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  • 平成23年度|
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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

地方整備局等が締結する委託契約に係る精算について、契約書等において委託費の精算方法を明確にすることなどにより、委託契約に係る会計経理が適切に行われるよう是正改善の処置を求めたもの


(6) 地方整備局等が締結する委託契約に係る精算について、契約書等において委託費の精算方法を明確にすることなどにより、委託契約に係る会計経理が適切に行われるよう是正改善の処置を求めたもの

会計名及び科目 社会資本整備事業特別会計 (治水勘定) (項)河川整備事業費
    (項)多目的ダム建設事業費
  (道路整備勘定)
    (項)地域連携道路事業費 等
部局等 4地方整備局、2地方運輸局、18事務所
委託契約の概要 国土交通省地方整備局等が所掌する事務・事業を国以外の者に委託して実施するもの
検査対象とした契約件数及び契約金額
178件   68億7603万余円
(平成19年度〜23年度)
上記のうち精算報告書に記載された経費の額が委託業務に要した経費の実支出額より大きくなっているものの契約件数及び開差額
 12件   3849万円
(平成20年度〜23年度)

【是正改善の処置を求めたものの全文】

 地方整備局等が締結する委託契約に係る会計経理について

(平成24年10月26日付け 国土交通大臣宛て)

 標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 地方整備局等が締結する委託契約に係る会計経理の概要

(1) 地方整備局等が締結する委託契約の概要

 貴省の地方整備局、地方運輸局及びこれらの管内の事務所(以下、これらを合わせて「地方整備局等」という。)は、国が管理する河川の堤防周辺の清掃、水門等の操作管理、公共施設用地の取得、埋蔵文化財の発掘調査等、各種の事務・事業を地方公共団体等(以下「受託者」という。)に委託して実施している。
 これらの委託に当たっては、契約書において、受託者は、業務が完了した後、完了報告書と合わせて当該業務に要した経費を記載した書類(以下「精算報告書」という。)を地方整備局等に提出し、地方整備局等は、提出を受けた精算報告書等について、これを適正と認めた場合に、業務に要した経費を受託者に支払うこととしている。

(2) 国土交通本省委託契約取扱要領の概要

 国土交通省(外局、地方支分部局、特別の機関及び施設等機関を除く。以下「本省」という。)は、所掌する各種統計資料等の収集整備等の業務を国以外の者に委託し実施している。本省は、これらの委託業務を実施するために国土交通本省委託契約取扱要領(平成13年4月2日付け国官会第293号。以下「本省要領」という。)を定め、委託契約について次のような規定を設けている。

ア 受託者は、委託業務を完了したときは、完了報告書、精算報告書、委託費経費内訳報告書等を本省に提出しなければならない。

イ 本省は、精算報告書等を受理したときは、その検査を行い、検査の結果、合格と認めた場合は、委託費の額を確定するが、その確定額は、委託業務に要した経費の実支出額と契約書に記載された委託費の限度額のいずれか低い額とする。

ウ 受託者は、委託費の経理について、本省要領に規定する実施計画書の経費積算内訳に計上した経費ごとに、当該委託事業、受託者が財源を負担する単独事業、国庫補助事業、他の委託事業の経費等との区分経理の徹底を図る。

エ 受託者は、委託費の経理について、他の事業とは別に帳簿を備え、その収入・支出をその都度記録してこれを明らかにするとともに、当該収入・支出を証する証拠書類を整備保存しなければならない。

オ 受託者は、委託費の精算に当たり、根拠資料により確認し得る委託費の実支出額を精算報告書に記載して報告する。

 このように、本省要領では、本省が締結する委託契約について、適切な精算を行うために、精算方法及び受託者の義務が具体的に定められている。
 そして、本省の委託業務が各種統計資料等の収集整備等であるのに対し、地方整備局等の委託業務は水門等の操作管理等であって、業務の内容が異なることなどから、本省要領は本省が締結する委託契約にのみ適用されるものとされ、地方整備局等が締結する委託契約に適用する要領の制定等については、各地方整備局等に任されている。

