部局等 | 補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 | 年度 | 事業費 (国庫補助対象事業費) |
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 (国庫補助対象事業費) |
不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(267) | 大阪府 | 大阪府 | 都市河川改修、河川改修、水の安全・安心基盤整備総合交付金 | 20〜22 | 195,584 (183,945) |
91,972 | 178,082 (178,082) |
89,041 |
この補助事業等は、大阪府が、堺市東区の一級河川西除川において、河川改修により使用できなくなる可動堰(ぜき)の代替施設を築造するために、堰本体工(幅23.0m、延長16.5m)等を実施したもので、堰本体工については、遮水工として、堰本体の直下に鋼矢板(矢板長2.1m。以下「遮水矢板」という。)を設置している(参考図1
参照)。
本件堰本体の設計は、安定計算等の詳細な設計基準を定めた「建設省河川砂防技術基準(案)同解説」(社団法人日本河川協会編。以下「河川砂防基準解説」という。)等に基づき行われている。河川砂防基準解説等によると、土圧、地震時慣性力及び底面摩擦力から算出される地震時の滑動に対する安全率については1.2以上を確保することとされている。
そして、同府は、設計に当たり、堰本体のみの安定計算では地震時の滑動に対する安全率が許容値の1.2を下回るものの、遮水矢板に対する下流側からの受働土圧を考慮すれば安全率が許容値と同じ1.2となるため、堰本体は安全であるとして、これにより施工していた(参考図2
参照)。
しかし、遮水矢板は、堰本体の上下流の水位差によって生ずる浸透水から堰本体直下の地盤を保護することを目的とするものであり、河川砂防基準解説によると、このような遮水矢板には、構造計算上の荷重を分担させてはならないとされている。このため、同府が、遮水矢板に対する下流側からの受働土圧を考慮して本件堰本体の設計を行っていたことは適切ではないと認められた。
そこで、遮水矢板に対する下流側からの受働土圧を考慮せずに改めて安定計算を行ったところ、本件堰本体は、地震時の滑動に対する安全率が0.96となり、許容値の1.2を下回っていて、安定計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、本件堰本体等(工事費相当額178,082,000円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金等相当額89,041,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同府において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図1 )
堰本体工の概念図
(参考図2 )
滑動に対する安定計算に関係する外力の作用状況図