会計名及び科目 | 一般会計 (組織)海上保安庁 | (項)海上保安官署施設費 |
(項)船舶交通安全及海上治安対策費 | ||
(平成19年度は、 | (項)海上保安官署) | |
(項)船舶建造費 | ||
(項)航路標識整備事業費 | ||
部局等 | 第八管区海上保安本部 | |
不適正な会計経理により支払われた経費の概要 | 無線設備等の整備、管理等を行うために必要となる消耗品等の購入及び点検整備等の役務に係る経費 | |
不適正な会計経理により支払われた金額 | 11,430,440円(平成19年度〜23年度) |
第八管区海上保安本部(以下「海上保安本部」という。)は、海上保安庁法(昭和23年法律第28号)に基づき設置された地方支分部局であり、総務部等6部門で構成されている。また、海上保安本部の所掌事務の一部を分掌するために、海上保安部、海上保安署、情報通信管理センター(平成24年度からは総務部情報通信企画室。以下「センター」という。)等の事務所が設置されている。このうちセンターは、情報通信システムの整備及び管理に関する事務を分掌しており、海上保安本部管内に配属されている巡視船艇等に搭載されている無線設備等の整備、管理等を行っている。そして、これらを行うために必要となる消耗品等の購入及び点検整備等の役務に係る経費は、一般会計の通信業務庁費等の予算科目から支払われている。
国の会計経理については、財政法(昭和22年法律第34号)、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等の会計法令等により、国の会計年度は毎年4月1日から翌年3月31日までとされており、原則として、各会計年度における経費は当該年度の歳入をもって支弁しなければならないとされている。また、歳出の会計年度の所属は、消耗品等の購入代価等で相手方の行為の完了があった後交付するものは、その支払をなすべき日の属する会計年度に所属することとされている。さらに、国の会計機関が契約を締結した場合には、給付の完了を確認するため必要な検査を行わなければならず、検査が完了した場合には、原則として、所定の検査調書を作成し、当該検査調書に基づかなければ支払をすることができないとされている。
海上保安本部は、国土交通省所管会計事務取扱規則(平成13年国土交通省訓令第60号)等により、海上保安本部の本部長を支出負担行為担当官に、経理補給部長を官署支出官及び物品管理官にそれぞれ指定するなどして通信業務庁費等の支払等に係る会計事務を行っており、海上保安庁請負契約等監督検査規則(昭和42年海上保安庁訓令第30号。以下「規則」という。)等により、センター等の職員が支出負担行為担当官の補助者である監督職員又は検査職員として契約の履行について必要な監督又は検査を行っている。
なお、海上保安庁では、規則等により、契約金額が200万円を超えない場合には、検査調書の作成を省略し、検査職員が当該契約の請書、納品書等の関係書類に検査を行った年月日を付記し、記名押印することとされている。
本院は、合規性等の観点から、消耗品等の購入及び無線設備の点検整備等の役務が会計法令等に基づき適正に行われているかなどに着眼して、海上保安本部において、19年度から23年度までの間に締結した消耗品等の購入及び無線設備等の点検整備等の役務に係る契約等を対象として、支出決定決議書等の書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、海上保安本部において、19年度から23年度までの契約等について、虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な会計経理を行って通信業務庁費等を支払っていたものが、計26件、11,430,440円あった。
これらを態様別に示すと、次のとおりである。
ア 契約手続を行わないまま前年度に実施した無線設備の点検整備に係る未払金に充当するため、業者と架空の消耗品購入契約を締結し、実際には納入されていないのに納入されたとする虚偽の内容の関係書類を作成するなどして通信業務庁費を支払っていたもの
3件、支払額計1,564,500円
(ア) 海上保安本部は、22年度に株式会社シモセンと2件の随意契約を締結し、水圧センサ—6個等の消耗品を計1,289,820円で購入することとしていた。そして、納入先として指定したセンターにおいて、検査職員が、それぞれ契約どおりに消耗品が納入されたとして、納品書に検査を行ったとする年月日を付記し記名押印していた。海上保安本部は、これに基づき同社に上記の額を支払っていた。
しかし、上記の消耗品購入契約はいずれも架空のものであり、センターは、上記の契約額計1,289,820円のうち309,225円分については、実際に消耗品を納入させていたものの、残額の980,595円分については、前年度に契約手続を行わないまま同社に実施させた4件の無線設備の点検整備に係る未払金計977,025円に充てていた。
