会計名 | 社会資本整備事業特別会計(空港整備勘定) | |||||
部局等 | 国土交通本省 | |||||
国有財産の分類 | (分類)行政財産 (種類)公用財産 | |||||
空港施設等の概要 | 空港における滑走路、誘導路、エプロン等の土木施設や空港事務所庁舎・管制塔、電源局舎、消防庁舎等の建築施設等の空港施設、航空保安無線施設等の航空路施設及び航空交通管制部施設、航空路監視レーダー施設、対空通信施設等の航空路管制施設が設置されている建築施設 | |||||
液状化調査等を実施して、耐震のための対策が必要と判定していたのに、対策を完了していなかった土木施設数又は液状化調査等を完了していなかった土木施設数(1) | 28施設 | |||||
上記の国有財産台帳価格 | 175億9537万余円(平成23年度末) | |||||
耐震診断を実施して、耐震のための改修が必要と判定していたのに、耐震改修を実施していなかった建築施設数又は耐震診断を実施していなかった建築施設数(2) | 59施設 | |||||
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上記の国有財産台帳価格 | 52億2798万余円(平成23年度末) | |||||
(1)及び(2)の計 | 87施設 | |||||
上記の国有財産台帳価格 | 228億2335万円(背景金額)(平成23年度末) |
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。
貴省は、空港法(昭和31年法律第80号。平成20年6月17日以前は空港整備法)等に基づき、23年度末現在において、国際航空輸送網又は国内航空輸送網の拠点となる20空港(注1)
(以下「国管理空港」という。)の管理等を実施しており、滑走路、誘導路、エプロン等の土木施設や空港事務所庁舎・管制塔、電源局舎、消防庁舎等の建築施設等の施設(以下、これら空港における土木及び建築施設等を合わせて「空港施設」という。)の管理等を実施している。また、3会社(注2)
が管理等を実施している成田、中部、関西各国際空港において、空港施設のうち、貴省が行う空港管制業務等のための空港事務所庁舎・管制塔等の建築施設等の管理等については貴省が実施する一方、滑走路、誘導路、エプロン等の土木施設や電源局舎、消防庁舎等の建築施設等の管理等については3会社が実施している。さらに、貴省は、航空法(昭和27年法律第231号)等に基づき、空港と空港を結ぶ航空路や航空機の出発・到着経路を航空機の計器に示すために必要な地上の航空保安無線施設等の施設(以下「航空路施設」という。)及び航空管制官が行う航空路管制業務に必要な航空交通管制部施設、航空路監視レーダー施設、対空通信施設等の管制施設(以下「航空路管制施設」という。)等の管理等を実施している。
そして、貴省は、これらの空港施設、航空路施設、航空路管制施設等を有機的に機能させることにより、航空ネットワークを形成し、一体的な運用の維持に努めている。
(注1) | 20空港 東京国際、新千歳、稚内、釧路、函館、仙台、新潟、大阪国際、広島、高松、松山、高知、福岡、北九州、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、那覇各空港
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(注2) | 3会社 成田、中部、関西各国際空港株式会社
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貴省は、16年10月に発生した新潟県中越地震において、新潟空港が緊急物資及び人員等の輸送基地としての役割を果たしたことを踏まえ、大規模地震発生時に必要な空港機能を保持することが求められているとして、17年8月に「地震に強い空港のあり方検討委員会」を設置し、同年12月に「地震に強い空港のあり方」を、さらに19年4月に「平成18年度地震に強い空港のあり方」をそれぞれ取りまとめている。
また、交通政策審議会航空分科会は、同年6月に「今後の空港及び航空保安施設の整備及び運営に関する方策について」の答申を行い、空港の耐震化を計画的に実施していくとともに、ハード・ソフトにわたる取組を着実に推進する必要があるとしている。
