が見受けられた。
したがって、農林水産省において、両事業について、速やかに事後評価の対象として定めて、総合的かつ客観的に評価して、その結果を両事業に適切に反映させるとともに、かんがい用水の水源確保の方法についても十分に検討して複数の選択肢を整理し、関係機関と調整 を図りながら可能な限り経済的で効果的な方法を速やかに選定して、事業効果の早期発現を図るよう、農林水産大臣に対して23年9月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、23年12月にかんがい用水の水源確保の方法について検討した結果を関係機関に説明して、意見集約に向けて調整を進めるとともに、24年4月に農林水産省政策評価実施計画において国営ふらの土地改良事業を事後評価の対象として定めて、同事業の事後評価において国営東郷土地改良事業についても国営ふらの土地改良事業と一体的に評価を実施し、同年9月にその結果を公表する処置を講じていた。
そして、農林水産省は、引き続き関係機関との意見集約に向けた調整を進めるとともに、計画を見直した上で事業を着実に推進することにより事業効果の早期発現を図ることとしている。