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下水道事業における終末処理場の水処理施設の整備等について、これまでの実績等を施設計画等に適切に反映させるなどして、今後の整備が適時適切に行われるよう改善の処置を要求したもの


(11) 下水道事業における終末処理場の水処理施設の整備等について、これまでの実績等を施設計画等に適切に反映させるなどして、今後の整備が適時適切に行われるよう改善の処置を要求したもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)国土交通本省 (項)下水道事業費 等
部局等 18都道府県
補助の根拠 下水道法(昭和33年法律第79号)
事業主体 79事業主体
下水道事業の概要 都市の健全な発達及び公衆衛生の向上に寄与し、併せて公共用水域の水質の保全に資することを目的として、管渠(きょ)の敷設、下水を処理すための終末処理場の整備等を行う事業
平成22年度末において未稼働等施設を有する終末処理場の数 89終末処理場
未稼働等施設に係る事業費 457億1831万円(平成10年度〜22年度)
上記に対する国庫補助金交付額 257億2807万円

【改善の処置を要求したものの全文】

 下水道事業における終末処理場の水処理施設の整備等について

(平成24年10月15日付け 国土交通大臣宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。


1 下水道事業における終末処理場の水処理施設の整備等の概要

(1) 下水道事業の概要

 都道府県、市町村等(以下「事業主体」という。)は、下水道法(昭和33年法律第79号。以下「法」という。)等に基づき、下水道の整備を図り、もって都市の健全な発達及び公衆衛生の向上に寄与し、併せて公共用水域の水質の保全に資することを目的として下水道事業を実施しており、貴省は、この下水道事業に多額の国庫補助金を交付している。
 下水道事業は、生活、事業等に起因する汚水等の下水を流下させる管渠(きょ)の敷設、下水を最終的に処理して公共用水域に放流するための終末処理場の整備等を行うもので、このうち、終末処理場には、微生物反応等を利用するなどして下水を処理するための最初沈殿池、反応タンク、最終沈殿池(以下、これらを「水処理施設」という。)等が整備されている。
 そして、管渠の敷設等が完了して、下水道の供用が開始された区域(以下「供用開始区域」という。)内の土地の所有者、使用者等(以下、これらの者を「下水道接続対象者」という。)は、法により、下水を下水道に流入させるために必要な排水管等の排水設備を遅滞なく設置しなければならないとされている。

(2) 下水道事業の計画

 事業主体は、法により、下水道の事業計画に、終末処理場の配置、構造、能力等を定めることとされている。そして、「下水道施設計画・設計指針と解説」(社団法人日本下水道協会編。以下「設計指針」という。)に準拠して、事業計画の計画目標年次及びそれまでの各年次における供用開始区域内の年間最大汚水量発生日の発生汚水量(以下「計画1日最大汚水量」という。)を算定し、これを基に必要となる能力、整備時期等を含む水処理施設の新設、増設等に係る計画(以下「施設計画」という。)を策定している。

(3) 計画1日最大汚水量の算定

 計画1日最大汚水量の算定方法には、下水道接続対象者が毎年度どの程度の割合で下水道に接続するかを予測(以下、この予測割合を「予測接続率」という。)したり、供用開始区域内にどの程度定住人口が見込めるか算出したり、1人1日当たり最大汚水量等を算出したりして、これらを基に処理すべき生活汚水量、工場排水量等の各汚水量等を算出し、これらを合算して算定する方法と、過去の年間最大汚水量発生日の水処理施設への流入汚水量(以下「日最大流入汚水量」という。)の実績を用いて統計処理した増加見込みにより算定する方法がある。
 そして、前者の算定方法を採っている事業主体においては、計画1日最大汚水量と日最大流入汚水量の実績との整合性の確認を行うことで、計画1日最大汚水量に対して日最大流入汚水量の実績が少ないなどの場合に、増設の能力、整備時期等について当初の予定を見直すなどの判断が行われることになる。また、後者の算定方法を採っている事業主体においては、日最大流入汚水量の実績が直接的に計画1日最大汚水量の算定に反映されることになる。このため、いずれの算定方法においても、日最大流入汚水量の実績を適切に把握することが不可欠となっている。
 また、計画1日最大汚水量の算定に当たっては、設計指針によれば、雨天時に、地上にあるマンホールの蓋穴、地下にある管渠の継手、破損部分等から一時的に浸入水があるものの、あらかじめ、生活汚水量等に一定率を乗じて得られる水量を地下水量として見込むこととしていることなどから、雨天時の浸入水による影響は考慮しないこととされている。