なお、センターは、上記残額計980,595円と未払金計977,025円との差額である3,570円について余分に支払うこととなる旨を同社に伝えていた。
(イ) 海上保安本部は、22年度に株式会社舞鶴計器と随意契約を締結し、同軸ケーブル4本等の消耗品を274,680円で購入することとしていた。そして、納入先として指定したセンターにおいて、検査職員が、契約どおりに消耗品が納入されたとして、納品書に検査を行ったとする年月日を付記し記名押印していた。海上保安本部は、これに基づき同社に上記の額を支払っていた。
しかし、上記の消耗品購入契約は架空のものであり、センターは、これに係る支払額を前年度に契約手続を行わないまま同社に実施させた3件の無線設備の点検整備に係る未払金計291,900円に充てていた。
なお、海上保安本部の支払額274,680円と未払金計291,900円との差額である17,220円は、同社の会計経理において値引きとして処理されていた。
イ 契約手続を行わないまま実施した無線設備の点検整備に係る未払金に充当するため、別の業者と架空の修理契約を締結し、実際には修理が行われていないのに行われたとする虚偽の内容の関係書類を作成するなどして通信業務庁費を支払っていたもの
1件、支払額726,000円
海上保安本部は、22年3月1日に宮地無線工業所(以下「宮地無線」という。)と随意契約を締結し、航空短波送信機1個を726,000円で修理することとしていた。そして、当該修理の請求元であるセンターにおいて、検査職員が、修理が完了したとして、完了届に検査を行ったとする年月日を付記し記名押印していた。海上保安本部は、これに基づき宮地無線に上記の額を支払っていた
しかし、上記の修理契約は架空のものであり、センターは、これに係る支払額を21年度に契約手続を行わないまま金田商事株式会社(以下「金田商事」という。)に実施させた2件の無線設備の点検整備に係る未払金計674,625円に充てるため、宮地無線から金田商事へ同額を振り込むように依頼していた。そして、海上保安本部は、上記の架空の契約に基づき宮地無線に726,000円を支払い、その後、宮地無線は金田商事へ674,625円を振り込んでいた。
なお、海上保安本部は、海上保安本部の支払額726,000円と未払金計674,625円との差額である51,375円については、宮地無線に実施させた航空短波送信機の試験調整に係る代金相当額であるとしているが、具体的に試験調整を行ったことを証明できる書類はないとしている。
また、前記の架空の修理契約は、22年度に入ってから22年2月に遡及して支出負担行為担当官等に修理の請求を行ったことにしていたものである。海上保安本部は、センターからの不適正な請求を受入れ、22年3月1日に遡及して宮地無線と契約をしたこととしていた。
ウ 契約手続を行わないまま実施した無線設備の点検整備に係る未払金を、別の業者が請け負った工事契約の代金の一部から支払わせていたもの
1件、支払額1,663,515円
センターは、21年度に、契約手続を行わないまま有限会社吉田電機工業所(以下「吉田電機」という。)に6件の無線設備の点検整備を実施させていた。そして、センターは、21年度末に、吉田電機から上記の点検整備に係る代金1,663,515円の支払の督促を受けたが、予算がなかったため、名古屋通信工業株式会社(以下「名古屋通信」という。)に上記代金の立替えを依頼した。センターの依頼を受けた名古屋通信は、同年度に既に海上保安本部と締結していた工事契約(契約額44,730,000円)の一部を吉田電機に下請けに出したこととする架空の工事請負契約を吉田電機と締結し、その代金として1,663,515円を吉田電機に振り込むことにより立替えを行っていた。
これらのほか、センター等4部門等において、19年度から23年度までの間に、契約手続を行わないまま消耗品等を納入させたり、役務を実施させたりなどしているのに、関係書類に実際の納品日や完了日よりも後の日付を検査日として記載することなどにより、消耗品等や役務が契約締結後に納入又は完了されたなどとして通信業務庁費等を計21件、7,476,425円支払っていた。
これらの事態は、虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な会計経理を行って計11,430,440円を通信業務庁費等から支払ったものであり、会計法令等に違反しており、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、海上保安本部において会計法令等を遵守することの認識が著しく欠けていたこと、海上保安庁本庁において海上保安本部に対する会計事務手続の適正な執行についての指導監督等が十分でなかったことなどによると認められる。