前記の「地震に強い空港のあり方」、「平成18年度地震に強い空港のあり方」及び上記の答申(以下、これらを合わせて「委員会報告等」という。)において、国管理空港及び成田、中部、関西各国際空港は、緊急輸送の拠点となる空港(以下「輸送拠点空港」という。)とされ、さらに、国管理空港のうちの10空港(注3)
と、成田、中部、関西各国際空港は、輸送拠点空港の中でも、特に、航空ネットワークの維持及び背後圏経済活動の継続性確保において重要と考えられる空港であることから航空輸送上重要な空港(以下「重要空港」という。)とされている。そして、重要空港は、輸送拠点空港としての役割である〔1〕 救急・救命活動等の拠点機能(発災後極めて早期の段階)を確保すること、〔2〕 緊急物資・人員等輸送受入れ機能(発災後3日以内)を確保することに加えて、重要空港として、〔3〕 発災後3日を目途に定期民間航空機の運航が可能となること、〔4〕 地震災害による経済被害の半減を目指し、再開後の運航規模は、極力早期の段階で通常時の50%に相当する輸送能力を確保すること、〔5〕 航空ネットワークの維持及び背後圏経済活動の継続性の確保と首都機能の維持をすることが求められている。
そして、〔5〕 航空ネットワークの維持及び背後圏経済活動の継続性の確保と首都機能の維持をするためには、特に、重要空港のうち我が国における航空ネットワークの中心に位置付けられる東京、成田両国際空港の機能を確保することが極めて重要とされている。
委員会報告等によると、重要空港は、求められる機能を確保するために、次のような対策を講ずることとされている。
ア ハード面の対策
緊急物資・人員等を輸送する自衛隊輸送機等が離着陸可能となる2,000mの滑走路の利用を確保するとともに、定期民間航空機の運航規模が通常時の50%の輸送量を確保するために必要な空港施設について、滑走路等の液状化対策、空港事務所庁舎等の耐震改修等を行い耐震性の向上を図ること
イ ソフト面の対策
減災に向け必要な対策及び地震災害後の対応に向け必要な対策を講ずる必要があるとし、地震災害後の対応として、初動対応、緊急時運航対応、復旧対応等の基本的な対応事項をあらかじめ空港の運用シナリオとして明確にし、基本的な対応事項を空港が主体となって行う対策と地域等と連携して行う対策に整理することなどを行うこと
貴省は、委員会報告等を踏まえて、貴省が管理等を実施している重要空港の空港施設について、早期に対策を講ずることとしている。
貴省は、これまで多額の国費を投じて空港施設等の耐震性の向上を図ってきている。
そこで、本院は、効率性、有効性等の観点から、委員会報告等に基づき、空港施設は計画的に耐震化が図られ、ソフト面においても十分な対策が講じられているか、また、航空路施設及び航空路管制施設は計画的に耐震化が図られ、大規模地震発生時も航空ネットワークとしての一体的な運用が可能となっているかなどに着眼して検査した。
そして、表1
のとおり、重要空港の土木施設413施設、建築施設198施設、また、ソフト面の対策については貴省が管理等を実施している重要空港10空港を対象とするとともに、航空路施設の159施設、航空路管制施設の142施設、計912施設を検査の対象とした。そして、貴省、6地方航空局等、15空港事務所等、4航空交通管制部(注4)
及び3会社において、耐震診断の報告書等の関係書類及び現地の状況を確認するなどの方法により会計実地検査を行うとともに、5地方整備局等及び9空港事務所等(注5)
から関係書類の提出を受けるなどの方法により検査した。
表1 検査の対象
(単位:千円)
管理等主体 | 空港施設 | 航空路施設 | 航空路管制施設 | 合計 | ||||||
土木施設 | 建築施設 | 建築施設 | 建築施設 | |||||||
施設数 | 国有財産台帳価格又は固定資産台帳価格 | 施設数 | 国有財産台帳価格又は固定資産台帳価格 | 施設数 | 国有財産台帳価格 | 施設数 | 国有財産台帳価格 | 施設数 | 国有財産台帳価格又は固定資産台帳価格 | |
国土交通省 | 391 | 39,767,750 | 177 | 23,622,209 | 159 | 1,809,716 | 142 | 8,404,242 | 869 | 73,603,919 |
3会社 | 22 | 78,182,641 | 21 | 14,685,659 | — | — | — | — | 43 | 92,868,300 |