(4) 水処理施設の段階的な施工

 水処理施設の整備については、設計指針によれば、過大な先行投資を抑制し、投資効果を早期に発現でき、供用開始後も水処理施設の能力と流入汚水量との均衡を図るよう流入汚水量の伸びに応じた段階的な施工に特別の配慮を払うこととされている。特に、水処理施設に設置される汚泥排除等のための機械設備及び電力供給等のための電気設備(以下、両者を合わせて「機械・電気設備」という。)は、耐用年数がコンクリート造りのく体と比較して半分以下と短いことなどから、必要となる能力、整備時期等を適切に決定した上で整備することが重要であるとされている。

2 本院の検査結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 下水道事業は、その整備に多額の費用を要し、また、完了までに相当の長期間を要することから、その間に社会情勢の変化等も想定される。
 そこで、本院は、効率性、有効性等の観点から、補助事業により整備された水処理施設について、稼働状況は適切か、施設計画は妥当なものとなっているか、整備は適時適切に行われているかなどに着眼して、18都道府県(注) 管内の361事業主体において、平成10年度から22年度末までに整備された662終末処理場の水処理施設(事業費計2兆7581億9645万余円、国庫補助金計1兆4385億1579万余円)を対象として、事業計画書、施設計画書、維持管理日報等の関係書類及び現地を確認するなどして、会計実地検査を行った。

 18都道府県  東京都、北海道、京都、大阪両府、栃木、神奈川、石川、福井、長野、愛知、三重、島根、岡山、高知、福岡、佐賀、宮崎、沖縄各県

 (検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 水処理施設の稼働状況等

 361事業主体の662終末処理場のうち、22年度末現在、整備後1年以上経過しても稼働した実績がなかったり、稼働した実績はあるものの日最大流入汚水量が水処理施設を増設する前の能力の範囲内にとどまるなどしていて、増設するなどしたく体や機械・電気設備が余剰となっていたりしている水処理施設(事業費計457億1831万余円、国庫補助金計257億2807万余円。以下、これらを「未稼働等施設」という。)が、79事業主体の89終末処理場において見受けられた(表1 参照。終末処理場によっては複数の未稼働等施設が生じているものがある。)。

表1  未稼働等施設の態様別内訳(平成22年度末現在)
態様
施設種別
稼働した実績がないもの 余剰となっているもの
事業主体数 終末処理場数 事業費
(国庫補助金)
事業主体数 終末処理場数

事業費
(国庫補助金)

事業主体数

終末処理場数 事業費
(国庫補助金)
      百万円     百万円     百万円
く体
51
55
22,441
(12,452)
36
41
10,131
(5,714)
78
88
32,573
(18,167)
機械・電気設備
10
10
1,666
(939)
36
41
11,477
(6,620)
42
47
13,144
(7,560)
52

56

24,108
(13,392)
36
41
21,609
(12,335)
79
89
45,718
(25,728)
注(1)  事業主体数及び終末処理場数には重複があるため、集計しても計の欄と一致しない。
注(2)  金額は、百万円未満を切り捨てているため、集計しても計の欄と一致しない。

(2) 未稼働等施設が生じていた要因

 上記(1)の未稼働等施設をその要因別に分類すると、次のとおりとなる(表2 参照。未稼働等施設によっては複数の要因に該当しているものがある。)。

表2  未稼働等施設が生じていた要因
態様
要因
稼働した実績がないもの 余剰となっているもの
事業主体数 終末処理場数 事業主体数 終末処理場数 事業主体数 終末処理場数
ア 計画1日最大汚水量の算定等が適切でないもの 38 41 31 33 62

68

イ 段階的な施工についての検討が十分でないもの 9 9 1 1 10 10

ウ 稼働状況等の実態を踏まえないまま最初沈殿池の増設を行っているもの

5 5 9 14 10 15

エ 日最大流入汚水量の実績の把握方法が適切でないもの

25

26

21

23

42 45
52 56

36

41 79 89
(注)
 事業主体数及び終末処理場数には重複があるため、集計しても計の欄と一致しない。

ア 計画1日最大汚水量の算定等が適切でないもの

 56事業主体の59終末処理場における予測接続率の設定及び定住人口の算出についてみたところ、これらの事業主体は、下水道接続対象者に対する早期接続の促進及び普及啓発に努めるとともに、排水設備の改造工事に要する費用に対する一部助成等を行うなどの取組を行っていることのみをもって、下水道接続対象者のうち住宅の居住者(以下「各家庭」という。)が供用開始年度から11年以内に100%接続すると見込んだり、下水道接続対象者のうち1か所当たりの排出汚水量が多い工場、事業所等(以下、これらを「工場等」という。)が一定の期間内に100%接続すると見込んだりして予測接続率を設定したり、定住人口を計画目標年次の人口密度により算出したりしていた(表3 参照)。

