ページトップ
  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 経済産業省|
  • 不当事項|
  • 補助金

自家発電設備の設計が適切でなかったもの


(6) 工事の設計が適切でなかったもの

1件 不当と認める国庫補助金 6,405,000円

自家発電設備の設計が適切でなかったもの

(1件 不当と認める国庫補助金 6,405,000円)

  部局等
補助事業者等
(所在地)
間接補助事業者等
(所在地)
補助事業等 年度
事業費
(補助対象事業費等)
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める補助対象事業費等 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(250) 中部経済産業局 石川県 白山市
〈事業主体〉
電源立地地域対策交付金 20 6,415
(6,415)
6,405 6,415 6,405

 この交付金事業は、白山市が、スキー場の中腹の傾斜地に位置して旧河内村全域への防災行政無線の送信に対応する中継局について、スキー場の営業期間外に商用電源の電力供給が停止されても機能するように、蓄電池盤、ソーラーパネル、切替監視盤等の自家発電設備を整備したものである。
 同市は、本件工事の工事仕様書等において、設備機器の固定方法及び耐震設計計算は「建築設備耐震設計・施工指針2005年版」(国土交通省国土技術政策総合研究所及び独立行政法人建築研究所監修。以下「耐震設計指針」という。)によることとしていた。耐震設計指針によれば、設備機器を固定するアンカーボルトに地震時に作用する引抜力(注) 等を算出する際には、機器を設置する建築物の階数等に応じて定められている設計用標準震度(係数)を用いることとされている。
 本件工事の設計を行った業者は、自家発電設備の設置箇所が地上1階、地下1階建て建築物の地上1階であると判断して、設計用標準震度を1.0として耐震設計計算を行い、その結果、蓄電池盤等を床に固定するアンカーボルトに作用する引抜力が許容引抜力(注) を下回ったことから、本件自家発電設備は耐震設計計算上安全であるとして、配置図等を作成して同市に提出していた。そして同市は、これを基に実施設計を行って本件工事を発注していた。
 しかし、自家発電設備が設置された建築物は建築基準法 (昭和25年法律第201号)第7条第5項の規定による検査済証等によれば地上2階建てであり、当該建築物やその周囲の地形の現況からも、地上1階、地下1階建てではなく、地上2階建てであった(参考図 参照)。
 したがって、自家発電設備の設置箇所は2階建ての建築物の2階に該当することから、設計用標準震度を2.0として耐震設計計算を行うべきであった。そこで、自家発電設備のうち蓄電池盤のアンカーボルトについて改めて耐震設計計算の報告を求めて、その内容を確認したところ、地震時に蓄電池盤のアンカーボルト(径12mm、埋込長さ60mm)に作用する引抜力は10.01kN/本となり、許容引抜力6.70kN/本を大幅に上回っていて、耐震設計計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
 したがって、本件自家発電設備は蓄電池盤のアンカーボルトの設計が適切でなかったため、地震時において防災行政無線の中継局への電力を供給する機能の維持が確保されておらず、これに係る交付金6,405,000円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、同市において蓄電池盤のアンカーボルトの設計に当たり、耐震設計指針の理解が十分でなかったこと、石川県において同市に対する指導及び監督が十分でなかったことなどによると認められる。

引抜力・許容引抜力  「引抜力」とは、機器等に地震力が作用する場合に、ボルトを引き抜こうとする力が作用するが、このときのボルト1本当たりに作用する力をいう。この引抜力が設計上許される上限を「許容引抜力」という。

参考図

蓄電池盤を設置している建築物の概念図

蓄電池盤を設置している建築物の概念図