合計 | 413 | 117,950,392 | 198 | 38,307,868 | 159 | 1,809,716 | 142 | 8,404,242 | 912 | 166,472,220 |
注(1) | 平成23年度末現在の状況である。 |
注(2) | 国有財産台帳価格又は固定資産台帳価格は、端数処理のため各項目の数値を合計しても一致しない。 |
(注4) | 6地方航空局等、15空港事務所等、4航空交通管制部 東京、大阪両航空局、関東、近畿、九州各地方整備局、沖縄総合事務局、東京、新千歳、仙台、成田、中部、大阪、関西、福岡、那覇各空港事務所、福江空港・航空路監視レーダー事務所、東京空港整備事務所、大阪、博多、那覇各港湾・空港整備事務所、札幌開発建設部、札幌、東京、福岡、那覇各航空交通管制部
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(注5) | 5地方整備局等及び9空港事務所等 東北、北陸、中国、四国各地方整備局、北海道開発局、新潟、広島、高松、鹿児島各空港事務所、塩釜、新潟、広島、高松、鹿児島各港湾・空港整備事務所
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空港施設等の耐震化の状況等について検査したところ、23年度末現在において次のような事態が見受けられた。
ア 土木施設の耐震化の状況
貴省及び地方整備局等は、貴省が管理等を実施している6空港の滑走路8施設、4空港の誘導路10施設、2空港のエプロン2施設、計20施設について、16年度以降液状化調査等を実施して耐震のための対策が必要と判定していたのに、その対策を完了させていなかった。このため、これらの土木施設は、大規模地震発生時に機能が確保できないおそれがあると認められる。また、貴省及び地方整備局等は、貴省が管理等を実施している1空港の誘導路6施設、エプロン2施設、計8施設について、液状化調査等を完了させていなかった。このため、これらの土木施設は、耐震性が確保されているか確認できず、大規模地震発生時にその機能を十分に発揮できないおそれがあると認められる(上記20施設、8施設、計28施設の23年度末現在の国有財産台帳価格計175億9537万余円)。
上記の事態について事例を示すと次のとおりである。
貴省は、平成22年10月に供用を開始した東京国際空港のD滑走路(液状化対策等については実施済み。)に関連し、D滑走路とエプロンを結ぶ誘導路について16、18、19各年度に液状化調査等を実施し、耐震のための対策が必要と判定していた。
しかし、貴省は、調査実施から4年が経過した24年3月末時点でも、誘導路の一部の液状化対策等を実施していなかった。このため、大規模地震発生時には、D滑走路とエプロンの間を航空機が移動できなくなり、液状化対策等を実施したD滑走路も使用することが困難となることから、東京国際空港はその機能を十分発揮できず航空ネットワークの維持等に支障を来すおそれがあると認められる。
イ 建築施設の耐震化の状況
地方航空局は、貴省が管理等を実施している2空港の空港事務所庁舎・管制塔2施設(23年度末現在の国有財産台帳価格計23億6736万余円)について、20年度に耐震診断を実施して耐震のための改修が必要と判定していたのに、耐震改修を実施していなかった。このため、これらの建築施設は、大規模地震発生時に機能が確保できないおそれがあると認められる。また、地方航空局は、貴省が管理等を実施している1空港の空港事務所庁舎・管制塔1施設、5空港の消防庁舎等14施設、4空港の電源局舎等5施設、計20施設(23年度末現在の国有財産台帳価格計14億2814万余円)について、耐震診断を実施していなかった。このため、これらの建築施設は、耐震性が確保されているか確認できず、大規模地震発生時にその機能を十分に発揮できないおそれがあると認められる。
なお、上記の耐震改修を実施していなかった2空港の空港事務所庁舎・管制塔2施設については、23年度補正予算で耐震改修のための設計を行っている。
上記の事態について事例を示すと次のとおりである。
東京航空局は、委員会報告等に基づき救急・救命活動等の際に使用するため耐震化が必要とされている東京国際空港内に建設されている消防庁舎1施設(平成4年建築)について、耐震診断を実施しておらず、消防庁舎の耐震性が十分確保されているか確認できない状況となっていた。このため、大規模地震発生時に、消防車両が使用できなくなり、東京国際空港はその機能を十分発揮できず航空ネットワークの維持等に支障を来すおそれがあると認められる。