表3  予測接続率の設定及び定住人口の算出状況
予測接続率の設定 定住人口の算出 合計
各家庭 工場等

供用開始年度から1年以内に100%接続するとしているもの

供用開始年度から3年以内に100%接続するとしているもの

供用開始年度から5年以内に100%接続するとしているもの

供用開始年度から11年以内に100%接続するとしているもの

接続意向調査を行わないまま、供用開始年度等から1年以内に100%接続するとしているもの 接続意向調査を行わないまま、計画目標年次まで一定の割合で増加させて100%接続するとしているもの

事業計画の計画目標年次における人口等を基にした人口密度を乗じて算出しているもの

事業主体数 3 8 19 13 42 10 16 26 32 32 56
終末処理場数 3 8 19 15 45 10 17 27 32 32 59
(注)
 事業主体数及び終末処理場数には重複があるため、集計しても計の欄及び合計の欄と一致しない。

 しかし、42事業主体の45終末処理場において、これらの事業主体は、各家庭が供用開始年度から11年以内に100%接続すると見込んでいたものの、22年度末現在における各家庭の接続状況はいずれも見込みを下回っており、これらの事業主体における予測接続率を達成するための取組が十分でない状況となっている(表4 参照)。

表4  供用開始区域内の各家庭の接続状況(平成22年度末現在)

供用開始区域内の各家庭の接続状況
(接続人口/供用開始区域内の定住人口)

〜29.9%

30.0%
〜49.9%

50.0%
〜59.9%
60.0%
〜69.9%
70.0%
〜79.9%

80.0%
〜89.9%

90.0%
〜99.9%
100.0%
供用開始後
10年未満
事業主体数
0
1
5
1
4
1
0
0
11

終末処理場数

0
1
5
1
5
1
0
0
13
供用開始後
10年以上20年未満
事業主体数
0
0
0
5
9
6
2
0
22
終末処理場数
0
0
0
5
9
6
2
0
22
供用開始後
20年以上
事業主体数
0
0
0
0
0
1
9
0
10
終末処理場数
0
0
0
0
0
1
9
0
10
事業主体数
0
1
5
6
13
8
11
0
42
終末処理場数
0
1
5
6
14
8
11
0
45
(注)
 事業主体数には重複があるため、集計しても計の欄と一致しない。

 また、26事業主体の27終末処理場において、これらの事業主体は、工場等に対して、個別に接続予定時期を確認するなどの意向調査(以下「接続意向調査」という。)を行い、これを踏まえて予測接続率を設定することが可能であったのに、接続意向調査を行わず、事業主体の判断のみで、工場等が一定の期間内に100%接続するものとしていた。
 さらに、32事業主体の32終末処理場において、これらの事業主体は、自らが策定する全ての計画の基本となる総合計画等に定めた将来人口を事業計画における計画目標年次の人口とし、その人口を基に人口密度を設定するなどした上で定住人口を算出していたが、この将来人口には、区画整理事業、団地造成等の開発行為等が行われることを前提とした人口増加が含まれているのに、そのことを考慮しないまま、定住人口を過大に算出していた。

