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  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
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  • 補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

地域グリーンニューディール基金により実施した事業において、基金事業の対象とならないもの、基金事業対象経費を過大に精算していたものなど


(1) 補助金で造成した基金の使用が適切でなかったもの

8件 不当と認める国庫補助金 40,325,171円

 地域グリーンニューディール基金により実施した事業において、基金事業の対象とならないもの、基金事業対象経費を過大に精算していたものなど

(8件 不当と認める国庫補助金 40,325,171円)

 地域グリーンニューディール基金(以下「基金」という。)は、平成21年度地域環境保全対策費等補助金(地域グリーンニューディール基金)交付要綱(平成21年7月環境事務次官通知)に基づき、都道府県及び政令指定都市(以下「事業主体」という。)が、国から地域環境保全対策費補助金及び二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金の交付を受けて平成21年度に造成したものである。そして、事業主体は、地域グリーンニューディール基金事業実施要領(平成21年7月環境省総合環境政策局長通知。以下「実施要領」という。)等に基づき、21年度から23年度までの間に、基金を財源として、当面の雇用創出と中長期的に持続可能な地域経済社会の構築につなげるために、地域の実情に応じて、地球温暖化問題等の喫緊の環境問題を解決するために必要な事業(以下「基金事業」という。)を実施している。
 事業主体は、自ら基金事業を実施する場合は、原則として事業費相当額を基金から取り崩して使用し、管内の市区町村等が基金事業を実施する場合は原則として事業費相当額を基金から取り崩して補助金(以下「県等補助金」という。)を当該市区町村等に交付することとなっている。
 そして、実施要領によると、基金事業は、太陽光発電設備、LED照明器具、複層窓ガラス等の導入等を実施することとされており、このうちLED照明器具の導入については、電球のみの交換は対象とされていない。また、基金事業の対象となる経費(以下「基金事業対象経費」という。)は、事業を実施するために必要な設計費、本工事費、付帯工事費等とされており、このうち付帯工事費については、本工事費に付随する直接必要な工事に要する必要最小限の範囲の経費とされている。
 本院が事業主体である22都道府県及び9政令指定都市並びに県等補助金の交付を受けた55市区町等において会計実地検査を行ったところ、3県及び1政令指定都市並びに4市区等において、本工事費に付随する直接必要な工事に要する経費とは認められない工事費を基金事業対象経費に含めたり、基金事業対象経費を過大に精算したりなどしていたため、取り崩された基金計40,325,171円(国庫補助金相当額同額)の使用が適切でなく、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、事業主体及び市区等において基金事業対象経費の算定に対する理解が十分でなかったこと、市区等において工事の内容の確認が十分でなかったこと、事業主体において実績報告書の審査及び市区等に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
 これを事業主体別に示すと次のとおりである。

  部局等 補助事業者
(事業主体)
実施年度 基金使用額 左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める基金使用額 不当と認める国庫補助金等相当額
        千円 千円 千円 千円
(290) 環境本省 埼玉県 22、23 18,280 18,280 15,498 15,498

 埼玉県は、民間事業者と、電動アシスト自転車及び駐輪場を共用し、従来の自動車移動から自転車移動に転換するための事業(以下「自転車転換事業」という。)を実施し、これに係る事業費平成22年度8,883,000円、23年度9,397,500円、計18,280,500円(国庫補助金相当額同額)を基金から取り崩して使用していた。同県は、22年度に大宮及び浦和地区において駐輪ラックの整備及び配車管理システム等の構築を、23年度に川口地区において駐輪ラックの整備及び配車管理システム等の構築並びに大宮及び浦和地区において駐輪ラックの増設をそれぞれ行っており、基金事業対象経費に自転車転換事業の事業効果を確認するための効果計測等に係る経費を含めていた。
 しかし、実施要領によれば、効果計測や維持管理に係る経費等は、本件事業の対象にならないものであった。また、同県は、23年度の川口地区における自転車転換事業を24年度以降は実施しないこととし、整備した駐輪ラックを24年4月に取り外して、川口地区における事業を中止していて、本件基金事業の目的を達成していないと認められる。
 したがって、22年度における効果計測等に係る経費6,352,152円及び23年度における川口地区の自転車転換事業に要した経費9,146,802円、計15,498,954円を除いて適正な基金事業対象経費を算定すると2,781,546円となり、前記の事業費計18,280,500円はこれに比べて15,498,954円過大になっており、これに係る国庫補助金相当額15,498,954円が不当と認められる。

(291) 環境本省 さいたま市 22、23 82,082 82,082 7,684 7,684

 さいたま市は、西部文化センター及び大宮南部浄化センターの太陽光発電設備の設置工事等を工事費等計82,082,700円(国庫補助金相当額同額)で実施し、これに付帯工事費として屋上の防水改修1,180m2 の工事費(直接工事費6,303,044円)及び非常用白熱灯の交換工事費(直接工事費259,500円)を含めていた。
 しかし、防水改修工事は、太陽光発電設備の基礎部分以外は、太陽光発電設備の設置に付随する直接必要な工事ではなく、単に建物の維持修繕工事であった。また、非常用白熱灯の交換工事は、消費電力が一基当たり40Wから45Wに増加していて温室効果ガスの排出の抑制効果が見込めない工事であった。
 したがって、防水改修工事費及び非常用白熱灯の交換工事費等計7,684,380円は基金事業の対象とならず、これに係る国庫補助金相当額7,684,380円が不当と認められる。