2 本院の検査結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本省、地方整備局等は、各種の事務・事業を多数委託しており、本省が締結する委託契約については、前記のとおり、適切な精算を行うため本省要領が制定されているが、地方整備局等の委託契約については、要領の制定等は各地方整備局等に任されている。
 そこで、経済性等の観点から、地方整備局等が締結する委託契約に係る会計経理は適切に行われているかなどに着眼して、本省において地方整備局等における要領の制定等の状況について検査するとともに、4地方整備局(注1) 、2地方運輸局(注2) 及び4地方整備局管内の18事務所(注3) 、計24地方整備局等が締結した委託契約について、当該委託契約の相手方において、会計実地検査を行った。
 検査に当たっては、上記の24地方整備局等が平成19年度から23年度までの間に締結した178件の委託契約(契約金額計68億7603万余円)を対象として、契約書、仕様書、精算報告書及びその根拠資料等の書類により検査を行った。

 (検査の結果)

 検査したところ、前記の4地方整備局及び2地方運輸局のうち、1地方整備局は委託契約に適用する要領を定めていたが、他の3地方整備局及び2地方運輸局は定めていなかった。また、要領を定めていた1地方整備局においても、受託者は精算報告書を提出しなければならないとしているものの、前記の本省要領が定めるような具体的な精算方法等についての定めはなかった。
 そして、委託契約に係る契約書等についてみたところ、受託者は業務を完了したときは精算報告書を提出しなければならないと記載しているだけで、精算報告書に業務に要した経費の実支出額を記載して報告すべきことなどについては記載していなかった。そのため、精算報告書に記載された経費の額が受託者が当該委託業務に要した経費の実支出額となっていないものがあり、精算報告書に記載された額が実支出額より多くなっていたものが12契約(開差額計3849万余円)見受けられた。
 これらを態様別に示すと次のとおりとなる。

〔1〕 精算報告書に記載した人件費について、受託者が、契約締結時に地方整備局等から示された委託費の積算内訳書等に記載されていた1時間当たりの単価に、委託業務に要した時間数を乗じて算定していたもの

6契約、開差額計2424万余円

〔2〕 精算報告書に記載した人件費について、委託業務に従事しなかった者も含めた人件費の総支給額を、委託業務に従事しなかった者も含めた全職員数で除するなどして1人1か月当たりの人件費の単価を算出し、これに当該委託業務に従事した人月数を乗じて算定していたもの

3契約、開差額計703万余円

〔3〕 精算報告書に記載した経費について、受託者が、契約締結時に予定した経費の額と同額を記載していたもの

3契約、開差額計721万余円

<事例>

 四国地方整備局は、平成21年度松山管内埋蔵文化財発掘調査業務を愛媛県に委託して実施している。同県は、精算報告書において、同整備局の委託業務に従事しなかった職員を含む発掘調査担当課の職員全員に対する人件費の実際の総支給額を、発掘調査担当課の全職員数で除するなどして1人1か月当たりの人件費の単価を算出し、これに当該委託業務に従事した人月数を乗じて、人件費を6173万余円と算定していた。
 しかし、同県が当該委託業務に従事した者に対して実際に支払った人件費のみを積み上げると、その実支出額は5857万余円であり、精算報告書に記載した額を316万余円下回っていた。

 (是正改善を必要とする事態)

 以上のように、地方整備局等が締結している委託契約において、精算報告書に記載された経費の額が、受託者が業務を実施するために要した実支出額となっていない事態は適切とは認められず、是正改善の要があると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、地方整備局等において、精算報告書には経費の実支出額を記載すべきことを契約書等に明確にしていないこと、精算報告書の審査において、精算報告書に記載された経費の額が実支出額であるかどうかを根拠資料により十分確認していないことなどによると認められる。

3 本院が求める是正改善の処置

 地方整備局等は、今後とも多数の事務・事業を委託し実施することが見込まれる。
 ついては、貴省において、地方整備局等に対して、精算報告書には経費の実支出額を記載すべきことを契約書等において明確にすること、精算報告書に記載された経費の額が実支出額であるかどうかを根拠資料により十分確認することなどについて周知して、委託契約に係る会計経理が適切に行われるよう是正改善の処置を求める。

(注1)
 4地方整備局  関東、中部、四国、九州各地方整備局
(注2)
 2地方運輸局  中部、四国両運輸局
(注3)
 18事務所  木曽川上流河川、高山国道、沼津河川国道、三重河川国道、木曽川下流河川、紀勢国道各事務所、長島ダム管理所、徳島河川国道、筑後川河川、遠賀川河川、福岡国道、武雄河川、嘉瀬川ダム工事、佐賀国道、長崎河川国道、菊池川河川、佐賀河川総合開発工事、国営吉野ヶ里歴史公園各事務所