<事例1>

 北海道富良野市は、平成2年度に、富良野水処理センターの供用を開始し、7年度に策定した施設計画において、計画1日最大汚水量が、11年度には既設4池の能力(6,200m3 /日)を上回ると予測したことから、8年度から10年度までの間に、5池目のく体及び機械・電気設備を増設(事業費5億2369万余円、国庫補助金2億8661万余円)して、22年度末現在では反応タンク及び最終沈殿池各5池(能力7,750m3 /日)で供用している。
 そして、同市は、施設計画において、各家庭の予測接続率については、早期接続の促進、普及啓発、排水設備の改造工事費に対する一部助成等の取組を行っていることのみをもって供用開始年度から3年以内に、工場等の予測接続率については、計画初年度である7年度に、それぞれ100%接続するとしていた。また、定住人口については、昭和56年度策定の「富良野市まちづくり計画」(計画期間昭和56年度〜平成12年度)に整合させるなどして、事業計画の計画目標年次である15年度の人口密度を40.3人/haとし、これに15年度に予定している供用開始区域の面積493.5haを乗ずるなどして、19,900人と算出していた。
 しかし、各家庭の接続状況は、施設計画策定前の6年度の時点で、供用開始区域内人口10,248人のうち7,747人(接続率75.5%)にとどまっており、実態を踏まえると予測接続率を達成するには上記の取組では十分でなかった。また、工場等に対する接続意向調査を行っていなかった。さらに、定住人口については、施設計画を策定した7年度当時の上記493.5haの面積内における人口密度は34.7人/haであったのに、事業計画の計画目標年次である15年度における将来人口を基に人口密度を設定していたため、過大に算出されていた。
 これらのことから、同市が算定した計画1日最大汚水量により、5池目が必要になると見込んだ11年度から12年経過した22年度末現在においても、日最大流入汚水量の実績は6,048m3 /日と、4池目までの能力(6,200m3 /日)の範囲内にとどまっていて、5池目が余剰となっている。

 また、設計指針によれば、1人1日当たり最大汚水量は、上水道のない地域又は自家水源と上水道を併用している地域等を除き、各地域における上水道の使用実績により推定することとされている。そして、そのような推定ができない場合に対しては、簡易的な算出方法が示されている。
 20事業主体の23終末処理場において、これらの事業主体は、施設計画策定時点における直近の上水道の使用実績を用いて実態に適合した1人1日当たり最大汚水量を推定することが可能であったのに、上水道の使用実績による推定ができない場合に用いる簡易的な算出方法によるなどしたことから、1人1日当たり最大汚水量を過大に算出していた。
 このように、各家庭の予測接続率の達成に向けた取組が十分でないのに100%接続すると見込んだり、工場等に対する接続意向調査を行っていなかったり、定住人口を過大に算出したり、1人1日当たり最大汚水量の算出に直近の上水道の使用実績を用いていなかったりしていて、計画1日最大汚水量が適切に算定されていないことから、62事業主体の68終末処理場において未稼働等施設が生じていると認められる。

イ 段階的な施工についての検討が十分でないもの

 10事業主体の10終末処理場において、これらの事業主体は、く体を段階的に施工するよりも一体的に複数をまとめて施工する方が工事費が経済的になるなどとして、直ちに必要となるく体と、将来必要となるく体とを一体的に整備していた。
 しかし、将来必要となるとして一体的に整備したく体については、施設計画上、供用することになる時期が当該く体の完成後6年から10年以上も先になっており、く体の耐用年数が50年と長いことを考慮しても、これらの事業主体において、過大な先行投資を抑制することについての検討が十分でないと認められる。
 このように、段階的な施工についての検討が十分でないことから、未稼働等施設が生じていると認められる。

<事例2>

 岡山県倉敷市は、昭和57年度に、玉島下水処理場の供用を開始し、平成14年度に策定した施設計画において、計画1日最大汚水量が、21年度には既設3池の能力(17,000m3 /日)を上回ると予測したことなどから、15年度から17年度までの間に、4池目のく体及び機械・電気設備を増設して、22年度末現在では最初沈殿池2池、反応タンク及び最終沈殿池各4池(能力20,600m3 /日)で供用している。
 そして、同市は、く体を段階的に施工するよりも、直ちに必要となる4池目のく体と一体的に複数をまとめて施工する方が工事費が経済的になるなどとして、将来必要となる5池目及び6池目の反応タンク及び最終沈殿池のく体とを一体的に整備していた(5池目及び6池目のく体の整備に係る事業費5億6378万余円、国庫補助金3億1008万余円)。
 しかし、上記の施設計画では、計画1日最大汚水量が4池目の能力を上回って5池目が必要になると見込んでいた時期は26年度、さらに、6池目が必要になると見込んでいた時期は30年度となっており、く体が完成してから9年後及び13年後まで供用の見込みがないのに、これらを一体的に整備しており、過大な先行投資を抑制することについての検討が十分でなかったことから、未稼働等施設が生じている。