(292) 環境本省 東京都 22 15,864 15,864 2,925 2,925

 東京都は墨田区に対して県等補助金を交付しており、同区は同区庁舎のLED照明器具等の設置工事を工事費15,864,758円(うち県等補助金15,864,000円、国庫補助金相当額同額)で実施し、LED照明器具を計355台設置したとする基金事業の実績報告書を提出していた。
 しかし、このうち55台について、設計では照明器具一式の交換であったのに実際は電球のみの交換となっていたり、既存分が非常灯付ライトであったものについて設計どおりに非常灯付ライトではないLED照明器具へ交換すると建築基準法等による非常灯の設置義務違反に当たるおそれがあることから、実際には交換しなかったりなどしていた。
 したがって、上記の55台を除くなどして適正な工事費を算定すると12,939,948円となり、県等補助金の対象となる事業費は12,939,948円、県等補助金は12,939,000円となることから、基金事業対象経費は12,939,000円となり、前記の県等補助金15,864,000円はこれに比べて2,925,000円過大に精算されており、これに係る国庫補助金相当額2,925,000円が基金から過大に取り崩され使用されていた。

(293) 環境本省 山梨県 22 29,534 29,534 1,742 1,742

 山梨県は、富士吉田合同庁舎の太陽光発電設備の設置工事等を工事費等計29,534,750円(国庫補助金相当額同額)で実施し、これに付帯工事費として屋根の塗装664m2 の工事費(直接工事費1,436,632円)を含めていた。
 しかし、塗装工事は、太陽光発電設備の設置に付随する直接必要な工事ではなく、単に建物の維持修繕工事であった。
 したがって、塗装工事に要した工事費等計1,742,639円は基金事業の対象とならず、これに係る国庫補助金相当額1,742,639円が不当と認められる。

(294) 環境本省 岐阜県 21 27,688 27,688 1,254 1,254

 岐阜県は飛騨市に対して県等補助金を交付しており、同市は同市庁舎の複層窓ガラス改修工及び屋上断熱防水改修工の工事を工事費29,190,000円(うち県等補助金27,688,000円、国庫補助金相当額同額)で実施し、このうち、複層窓ガラス改修工については、工事内容の変更に伴い、当初設計における施工面積を変更した上で、基金事業の実績報告書を提出していた。
 しかし、同市は、この施工面積の修正に当たり、工事内容の変更の確認が十分でなかったため、正しい施工面積が452m2 (補助対象面積448.5m2 )となるところを488.8m2 (同487m2 )としていた。
 したがって、正しい施工面積に基づくなどして適正な工事費を算定すると27,956,250円となり、県等補助金の対象となる事業費は26,434,800円、県等補助金は26,434,000円となることから、基金事業対象経費は26,434,000円となり、前記の県等補助金27,688,000円はこれに比べて1,254,000円過大に精算されており、これに係る国庫補助金相当額1,254,000円が基金から過大に取り崩され使用されていた。

(295) 環境本省 鳥取県 22 12,681 12,681 3,256 3,256

 鳥取県は、布勢総合運動公園及び東郷湖羽合臨海公園内の外灯をLED照明器具に改修する工事を工事費12,681,900円(国庫補助金相当額同額)で実施し、これに付帯工事費として構内配電線路改修工事等に係る工事費(直接工事費2,426,795円)を含めていた。
 しかし、構内配電線路改修工事等は、外灯をLED照明器具に改修する工事に付随する直接必要な工事ではなく、単に既存設備の維持修繕工事であった。
 したがって、構内配電線路改修工事等に要した工事費等計3,256,562円は基金事業の対象とならず、これに係る国庫補助金相当額3,256,562円が不当と認められる。

(296) 環境本省 熊本県 21、22 20,000 20,000 5,688 5,688

 熊本県は菊池市に対して県等補助金を交付しており、同市は市庁舎の太陽光発電設備の設置工事等を工事費計94,132,500円(うち県等補助金20,000,000円、国庫補助金相当額同額)で実施し、太陽光発電設備のうち太陽光パネル(総重量2,737kg)を市庁舎敷地内の昭和43年に建設された車庫(鉄骨等造平屋建413.1m2 )の屋根に設置していた。
 しかし、同市は、太陽光パネルの重量を考慮するなどした設計を行っていなかったため、本院の検査を踏まえて、当該車庫について、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」(平成7年法律第123号)等に沿って耐震診断を行ったところ、当該車庫は桁行方向で構造耐震指標の値が0.37及び0.38となり、必要とされる値0.6を大幅に下回っていた。
 したがって、太陽光パネルを設置した車庫は、地震時における所要の安全度が確保されていない状態になっており、太陽光パネルの設置場所として適切でなく、太陽光発電設備の設置工事に係る国庫補助金相当額5,688,789円が不当と認められる。

(297) 環境本省 大分県 21、22 76,133 76,133 2,274 2,274

 大分県は大分県立病院に対して県等補助金を交付しており、同病院は太陽光発電設備の設置工事等を工事費計76,133,400円(県等補助金同額、国庫補助金相当額同額)で実施し、これに付帯工事費として屋上の伸縮目地1,083mの修繕費(直接工事費1,649,000円)を含めていた。
 しかし、屋上の伸縮目地の修繕は、太陽光発電設備の設置に付随する直接必要な工事ではなく、単に建物の維持修繕工事であった。
 したがって、屋上の伸縮目地の修繕に要した工事費等計2,274,847円は基金事業の対象とならず、これに係る国庫補助金相当額2,274,847円が不当と認められる。

(290)—(297)の計     282,265 282,265 40,325 40,325