会計名及び科目 | 一般会計 (組織)国土交通本省 | (項)社会資本総合整備事業費 | ||||||||||
(項)地域活力基盤整備事業費 等 | ||||||||||||
社会資本整備事業特別会計(道路整備勘定) | ||||||||||||
(項)道路交通安全対策事業費 | ||||||||||||
(項)沖縄地域連携道路事業費 等 | ||||||||||||
部局等 |
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事業及び補助の根拠 | 道路法(昭和27年法律第180号)等、予算補助 | |||||||||||
事業主体 |
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移転補償の概要 | 道路整備事業を行う国及び都道府県等が、道路整備事業により支障となる建物等を移転させる際に、所有者に対して物件の移転に伴う損失補償を行うもの | |||||||||||
移転補償費 |
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合併処理浄化槽の材工単価を用いて算定した単独処理浄化槽の移転補償費 |
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低減できた移転補償費 |
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国土交通省は、道路交通の安全確保と円滑化等を図るため、国が行う直轄事業又は都道府県等が行う国庫補助事業として道路整備事業を実施している。
そして、道路整備事業を行う国又は都道府県等(以下「道路事業者」という。)は、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」(昭和37年閣議決定。以下「補償基準」という。)等に基づき、道路用地の取得に支障となる建物等を移転させるなどの際に、その所有者に対して物件の移転に伴う損失補償(以下「移転補償」という。)を行っている。
補償基準等によると、取得に係る土地等に建物等があるときは、当該建物等を通常妥当と認められる移転先に、通常妥当と認められる移転工法によって移転するのに要する費用等を補償することとなっている。
国土交通省の「地方整備局用地調査等業務請負基準準則」(平成13年国総国調第97号総合政策局国土環境・調整課長通知)の「用地調査等共通仕様書」等によると、建物等の移転補償費の算定において、建物とともに移転補償の対象となる電気設備、ガス設備、衛生設備(浴槽、便器、浄化槽等)等の設備で、建物と一体となって建物の効用を全うするために設けられているものは建築設備とされ、その移転補償費は、建物と一体のものとして算定することとなっている。
そして、建物の移転工法には、従前の建物と同種同等の建物を建築する再築工法が多く採用されている。再築工法による移転補償費は、建物(建築設備を含む。以下同じ。)の推定再建築費に、標準耐用年数や経過年数等から定まる再築補償率を乗ずるなどして算定することとなっている。
また、補償基準等によると、道路事業者は、建物等の移転に伴い建築基準法(昭和25年法律第201号)その他の法令の規定に基づく改善を必要とする時期(原則として既設の施設の耐用年数満了時)以前に既設の施設の改善を行うこととなったときは、改善の時期が早まったことによる損失額を移転補償費に含めて補償することとされている。そして、この損失額は、建物等の移転がなければ改善が必要になる時期まで改善に要する費用を金融機関に預け入れるなどして得られるであろう運用益に相当する額(以下「法令改善費に係る運用益損失額」という。)とされている。
浄化槽は、し尿のみを処理する単独処理浄化槽(以下「単独浄化槽」という。)と、し尿処理に加えて台所、風呂等から排出される生活雑排水を処理する合併処理浄化槽(以下「合併浄化槽」という。)の2種類がある。
そして、平成12年に浄化槽法(昭和58年法律第43号)が改正されて、13年4月以降、新たに浄化槽を設置する場合は、原則として合併浄化槽とすることが義務付けられ、単独浄化槽を設置してはならないこととされた。
本院は、経済性等の観点から、原則として新たに設置することができなくなった単独浄化槽の移転補償費の算定が実態に即した適切なものとなっているかなどに着眼して検査した。検査に当たっては、21年度から23年度までの間に、直轄事業として6地方整備局等(注1) 管内の13国道事務所等(注2) が実施した144件(移転補償費計80億6518万余円)及び補助事業として64都県市町村(注3) が実施した547件(移転補償費計244億1248万余円(国庫補助金等計163億7330万余円))、計691件の単独浄化槽を含む移転補償を対象として、これらの移転補償を実施した計77事業主体において、移転補償費の内訳明細書等の書類により会計実地検査を行った。
(注1) | 6地方整備局等 関東、中部、近畿、中国、九州各地方整備局、沖縄総合事務局