ウ 稼働状況等の実態を踏まえないまま最初沈殿池の増設を行っているもの

 10事業主体の15終末処理場において、これらの事業主体は、整備した全ての最初沈殿池を稼働させると、次の下水処理過程である反応タンクにおける微生物反応を利用した下水の処理に支障を生ずることなどから、22年度末現在、増設した最初沈殿池の一部を稼働させずに下水を処理していた。
 しかし、これらの事業主体は、最初沈殿池の増設前においても、既設の最初沈殿池の一部を稼働させずに下水を処理していたのに、そのような最初沈殿池の稼働状況等を踏まえることなく、増設が必要となる反応タンク及び最終沈殿池と一連で最初沈殿池も整備するものとして増設していた。
 このように、稼働状況等の実態を十分に踏まえることなく反応タンク及び最終沈殿池と一連で最初沈殿池の増設を行っていることから、未稼働等施設が生じていると認められる。

<事例3>

 三重県は、平成10年度に、松阪浄化センターの供用を開始し、反応タンク1池に対して最初沈殿池は2池に分割して整備するなどして、22年度末現在では最初沈殿池10池、反応タンク及び最終沈殿池各5池(能力38,950m3 /日)で供用している。
 同県は、15年度以降、最初沈殿池の一部を稼働させずに下水を処理していたのに、そのような稼働状況等を踏まえることなく、20年度に、計画1日最大汚水量に基づき増設する反応タンク及び最終沈殿池と一連で必ず整備するものとして、9池目及び10池目の最初沈殿池の機械・電気設備を増設(事業費2億0600万円、国庫補助金1億3700万円)していた。
 その結果、整備した全ての最初沈殿池を稼働させると、反応タンクにおける微生物反応を利用した下水の処理に支障を生ずることなどから、22年度末現在、最初沈殿池10池のうち7池を稼働させずに下水を処理しており、最初沈殿池が余剰となっている。

エ 日最大流入汚水量の実績の把握方法が適切でないもの

 計画1日最大汚水量の算定に当たっては、前記のとおり、雨天時の浸入水による影響は考慮しないこととされていることから、日最大流入汚水量の実績についても雨天時の浸入水量を除外しなければ、計画1日最大汚水量との整合性の確認が適切に行われないことになる。
 そこで、42事業主体の45終末処理場における日最大流入汚水量の実績の把握方法についてみたところ、20事業主体の22終末処理場において、これらの事業主体は、当日が台風等による豪雨を記録した雨天日であっても、その日がその年の最大流入量計測日であれば、その流入量を日最大流入汚水量の実績としていた。また、残りの22事業主体の23終末処理場において、これらの事業主体は、雨天日を除外した晴天日のうちの最大流入量計測日の流入量を、その年の日最大流入汚水量の実績としていたものの、当該最大流入量計測日は台風通過直後の晴天日等であり、その流入量には雨水による浸入水量を含んだものとなっていた。
 このように、日最大流入汚水量の実績の把握方法が適切でなく、計画1日最大汚水量との整合性の確認が適切に行われていないことから、未稼働等施設が生じていると認められる。

 (改善を必要とする事態)

 前記のように、水処理施設の整備に当たり、計画1日最大汚水量の算定が適切でなかったり、段階的な施工についての検討が十分でなかったり、稼働状況等の実態を踏まえないまま最初沈殿池の増設を行っていたり、日最大流入汚水量の実績の把握方法が適切でなかったりなどして未稼働等施設が生じている事態は適切とは認められず、改善の要があると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、事業主体において、施設計画の策定に当たり、適切な計画1日最大汚水量を算定すること、段階的な施工についての検討を十分行うこと、稼働状況等の実態を踏まえること、適切な日最大流入汚水量の実績を把握することなどにより、水処理施設の整備を適切に実施することについての認識等が十分でないこと、また、貴省において、事業主体に対し、上記についての周知等が十分でないことなどによると認められる。

3 本院が要求する改善の処置

 以上のように、下水道事業において、多数の未稼働等施設が生じていて、投資効果が発現していない事態は、限られた予算の効果的、効率的な執行の面から適切とは認められず、施設計画等にこれまでの実績等を適切に反映させるなどして、今後の整備が適時適切に行われる必要がある。
 ついては、貴省において、事業主体に対して、施設計画の策定又は見直しに当たり、適切な計画1日最大汚水量を算定すること、段階的な施工についての検討を十分行うこと、稼働状況等の実態を踏まえること、適切な日最大流入汚水量の実績を把握することなどにより、今後の水処理施設の整備を適切に実施することなどの周知徹底を図るよう改善の処置を要求する。