ウ ソフト面における対策の実施状況
前記のとおり、委員会報告等において、重要空港は、地震災害時に、輸送拠点空港としての役割と航空ネットワークの維持及び背後圏経済活動の継続性を確保する役割を確実に果たすためには、空港の施設自体が耐震性を有するだけでなくソフト面においても十分な対策を講ずる必要があるとされている。また、委員会報告等において、地震災害時に重要空港で必要となるソフト面における対策は、表2
のとおり、減災に向け必要な対策としては3項目、地震災害後の対応に向け必要な対策としては10項目、計13項目が挙げられている。このため、貴省は、委員会報告等を踏まえて、これらの各項目について空港の管理を行う空港事務所等が、空港ごとに対策を講ずることとしている。
しかし、貴省が管理等を実施している重要空港10空港における上記13項目の対策の実施状況をみたところ、表2
のとおり、ほとんどの対策が済んでおらず、委員会報告等が取りまとめられてから約5年が経過しているのに、13項目全てについて対策が済んでいる空港は見受けられなかった。
地震災害時に重要空港で必要となる対応 | 対策が済んでいる空港 | 対策に着手しているものの、済んでいない空港 | 対策に着手していない空港 | |
減災に向け必要な対策 | 〔1〕 多機能型地震計等による緊急地震速報の活用
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東京国際、新千歳、仙台、新潟、大阪国際、広島、高松、福岡、鹿児島、那覇 | — | — |
〔2〕 想定した地震災害時対応の確実な遂行と災害対応機器への習熟等を目的とする定期的な訓練の実施
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東京国際 | 新千歳、仙台、新潟、大阪国際、広島、高松、福岡、鹿児島、那覇 | — | |
〔3〕 地震災害時における空港の役割等の周知
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— | 東京国際、新千歳、仙台、新潟、大阪国際、広島、高松、福岡、鹿児島、那覇 | — | |
地震災害後の対応に向け必要な対策 | 〔4〕 迅速な地震災害発生状況の確認や空港内外の施設に関する緊急施設点検を行うための手引書等の充実
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東京国際 | 新千歳、仙台、新潟、大阪国際、広島、高松、福岡、鹿児島、那覇 | — |
〔5〕 対応職員の迅速な確保等空港防災体制の充実
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— | 東京国際、新千歳、仙台、新潟、大阪国際、広島、高松、福岡、鹿児島、那覇 | — | |
〔6〕 空港内事業者、関係機関等との緊急連絡体制の充実
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— | 東京国際、新千歳、仙台、新潟、大阪国際、広島、高松、福岡、鹿児島、那覇 | — | |
〔7〕 空港内事業者、関係機関等と連携した情報収集、一般利用者等への情報提供方法の確立
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— | 東京国際、新千歳、仙台、新潟、大阪国際、広島、高松、福岡、鹿児島、那覇 | — | |
〔8〕 空港内事業者、関係機関等と連携した負傷者対応、帰宅困難者、緊急避難者への対応方策及び体制の充実
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— | 東京国際、新千歳、仙台、新潟、大阪国際、広島、高松、福岡、鹿児島、那覇 | — | |
〔9〕 空港への緊急輸送が開始されるまでの食料供給体制や被災各地への物資輸送方法等の確立
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— | 東京国際、新千歳、仙台、新潟、大阪国際、広島、高松、福岡、鹿児島、那覇 | — | |
