超長期住宅先導的モデル事業補助金の補助対象の事業のうち、地域住宅モデル普及推進事業は、地域の特性に応じた長寿命の住宅の普及に資するために、地域の建材の活用、気候風土等に配慮した展示住宅の整備、定住促進等のための地域での生活体験の滞在施設(以下「生活体験施設」という。)の整備等に要する費用の一部について、国土交通省から直接又は地方公共団体若しくは一般社団法人工務店サポートセンター(注1) を通じて補助するものである。
超長期住宅先導的モデル事業補助金交付要綱(平成20年国住市第753号。以下「交付要綱」という。)及び地域住宅モデル普及推進事業募集要領によれば、補助金の額は整備事業費、附帯事業費及び地方公共団体附帯事務費の合計額とされている。このうち、整備事業費は展示住宅及び生活体験施設(以下、これらを合わせて「展示住宅等」という。)を新築又は改修により整備するために要する費用を基に算出されることとされており、補助対象限度額は新築の長期優良タイプ(注2)
の場合は2600万円、新築の長寿命化普及タイプ(注2)
及び改修の場合は2200万円とされている。そして、交付要綱によれば、展示住宅等に最低限必要な設備以外の設備及び外構関連施設等の整備費は、補助の対象とはならないこととされている。また、附帯事業費は、建築設計費及び整備した展示住宅等の普及促進等に要する費用を基に算出することとされている。さらに、地方公共団体附帯事務費は、地方公共団体における当該補助事業に係る事務に要する費用とされている。
そして、これらの補助事業に要する費用については、補助事業者及び間接補助事業者(以下「事業者」という。)における他の経理と明確に区分することとされている。
事業者は、補助事業が完了したときは、交付要綱に従い完了実績報告書を提出し、国土交通本省は、提出を受けた完了実績報告書について審査を行うとともに、必要に応じて現地調査を行い、報告に係る補助事業の成果が交付決定の内容に適合すると認められる場合には、補助金の額を確定して、支払うこととされている。なお、地方公共団体等は、国土交通本省へ完了実績報告書を提出する際に、間接補助事業者が実施したとする事業の内容を確認している。
また、交付要綱によれば、事業者は、補助事業完了後に消費税及び地方消費税の申告により補助金に係る消費税仕入控除税額が確定した場合には、当該消費税及び地方消費税に係る仕入控除税額を国庫に返還することとされている。さらに、耐用年数が1年を超えるような備品等については、リース契約等により借り受けることとされているが、購入した場合には、補助事業完了後、その残存価格に係る国庫補助金相当額を国庫に返還することとされている。
本院が17都道府県の144事業者において会計実地検査を行ったところ、9事業者において、補助の対象とならない費用を含めていたり、国庫補助対象事業費が補助対象限度額を超えていたり、残存価格の処理に係る手続が適切でなかったりしたため、国庫補助金計33,346,905円が過大に交付されるなどしていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、事業者において補助の対象となる事業の範囲についての理解が十分でなく、補助事業の適正な実施及び経理に対する認識が欠けていたこと、国土交通本省において完了実績報告書の審査及び確認が十分でなかったこと、地方公共団体等において完了実績報告書の確認が十分でなかったことなどによると認められる。
これを事業主体別に示すと次のとおりである。
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 (国庫補助対象事業費) |
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 (国庫補助対象事業費) |
不当と認める国庫補助金等相当額 | ||||
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||||||
(258) | 国土交通本省 | 株式会社カワムラ (事業主体) |
— | 地域住宅モデル普及推進 | 20、21 | 55,184 (52,556 |
) |
47,556 | 4,750 (2,142 |
) |
2,142 |
株式会社カワムラは、北海道旭川市において、生活体験施設3棟を建設するなどし、整備事業費45,000,000円、附帯事業費2,556,857円、計47,556,857円を補助金の額とする完了実績報告書を平成21年11月18日に提出して、同額の国庫補助金の交付を受けていた。
しかし、同社は、支払実績のない生活用品のリース料を附帯事業費に含めていた。
したがって、リース契約に係る費用を控除して適正な国庫補助対象事業費を算定すると5,414,000円となり、本件国庫補助対象事業費52,556,857円との差額2,142,857円が過大となっていて、これに係る国庫補助金2,142,857円が不当と認められる。
(259) | 国土交通本省 | 小松建設株式会社 (事業主体) |
— | 地域住宅モデル普及推進 | 20、21 | 29,201 (29,201 |
