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自動計測装置による特殊車両の指導取締りを実施するに当たり、重量計測装置の検査・点検等を適切に行うよう是正改善の処置を求め、違反事業者に対する指導警告等を適切に行うなどするよう改善の処置を要求したもの


(8) 自動計測装置による特殊車両の指導取締りを実施するに当たり、重量計測装置の検査・点検等を適切に行うよう是正改善の処置を求め、違反事業者に対する指導警告等を適切に行うなどするよう改善の処置を要求したもの

会計名及び科目 社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定) (項)道路交通安全対策事業費
(平成19年度以前は、道路整備特別会計(項)道路環境改善事業費 等)
部局等 12国道事務所等
事業の根拠 道路法(昭和27年法律第180号)、車両制限令(昭和36年政令第265号)
自動計測装置の概要 走行中の車両の重量等を自動で計測できる装置
自動計測装置の設置費
21基 40億3377万円 (背景金額)(平成17年度〜20年度)
上記自動計測装置の定期検査等に係る経費
21基 2億7486万円 (背景金額)(平成22、23両年度)

【是正改善の処置を求め及び改善の処置を要求したものの全文】

 特殊車両の通行に関する指導取締りに係る自動計測装置の運用について

(平成24年10月26日付け 国土交通大臣宛て)

 標記について、下記のとおり、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求め、及び同法第36条の規定により改善の処置を要求する。

1 自動計測装置による指導取締りの概要

(1) 特殊車両通行許可制度の概要

 貴省は、道路法(昭和27年法律第180号。以下「法」という。)に基づき、車両の幅、重量、高さなどの最高限度(以下「一般的制限値」という。)を車両制限令(昭和36年政令第265号)において定めている。
 そして、法第47条第2項において、車両でその一般的制限値を超えるものは、道路を通行させてはならないとされている。また、法第47条の2第1項において、道路管理者は、一般的制限値を超える車両(以下「特殊車両」という。)について、車両の構造又は車両に積載する貨物が特殊であるためやむを得ないと認めるときは、当該車両を通行させようとする者の申請に基づいて、通行経路、通行時間等について、道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため必要な条件を付して通行を許可することとされている。しかし、法第47条第2項の規定に違反し、又は法第47条の2第1項の規定により道路管理者が付した条件に違反している特殊車両(以下「違反車両」という。)が多く、これらの違反車両は、橋りょうや舗装などの道路構造物に疲労や劣化の悪影響を及ぼすほか、ときには重大な事故を引き起こす場合がある。

(2) 特殊車両の通行に関する指導取締り

 貴省は、「車両の通行の制限について」(昭和53年建設省道交発第96号道路局長通達)の別添として「特殊車両の通行に関する指導取締要領」(以下「取締要領」という。)を定めており、これにより、道路管理者は、違反車両を通行させている者(以下「違反者」という。)に対して、重量計、車高計、車幅計等を備えた指導取締基地を設置するなどして定期的に指導取締りを実施し、違反者に対して措置命令又は指導警告を行い、許可の取消しや告発をすることとされている。
 貴省は、平成8年に、違反車両による重大な事故が相次いだことから、「特殊車両の通行に関する指導取締りの強化について」(平成8年建設省道交発第73号道路局長通達)を地方整備局等に対して発し、事故の再発を防止するため、指導取締りの一層の強化に努めることとしている。同通達によると、道路管理者は、違反者が重大な交通事故を発生させた場合、常習として、法第47条第2項の規定に違反し、又は法第47条の2第1項の規定により道路管理者が付した条件に違反するなどして特殊車両を通行させた者については、告発をすることとされている。また、道路管理者は、指導取締りを強化するため、重量計、軸重計、車幅計、車長計等必要な諸機材の整備を推進することとされている。
 また、貴省は、20年10月に、取締要領を改正し、道路管理者は、従前の指導取締りに加えて、必要に応じ、走行中の車両の重量等を自動で計測できる装置(以下「自動計測装置」という。)により違反者に対して指導取締りを実施することとしている。そして、道路管理者は、自動計測装置の計測結果に基づき、違反者に対して、指導警告を行うこととし、特殊車両通行許可を受けた者が、常習として、法第47条の2第1項の許可に係る通行経路において法第47条第2項の規定に違反し、又は法第47条の2第1項の規定により道路管理者が付した条件に違反するなどして特殊車両を通行させている場合には、許可を取り消すこととしている。