〔10〕 関係機関と連携した救急救命ヘリや自衛隊輸送機等による緊急輸送活動受入れ対応
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東京国際 | 新千歳、仙台、新潟、大阪国際、広島、高松、福岡、鹿児島、那覇 | — | |
〔11〕 被災地内外空港の連携の強化
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— | 東京国際、仙台、大阪国際、広島、高松、那覇 | 新千歳、新潟、福岡、鹿児島 | |
〔12〕 二次災害の防止や緊急輸送活動に必要な施設の応急復旧及び体制の充実
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— | 東京国際、新千歳、仙台、新潟、大阪国際、広島、高松、福岡、鹿児島、那覇 | — | |
〔13〕 本格復旧体制の充実
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— | 東京国際、仙台、新潟、大阪国際、広島、高松、那覇 | 新千歳、福岡、鹿児島 |
上記の事態について事例を示すと次のとおりである。
「〔3〕 地震災害時における空港の役割等の周知」については、空港と関係機関との間で地震災害時にどのような連携をとるかについての合意形成に関する事項であるが、貴省は、空港事務所等に対して、何についてどの程度まで対策を執る必要があるのかについて具体的に指示していなかった。この結果、10空港は、関係自治体の地域防災計画に当該空港が緊急輸送の拠点施設に位置付けられたことを確認するにとどまり、各空港事務所等と各関係自治体等の関係機関との間で、災害時における関係自治体等との連携や相互の情報提供に関する事項について、その方法を含めた具体的な取決めの締結までには至っていなかった。このため、地震災害時において関係機関と連携を図る基本的な枠組みの合意形成がなされておらず、全ての空港において対策は済んでいなかった。
「〔10〕 関係機関と連携した救急救命ヘリや自衛隊輸送機等による緊急輸送活動受入れ対応」については、関係機関である医療機関や自衛隊等と地震災害時の対応方針等の調整をとらなければならないものである。しかし、東京国際空港を除く9空港は、空港事務所等で検討を行うなどしていたが、関係機関との調整に時間を要していることなどから、地震災害時の対応方針について医療機関、自衛隊等と合意形成に至っていないなど対策は済んでいなかった。
前記ア及びイのとおり、貴省が管理等を実施している重要空港において耐震性の向上策が実施されていない空港施設があり、特に、我が国の航空ネットワークの維持において極めて重要な東京国際空港において耐震性の向上策が完了していない状況となっていた。また、前記ウのとおり、貴省が管理等を実施している重要空港のソフト面における対策の実施状況は十分なものではなく、ソフト面における対策が遅れていると、地震災害時に速やかに必要な対応ができないことから、重要空港が輸送拠点空港としての役割と航空ネットワークの維持及び背後圏経済活動の継続性を確保する役割を確実に果たすことができないおそれがあると認められる。
ア 航空路施設が設置されている建築施設の耐震化の状況
空港が有効に機能するためには、空港施設が有効に機能するだけではなく、空港を発着する航空機が飛行する航空路が航空ネットワークとして安全かつ有効に機能することが必要となる。しかし、委員会報告等において、航空路施設に関する耐震性の向上策の方針は明確に記されていない。
そこで、航空機の計器に航空路を示すために必要な地上の航空路施設が設置されている建築施設159施設が大規模地震発生時において有効に機能し得るかについてみたところ、地方航空局は、重要空港の航空路等に関連する航空路施設局舎等8施設(23年度末現在の国有財産台帳価格計1億0164万余円)について、20年度に耐震診断を実施して耐震のための改修が必要と判定していたのに、耐震改修を実施していなかった。また、地方航空局は、重要空港の航空路等に関連する航空路施設局舎等10施設(23年度末現在の国有財産台帳価格計1億8249万余円)について、十分な確認を行わず既に耐震性が確保されているものと判断していたことなどから、耐震診断を実施しておらず、耐震性が確保されているか確認できない状況となっていた。
上記の事態について事例を示すと次のとおりである。