) |
16,572 | 3,192 (3,192 |
) |
2,534 |
小松建設株式会社は、北海道伊達市において、展示住宅1棟を建設するなどし、整備事業費13,371,000円、附帯事業費3,201,000円、計16,572,000円を補助金の額とする完了実績報告書を平成21年9月30日に提出して、同額の国庫補助金の交付を受けていた。
しかし、同社は、補助の対象とならない外構関連施設等に該当する展示住宅に併設された車庫の建設費等を整備事業費に含めていた。また、附帯事業として、パンフレット及びチラシの作成等を行っていたが、パンフレットの作成工程が同年10月31日までとなっていたり、チラシの納品日が22年1月となっていたりなどしていて、完了実績報告書提出時点では、いずれも完了していなかった。
したがって、車庫の建設費、パンフレットの作成費等を控除して適正な国庫補助対象事業費を算定すると26,008,552円となり、本件国庫補助対象事業費29,201,000円との差額3,192,448円が過大となっていて、これに係る国庫補助金2,534,000円が不当と認められる。
(260) | 国土交通本省 | 美幌.木夢クラブ (事業主体) |
— | 地域住宅モデル普及推進 | 20、21 | 145,462 (145,457 |
) |
82,307 | 2,810 (2,804 |
) |
2,797 |
美幌.木夢(びほろどっとこむ)クラブは、北海道網走郡美幌町において、長期優良タイプの展示住宅5棟を建設するなどし、整備事業費70,350,000円、附帯事業費11,957,000円、計82,307,000円を補助金の額とする完了実績報告書を提出して、同額の国庫補助金の交付を受けていた。そして、展示住宅5棟分の建設費(1棟当たり2600万円)計130,000,000円に5棟分の外部給排水接続工事費計3,500,000円を加えるなどして整備事業費を算出していた。
しかし、1棟当たりの補助対象限度額には、展示住宅等の整備に要する外部給排水接続工事費も含まれていることから、上記の整備事業費は1棟当たりの補助対象限度額である2600万円を超えていた。
したがって、補助対象限度額を上回った費用を控除するなどして適正な国庫補助対象事業費を算定すると142,652,803円となり、本件国庫補助対象事業費145,457,000円との差額2,804,197円が過大となっていて、これに係る国庫補助金2,797,000円が不当と認められる。
(261) | 国土交通本省 | 一般社団法人工務店サポートセンター | 株式会社倉沢工務店 (事業主体) |
地域住宅モデル普及推進 | 20、21 | 30,141 (29,769 |
) |
20,751 | 1,421 (1,049 |
) |
1,049 |
株式会社倉沢工務店は、東京都葛飾区において、展示住宅1棟を建設するなどし、整備事業費16,232,000円、附帯事業費4,519,000円、計20,751,000円を補助金の額とする完了実績報告書を平成22年2月24日に提出して、一般社団法人工務店サポートセンターを通じて同額の国庫補助金の交付を受けていた。
しかし、同社は、完了実績報告書提出後に行った展示住宅の温度や湿度の連続測定等に係る費用を附帯事業費に含めていた。
したがって、温度や湿度の連続測定等に係る費用を控除して適正な国庫補助対象事業費を算定すると28,719,440円となることから、本件国庫補助対象事業費29,769,000円との差額1,049,560円が過大となっていて、これに係る国庫補助金1,049,000円が不当と認められる。
(262) | 国土交通本省 | 山梨県 | 八ヶ岳家造りの会「木の香」 (事業主体) |
地域住宅モデル普及推進 | 20、21 | 14,480 (13,873 |
) |
12,286 | 14,480 (13,873 |
) |
12,286 |
八ヶ岳家造りの会「木(こ)の香(か)」は、山梨県北杜市において、展示住宅1棟を建設するなどし、整備事業費10,300,000円、附帯事業費1,986,000円、計12,286,000円を補助金の額とするとともに、補助事業の完了日を平成22年3月30日とする完了実績報告書を同月31日に提出して、同額の国庫補助金の交付を受けていた。
しかし、展示住宅の現地での建設工事が同年4月に着手されて同年10月に完成していたり、附帯事業のパンフレットが24年1月に作成されていたりなどしていて、21年度内に事業が完了していなかったのに、同団体は、事業が完了したとする虚偽の内容の完了実績報告書を提出していた。
したがって、本件補助事業は、補助事業年度である21年度に完了していなかったことから、補助の対象とはならず、これに係る国庫補助金12,286,000円が不当と認められる。
(263) | 国土交通本省 | 長野県 | 株式会社ランバーテック (事業主体) |
地域住宅モデル普及推進 | 20、21 | 32,320 (32,200 |
) |
29,600 | 4,200 (4,199 |
) |
4,199 |