(3) 自動計測装置の設置

 貴省は、違反者への指導取締体制を強化するため、自動計測装置の整備を進めてきており、17年度から20年度までの間に、22国道事務所等において、全国の一般国道に自動計測装置39基(設置費計65億3707万余円)を設置している。自動計測装置は、車両の重量を計測する機能を持つ重量計測装置、車両の長さ、幅及び高さ(以下「車両寸法」という。)を計測する機能を持つ寸法計測装置等から構成されており、上記39基のうち13基については、重量計測装置、寸法計測装置等が設置されており、残りの26基については、寸法計測装置を除く重量計測装置等が設置されている。

(4) 自動計測装置による指導取締り

 自動計測装置は、その設置箇所を通行する車両のうち特殊車両の総重量・軸重等を自動計測するとともに、車両のナンバー等の車両情報を取得し、計測結果をセンター装置に送信するものである。そして、貴省は、センター装置に送信された自動計測装置による計測結果を全国の特殊車両通行許可データ及び車検証情報と照合し、違反車両及び違反車両の車検証に記載された車両の使用者(以下「事業者」という。)の特定を行うための違反判定システム等を構築するなどしている。
 自動計測装置による指導取締りの実施に当たっては、貴省は、20年10月に定めた「車両重量自動計測装置に係る運用指針(案)」(以下「運用指針」という。)等において、国道事務所等が、当面、自動計測装置のうち重量計測装置により計測した結果に基づいて、違反判定システムにより違反とされた内容について、許可値、計測値、車両番号、ナンバー画像等を確認し、違反車両であることを毎月確認すること(以下「違反判定」という。)としている。そして、違反判定による違反回数(以下「違反回数」という。)が一定回数以上に達した事業者(以下「違反事業者」という。)に対しては、指導警告書及び計測結果確認書を作成して指導警告を行うこととしている。

(5) 自動計測装置の検査・点検等

 貴省が20年10月に定めた「車両重量自動計測装置に係る精度管理指針(案)」(以下「管理指針」という。)等によると、国道事務所等は、自動計測装置のうち、重量計測装置について、定期検査を1年に1回実施すること、また、日常点検を原則として毎日実施して、その機能状態の確認をすることなどとされている。

2 本院の検査結果

 (検査の観点及び着眼点)

 貴省は、自動計測装置を設置して違反者に対して指導取締りを行っており、その設置費用も多額に上っている。
 そこで、本院は、合規性、有効性等の観点から、自動計測装置は、適切に検査・点検等が実施されているか、自動計測装置による計測結果は違反者の指導取締りに有効に活用されているかなどに着眼して検査した。

 (検査の対象及び方法)

 検査に当たっては、6地方整備局(注1) 及び8国道事務所等(注2) において、設置された自動計測装置計16基(設置費計32億8701万余円、22、23両年度における保守管理契約額計1億8036万余円)について、契約書、指導警告書、計測結果確認書等の書類、車両寸法の計測結果や現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行った。
 また、上記8国道事務所等のほか、寸法計測装置を設置している4国道事務所等(注3) の自動計測装置計5基(設置費計7億4676万円、22、23両年度における保守管理契約額計9450万余円)について、車両寸法の計測結果等を地方整備局等から入手して分析するなどの方法により検査した。

(注1
 6地方整備局  関東、北陸、中部、近畿、中国、九州各地方整備局
(注2)
 8国道事務所等  高崎河川、金沢河川、静岡、名古屋、大阪、山口河川、岡山、福岡各国道事務所
(注3)
 4国道事務所等  飯田、兵庫、倉吉河川、大分河川各国道事務所

 (検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 重量計測装置の検査・点検等を適切に行っていなかったことから、違反判定ができない状況となっていたり、計測結果が得られていなかったりしているもの

 4国道事務所等(注4) は、違反車両のナンバー、車両走行状態等の画像が不鮮明な場合があることを把握していたにもかかわらず、その対策を講じていなかった。そのため、違反判定システムにより違反とされた回数が22、23両年度で計55,156回あったのに、違反判定ができなかったことなどから、違反事業者に対して指導警告書を発したものに係る違反回数は計8,082回となっていた。
 また、福岡国道事務所は、重量計測装置が故障していることを把握していたのに、次回の定期検査時に修理することにしていたことから、修理契約等を締結するまでに6か月を要していて、その間に重量計測装置による計測結果が得られていなかった

