部局等 | 補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 | 年度 | 事業費
(国庫補助対象事業費) |
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 (国庫補助対象事業費) |
不当と認める国庫補助金等相当額 | |||
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||||
(268) | 岡山県 | 岡山県 | 河川改修、水の安全・安心基盤整備総合交付金 | 21、22 | 408,661 (408,131 |
) |
204,065 | 176,959 (176,888 |
) |
88,444 |
この補助事業等は、岡山県が、小田郡矢掛町の一級河川小田川において、河川改修により使用できなくなる固定堰(ぜき)の代替施設を築造するために、本体工(幅101.2mのうち右岸側から72.2mまでを5ブロックに分けて施工、延長15.0m)、取付擁壁工(高さ1.7m〜7.5m、延長計106.6m)、護床工(4t型護床ブロック489個等)等を実施したものである(参考図1
参照)。
本件の堰本体及び取付擁壁の設計は、安定計算等の詳細な設計基準を定めた「建設省河川砂防技術基準(案)同解説」(社団法人日本河川協会編。以下「河川砂防基準解説」という。)等に基づき行われている。河川砂防基準解説等によると、土圧及び底面摩擦力から算出される常時の滑動に対する安全率については1.5以上を確保し、土圧、地震時慣性力及び底面摩擦力から算出される地震時の滑動に対する安全率については1.2以上を確保することとされている。
そして、同県は、堰本体及び取付擁壁の設計に当たり、〔1〕 堰本体については水叩(たた)きなどによる下流側からの受働土圧を考慮し、〔2〕 取付擁壁については取付擁壁の前面に位置する護床ブロック等による受働土圧を考慮してそれぞれ安定計算を行えば、堰本体及び取付擁壁の常時及び地震時の滑動に対する安全率が許容値をそれぞれ上回ることから、安全であるとして、これにより施工していた(参考図2
参照)。
しかし、堰本体及び取付擁壁の設計が次のとおり適切でなかった。
ア 堰本体
河川砂防基準解説等によると、上流側からの主働土圧及び下流側からの受働土圧について、本件堰本体のように上下流で地盤高に差がある場合(本件の地盤高の差は1.5m)には、下流側は流水により河床が洗掘され、水叩きなどが流失するおそれがあることから、堰本体の上流側からの主働土圧のみを考慮し、下流側からの受働土圧は考慮しないこととされている。
そこで、水叩きなどによる下流側からの受働土圧を考慮せずに改めて安定計算を行ったところ、本件堰本体のうち最も右岸側に築造したブロックは、常時の滑動に対する安全率が1.28、堰本体全体は、地震時の滑動に対する安全率が0.71から1.11までとなり、許容値の1.5及び1.2をそれぞれ下回っていて、安定計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
イ 取付擁壁
「解説・河川管理施設等構造令」(財団法人国土技術研究センター編)によると、取付擁壁の構造は、河床の洗掘等に対処するために設置される水叩きなどが流失しても、安定した構造とすることとされている。このため、本件取付擁壁は、前面の護床ブロック等が流失した場合においても、安定した構造とする必要があると認められた。
そこで、護床ブロック等による受働土圧を考慮せずに改めて安定計算を行ったところ、本件取付擁壁の延長106.6mのうち36.0mについては、地震時の滑動に対する安全率が0.85及び0.93となり、許容値の1.2を下回っていて、安定計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、本件堰本体及び延長36.0mに係る取付擁壁(工事費相当額176,959,819円、うち国庫補助対象額176,888,000円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金等相当額88,444,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。
堰本体工及び取付擁壁工の概念図
滑動に対する安定計算に関係する外力の作用状況図
(堰本体)
(取付擁壁)