国は、平成22年までに、1日当たり利用者数が5,000人以上の駅全てについてエレベーター等による高齢者、障害者等の円滑な通行に適する経路を確保するなどの移動等円滑化を実施する目標を定めており、鉄道事業者等が旅客施設等を新設等するときには、所定の省令(以下「円滑化基準」という。)に適合させなければならないこととしている。また、国土交通省は、旅客施設の標準的な整備内容等をガイドラインにより示している。そして、国土交通省は、駅の移動等円滑化を促進するために鉄道事業者等に対して補助金を交付している。しかし、鉄道事業者等が補助金により移動等円滑化のための設備を整備した駅において、設備が円滑化基準に適合せず又はガイドラインに沿っていないなど整備の効果が十分に発現していないなどの事態が見受けられた。
したがって、国土交通省において、鉄道事業者等に対して、円滑化基準及びガイドラインについて周知徹底を図るとともに、補助金により整備する移動等円滑化設備については原則として円滑化基準に適合させることを明確にしたり、補助金により整備された移動等円滑化設備の整備の効果が十分に発現するよう、当該設備周辺の整備の適切な実施に努めること、当該設備を適切に管理すること、移動等円滑化経路が隣接施設を経由する場合においては当該移動等円滑化経路の適切な確保に努めることなどについて周知したりするよう、国土交通大臣に対して23年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、国土交通本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、国土交通省は、本院指摘の趣旨に沿い、23年12月に各地方運輸局鉄道部を経由して各鉄道事業者等へ通達を発出するなどして次のような処置を講じていた。