株式会社ランバーテックは、長野県松本市において、生活体験施設1棟を建設するなどし、整備事業費23,400,000円、附帯事業費6,200,000円、計29,600,000円を補助金の額とする完了実績報告書を提出して、同額の国庫補助金の交付を受けていた。
しかし、同社は、附帯事業費にパンフレット作成費を含めていたが、その内容が同社の主要事業に関するものであり、整備した生活体験施設の紹介等に関するものとなっておらず、生活体験施設の普及促進等に要する費用に該当しないものであった。また、同社は、平成22年10月に消費税の確定申告を行い、本件補助事業に係る消費税額を仕入税額控除しており、実質的に消費税を負担していないのに、本件補助金に係る消費税額1,409,523円を国に報告及び返還をしていなかった。
したがって、パンフレット作成費を控除して適正な補助金の額を算定すると26,671,000円となり、前記補助金の額29,600,000円との差額2,929,000円が過大となっており、また、この適正な国庫補助金額に係る消費税額1,270,048円は国に報告及び返還されていなかった額となることから、これらの計4,199,048円が不当と認められる。
(264) | 国土交通本省 | 京都市 | 株式会社デザオ建設 (事業主体) |
地域住宅モデル普及推進 | 20、21 | 32,633 (31,000 |
) |
28,400 | 1,949 (1,694 |
) |
1,381 |
株式会社デザオ建設は、京都市南区において、展示住宅1棟を建設するなどし、整備事業費23,400,000円、附帯事業費5,000,000円、計28,400,000円を補助金の額とし、補助事業の完了日を平成22年3月31日とする完了実績報告書を同日に提出して、同額の国庫補助金の交付を受けていた。
しかし、同社は、データ処理用及び個人名簿管理用のノート型パーソナルコンピュータ(耐用年数5年)計2台、展示住宅の広報用チラシ及び図面の印刷用のコピー機(耐用年数4年)計2台の購入費計1,949,928円を附帯事業費に含めていたのに、24年1月の会計実地検査時点においても、補助事業終了後に国庫に返還することとされているこれらの備品等の残存価格に係る国庫補助金相当額を返還していなかった。
したがって、国庫に返還すべき備品等の残存価格を算定すると計1,694,723円となり、これに係る国庫補助金相当額1,381,000円が不当と認められる。
(265) | 国土交通本省 | 隠岐郡海士町 (事業主体) |
— | 地域住宅モデル普及推進 | 20、21 | 130,634 (130,632 |
) |
119,833 | 4,759 (4,758 |
) |
4,655 |
海士町は、同町において、生活体験施設5棟を建設するなどし、整備事業費97,198,920円、附帯事業費18,854,766円、地方公共団体附帯事務費3,779,314円、計119,833,000円を補助金の額とする完了実績報告書を提出して、同額の国庫補助金の交付を受けていた。
しかし、同町は、地方公共団体附帯事務費のうち、コピー機の使用料等計3,726,349円を他の経理と明確に区分せずに本件補助事業に要した費用としていた。また、補助の対象とならない外構等関連施設に該当するブロック舗装及び植栽に要する費用を整備事業費に含めていた。
したがって、明確に区分されていない地方公共団体附帯事務費及びブロック舗装等の費用を控除して適正な国庫補助対象事業費を算定すると125,874,311円となり、本件国庫補助対象事業費130,632,880円との差額4,758,569円が過大となっていて、これに係る国庫補助金4,655,000円が不当と認められる。
(266) | 国土交通本省 | 宮古島市 | 合同会社かたあき(事業主体) | 地域住宅モデル普及推進 | 20、21 | 134,225 (121,621 |
) |
109,762 | 2,562 (2,562 |
) |
2,303 |
合同会社かたあきは、沖縄県宮古島市において、長寿命化普及タイプの生活体験施設6棟(中型2棟、小型3棟、極小型1棟)を建設するなどし、整備事業費106,707,000円、附帯事業費3,055,000円、計109,762,000円を補助金の額とする完了実績報告書を提出して、同額の国庫補助金の交付を受けていた。そして、生活体験施設6棟分の建設費計115,395,000円に6棟分の屋外給水設備等工事費計3,171,000円を加えるなどして整備事業費を算出していた。
しかし、これを1棟ごとにみると、中型2棟において屋外給水設備等工事費を含めた費用が1棟当たりの補助対象限度額である2200万円を超えるなどしていた。
したがって、補助対象限度額を上回った費用等を控除して適正な国庫補助対象事業費を算定すると119,058,531円となり、本件国庫補助対象事業費121,621,000円との差額2,562,469円が過大となっていて、これに係る国庫補助金2,303,000円が不当と認められる。
(258)−(266)の計 | 604,283 (586,311 |
) |
467,067 | 40,126 (36,277 |
) |
33,346 |