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(注2) | 13国道事務所等 常総、宇都宮、静岡、名古屋、名四、三重河川、滋賀、岡山、山口河川、福岡、佐伯河川、延岡河川、南部各国道事務所
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(注3) | 64都県市町村 東京都、群馬、山梨、愛知、三重、兵庫、島根、山口、高知、熊本、大分、宮崎、沖縄各県、前橋、伊勢崎、渋川、藤岡、山梨、南アルプス、甲斐、甲州、中央、豊橋、瀬戸、碧南、安城、蒲郡、稲沢、新城、知立、津、大津、彦根、姫路、出雲、益田、雲南、下関、山口、熊本、菊池、合志、杵築、由布、都城、串間、西都、えびの、那覇、石垣、名護、糸満、沖縄、うるま、宮古島、南城各市、富士川、富士河口湖、日出、高鍋、西原、与那原、南風原各町、読谷村
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検査したところ、次のような事態が見受けられた。
単独浄化槽は、前記のとおり、原則として設置してはならないこととされ、現在、製造・販売されていないため、市場における資材単価が不明であり、道路事業者は、見積りによりその価格を把握することもできない状況となっていた。このため、13国道事務所等及び63県市町村は、直轄事業144件146基及び補助事業530件534基、計674件680基の単独浄化槽の移転補償費の算定に当たり、既設の単独浄化槽を同一の人槽(注4)
の合併浄化槽に相当するものとして、合併浄化槽の資材単価及び設置工事費(以下、これらを合わせて「材工単価」という。)により算出した推定再建築費に再築補償率を乗ずるなどして、移転補償費を直轄事業で計2億7529万余円、補助事業で計6億4759万余円(国庫補助金等相当額計4億3807万余円)と算定していた。
しかし、合併浄化槽は、し尿だけでなく生活雑排水も併せて処理できる高機能なものであり、単独浄化槽と比較すると、河川等に放流される水の汚れを大幅に減らすことができる高性能なものである。そして、両者の5人槽の資材単価を市販の積算参考資料により比較すると、23年の合併浄化槽の資材単価(261,000円〜480,000円)は、11年当時の単独浄化槽の資材単価(90,000円〜110,000円)の約3倍以上となっており、5人槽以外についても同様となっていた。また、この間の物価は、消費者物価指数、国内企業物価指数及び建設工事費デフレーター(注5) の物価指数の値において、いずれも10%程度の増減幅で推移しており、これを考慮に入れても、合併浄化槽の資材単価は、単独浄化槽の資材単価より高額であると認められた。
上記のように、合併浄化槽は、単独浄化槽と比べて、高機能かつ高性能なものであり、その資材単価が高額であることから、既設の単独浄化槽を同一の人槽の合併浄化槽に相当するものとすることは合理的ではなく、建物等の移転に伴い浄化槽法の規定に適合させるために単独浄化槽に代えて合併浄化槽とすることは、前記の法令の規定に基づく改善に当たるものと認められた。
したがって、道路事業者は、単独浄化槽の移転補償費の算定に当たっては、同一の人槽の合併浄化槽の材工単価によることとせず、前記の物価指数を用いるなどして推定した補償時点の単独浄化槽の材工単価(以下「推定材工単価」という。)により算出した推定再建築費に再築補償率を乗じた上で、これに法令改善費に係る運用益損失額を加算した額とすべきであると認められた。
このように、単独浄化槽の移転補償費の算定において、単独浄化槽を高機能かつ高性能でその資材単価が高額である同一の人槽の合併浄化槽に相当するものとして、その移転補償費を割高に算定している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
国土交通省公表の国内の建設工事全般を対象としている建設工事費デフレーターを用いて11年の単独浄化槽の材工単価から算出した推定材工単価に基づくなどして前記の674件の単独浄化槽の移転補償費を算定すると、直轄事業で計2億2656万余円、補助事業で計5億0792万円(国庫補助金等相当額計3億5086万余円)となり、直轄事業で約4870万円、補助事業で約1億3960万円(国庫補助金等相当額約8720万円)それぞれ低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、国土交通省において、単独浄化槽の移転補償費の算定に当たり、推定材工単価を適用することなどについての検討が十分でなかったことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省は、24年3月に地方整備局等に対して通知を発し、単独浄化槽の移転補償費の算定に当たっては、単独浄化槽の推定材工単価により算出した推定再建築費に再築補償率を乗じた上で、これに法令改善費に係る運用益損失額を加算した額とするよう周知徹底するとともに、都道府県等に対して、単独浄化槽の移転補償費の算定に当たって上記の算定方法とするよう情報提供を行う処置を講じた。