東京航空局は、東京国際空港への航空機の到着経路上必要な御宿の航空路施設局舎(昭和46年建築)については、遠隔監視による施設の無人化に伴い平成21年度に組織上廃止されることから、航空路施設自体も廃止されると判断し、また、東京国際空港からの航空機の出発経路上必要な木更津の航空路施設局舎(9年建築)については、十分な確認を行わず既に耐震性が確保されているものと判断し、それぞれ耐震診断を実施していなかった。このため、両局舎の耐震性が確保されているか確認できない状況となっており、大規模地震発生時に局舎内の航空路施設に障害が発生すると、東京国際空港は、当該施設を利用した一部の航空機の離発着等が行えなくなることから、その機能が十分発揮できないおそれがあると認められた。
イ 航空路管制施設が設置されている建築施設の耐震化の状況
貴省は、我が国の空域を航空機が安全に飛行できるよう航空機の運航を管理するなどの航空路管制業務を実施しており、全国に配置されている航空交通管制部施設、航空路監視レーダー施設等の各航空路管制施設が有効に機能することによって、重要空港を含む航空ネットワークの形成及び維持が可能となっている。
しかし、航空路管制施設が設置されている建築施設142施設の耐震化の状況についてみたところ、貴省及び地方航空局は、航空交通管制部施設庁舎3施設、航空路監視レーダー施設局舎1施設、計4施設(23年度末現在の国有財産台帳価格計8億3113万余円)について、20、21両年度に耐震診断を実施して耐震のための改修が必要と判定していたのに、耐震改修を実施していなかった。また、地方航空局は、航空路監視レーダー施設局舎等15施設(23年度末現在の国有財産台帳価格計3億1718万余円)について、十分な確認を行わず既に耐震性が確保されているものと判断していたことなどから、耐震診断を実施しておらず、耐震性が確保されているか確認できない状況となっていた。
なお、上記のうち東京航空交通管制部施設庁舎(業務棟)の1施設については、23年度補正予算で耐震改修のための設計を行っている。
以上のように、貴省等が、自ら管理等を実施している重要空港の空港施設において、液状化調査等又は耐震診断を実施して、耐震のための対策又は改修が必要と判定していたのに、それらを実施していなかったり、液状化調査等又は耐震診断を実施していなかったり、ソフト面の対策を十分に行っていなかったりしている事態、また、重要空港の航空路等に関連する航空路施設及び航空路管制施設が設置されている建築施設において、耐震診断を実施して、耐震のための改修が必要と判定していたのに、それを実施していなかったり、耐震診断を実施していなかったりしている事態は、大規模地震発生時等に重要空港に求められる機能が十分に発揮できないおそれがあることから適切とは認められず、改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、次のことなどによると認められる。
ア 貴省が管理等を実施している重要空港の空港施設における耐震性の確保を早期に講ずることについての意識が十分でないこと、また、ソフト面の対策について、委員会報告等で求められている空港におけるソフト面の対策を早期に講ずることについての意識が十分でないこと
イ 重要空港の航空路等に関連する航空路施設及び航空路管制施設が設置されている建築施設の耐震性の確保についての重要性の認識が十分でないこと
重要空港、航空路施設及び航空路管制施設が大規模地震発生時に求められる機能を確保できない場合には、重要空港が輸送拠点空港としての機能を果たせなかったり、我が国の航空ネットワークが安全かつ有効に機能しなくなったりすることになる。
ついては、貴省において、次のような処置を講ずるなどして、重要空港が大規模地震発生時に求められる役割を十分に果たすことができるよう、意見を表示する。
ア 貴省が管理等を実施している重要空港の空港施設については、大規模地震発生時に委員会報告等で求められている機能が発揮できるよう耐震性を早期に確保する方策を講ずること、また、ソフト面の対策については、各空港事務所が地震災害時に速やかに必要な対応ができるよう方策を講ずること
イ 航空路施設及び航空路管制施設については、重要空港を利用するための航空ネットワークの形成に不可欠なものであることから、その重要性を踏まえて、航空路施設及び航空路管制施設が設置されている建築施設が耐震性を確保できるよう方策を講ずること