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  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの|
  • (2) 工事の設計が適切でなかったもの

カルバート基礎工の設計が適切でなかったもの


 カルバート基礎工の設計が適切でなかったもの

(1件 不当と認める国庫補助金 28,413,550円)

  部局等 補助事業者等
(事業主体)
補助事業等 年度 事業費
(国庫補助対象事業費)
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
(国庫補助対象事業費)
不当と認める国庫補助金等相当額
千円  千円  千円  千円 
(270) 群馬県 群馬県 地域活力基盤創造交付金、活力創出基盤整備総合交付金 21、22
132,016
(132,016


72,609
51,661
(51,661


28,413

 この交付金事業は、群馬県が、一般国道120号椎坂バイパス建設事業の一環として、沼田市利根町園原地内において、道路の新設により遮断される既存の河川の機能を維持するため、カルバートの築造等を実施したものである。
 上記のカルバートは、道路と河川が交差する箇所において、道路、盛土等の下を横断する形で延長50.7mにわたって築造するもので、このうち延長41.0mの区間については、上流の第1ブロックから下流の第9ブロックまでの9ブロックに分けて、それぞれ側壁(高さ1.7m〜2.3m)及び底版(幅5.7m)から構成される現場打ち鉄筋コンクリート構造の基礎工(以下「カルバート基礎工」という。)の上部にアーチ形コルゲートパイプを設置する構造となっている(参考図 参照)。
 本件カルバート基礎工の設計は、「道路土工 カルバート工指針」(社団法人日本道路協会編)等に基づいて行われている。これらによると、荷重はカルバートに最も不利となるように作用させて設計することとされている。
 同県は、本件カルバート基礎工の設計に当たり、道路からの活荷重(注1) による影響を受ける区間を第3ブロックから第6ブロックまでの区間(延長計19.2m。以下「道路下区間」という。)とし、盛土法面下の活荷重による影響を受けない区間を第1ブロック及び第2ブロックの区間並びに第7ブロックから第9ブロックまでの区間(延長計21.8m。以下「法面下区間」という。)としていた。また、道路下区間と法面下区間のそれぞれについて、カルバートの土被り厚と側壁高がいずれも最大となる場合にカルバートに最も不利となるように荷重が作用するとして、道路下区間では土被り厚を7.4m、側壁高を2.3m、法面下区間では土被り厚を5.6m、側壁高を2.3mとして、カルバート基礎工の側壁及び底版の応力計算を行っていた。
 そして、同県は、配筋図において、各ブロックの底版上面側に配置する主鉄筋については、道路下区間では径25mmの鉄筋を、また、法面下区間では径22mmの鉄筋を、それぞれ25cm間隔に配置することとして、これにより施工していた。
 しかし、本件カルバート基礎工の設計は、次のとおり適切でなかった。

ア 同県は、前記の応力計算の結果、各ブロックの底版上面側に配置する主鉄筋については、道路下区間では径25mmの鉄筋を、法面下区間では径22mmの鉄筋を、それぞれ12.5cm間隔に配置すれば、主鉄筋に生ずる引張応力度(注2) (常時)(注3) が許容引張応力度(注2) (常時)を下回ることから、応力計算上安全であるとしていた。しかし、同県は、配筋図を作成する際に、これらの主鉄筋を誤って25cm間隔に配置することとしていた。

イ 同県は、本件カルバート基礎工の応力計算に当たり、前記のとおり、カルバートの土被り厚と側壁高がいずれも最大となる場合に最も不利となるように荷重が作用すると判断したことから、この場合についてのみ応力計算を行っていた。しかし、本件カルバート基礎工は、各ブロックの上流端と下流端とにおいて側壁高が異なる構造物であり、同一の土被り厚であっても、側壁高が最大(2.3m)となる場合と最小(1.7m)となる場合があることから、それぞれの場合について応力度を比較して、応力度が大きい方において、カルバートに最も不利となるように荷重が作用するとして設計すべきであった。現に、側壁高が最小となる場合等について応力計算を行ったところ、例えば、道路下区間では、土被り厚が最大で側壁高が最小となる箇所(土被り厚7.4m、側壁高1.7m)において、底版上面側に配置する主鉄筋に最も不利となるように荷重が作用することになるため、本件カルバート基礎工の底版上面側に配置する主鉄筋に作用する荷重は過小に計算されていた。
 そこで、本件カルバート基礎工の各ブロックについて、上記のア及びイに基づき、改めて応力計算を行ったところ、各ブロックの底版上面側の主鉄筋に生ずる引張応力度(常時)の最大値は、第2ブロックから第8ブロックまでの区間において、194N/mm2 (第8ブロック)〜368N/mm2 (第5ブロック)となり、許容引張応力度(常時)160N/mm2 を大幅に上回っていて、応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
 したがって、本件カルバート基礎工は設計が適切でなかったため、第2ブロックから第8ブロックまでの延長計33.6mのカルバート基礎工等(これらの工事費相当額計51,661,000円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額28,413,550円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。

(注1)
 活荷重  自動車等が構造物上を移動する際に作用する荷重
(注2)
 引張応力度・許容引張応力度  「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。
(注3)
 常時  地震時などに対応する表現で、土圧など常に作用している荷重及び輪荷重など作用頻度が比較的高い荷重を考慮する場合をいう。

(参考図)

カルバートの概念図

カルバートの概念図

カルバート断面概念図

カルバート断面概念図

カルバート基礎工側面概念図

カルバート基礎工側面概念図