 4国道事務所等  金沢河川、静岡、大阪、福岡各国道事務所

(2) 違反事業者に対して指導警告書を発しているものの、その後、実効ある措置を講じていないもの

 8国道事務所等(注5) は、22、23両年度に、509違反事業者に対して指導警告書を計1,063件(違反回数計27,873回)発していた。
 そして、その違反走行について計測結果確認書により検査したところ、214違反事業者に対して発した指導警告書計328件(違反回数計8,161回)は、全て無許可での走行となっていた。また、136違反事業者に対して発した指導警告書計202件(違反回数計5,136回)は、全て車検証に記載されている車両総重量を超過している違反走行(以下「車両総重量超過違反」という。)となっていた。そして、違反走行の全てが無許可でかつ車両総重量超過違反となっているものは、130違反事業者、指導警告書計187件(違反回数計4,731回)となっていた。
 さらに、前記509違反事業者のうち、231違反事業者に対して、指導警告書を2回以上発しており、このうち8違反事業者に対しては、指導警告書を10回以上発していて、最高は14回となっていた。
 しかし、8国道事務所等は、これらの違反事業者に対して、特殊車両の通行の許可申請を行うよう指導したり、許可条件を遵守するよう指導したり、違反走行を繰り返す違反事業者に対して、呼び出して指導したり、告発や許可の取消しを行ったりする実効ある措置を講じていなかった。

 8国道事務所等  高崎河川、金沢河川、静岡、名古屋、大阪、山口河川、岡山、福岡各国道事務所

(3) 自動計測装置による車両寸法に係る指導取締り及び寸法計測装置の検査・点検を行っていないもの

 特殊車両の通行に関しては、取締要領において、車両重量のほかに、車両寸法等についても指導取締りを行うこととされており、8国道事務所等(注6) は、計13基の寸法計測装置を設置していた。
 そこで、これらの8国道事務所等における自動計測装置による車両寸法に係る指導取締りの状況及び寸法計測装置の検査・点検について検査したところ、8国道事務所等は、運用指針において、当面、重量についてのみ取り扱うものとし、車両寸法については定められていなかったことから、車両寸法に係る指導取締りを行っていなかった。また、名古屋国道事務所は、寸法計測装置の検査・点検については管理指針において定められていなかったことから、設置した寸法計測装置の検査・点検を全く行っていなかった。

 8国道事務所等  高崎河川、名古屋、飯田、兵庫、山口河川、岡山、倉吉河川、大分河川各国道事務所

 (是正改善及び改善を必要とする事態)

 以上のように、重量計測装置の検査・点検等を適切に行っていなかったことから、違反判定ができない状況となっていたり、重量計測装置による計測結果が得られていなかったりしている事態は適切とは認められず、是正改善の要があると認められる。また、違反事業者に対して指導警告書を発しているものの、その後、実効ある具体的な措置を講じていなかったり、車両寸法に係る指導取締りを行っていなかったりなどしている事態は適切とは認められず、改善の要があると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。

ア 重量計測装置の検査・点検等について、国道事務所等において、重量計測装置の検査・点検等を適切に行うことについての認識が十分でないこと

イ 違反事業者に対する指導警告等について、

(ア) 貴省において、指導警告書を発した後の違反事業者に対する指導方法及び告発や許可の取消しを行うための具体的な手続について定めていないこと
(イ) 国道事務所等において、違反事業者に対する指導警告等を適切に行うことについての認識が十分でないこと

ウ 貴省において、車両寸法について自動計測装置による指導取締りの対象としていないこと及び寸法計測装置を検査・点検の対象としていないこと

3 本院が求める是正改善の処置及び要求する改善の処置

 貴省においては、道路構造の保全と交通の危険防止を図るため、今後も自動計測装置による違反者に対する厳格な指導取締りを行うことが重要である。
 ついては、貴省において、自動計測装置の運用が適切に行われ、自動計測装置による計測結果が違反者への指導取締りに有効に活用されるよう、次のとおり是正改善の処置を求め、改善の処置を要求する。

ア 重量計測装置の検査・点検等について、国道事務所等に対して、管理指針等に基づいて重量計測装置の検査・点検等を適切に実施するよう周知徹底すること(会計検査院法第34条による是正改善の処置を求めるもの)

イ 違反事業者に対する指導警告等について、違反事業者に対して特殊車両の通行許可の申請を行うよう指導したり、違反を繰り返す違反事業者を呼び出して指導したりするなどの指導方法を定めること、また、告発や許可の取消しを行うための具体的な手続を定めるとともに、国道事務所等に対して、違反事業者に対する指導警告等を適切に行うよう周知徹底すること(同法第36条による改善の処置を要求するもの)

ウ 車両寸法について、自動計測装置による指導取締りの対象としたり、寸法計測装置について検査・点検の対象としたりするために、規定の整備、システムの改修等の体制を整備すること(同法第36条による改善の処置を要求するもの)