会計名及び科目 | 一般会計 (組織)環境本省 | (項)廃棄物処理施設整備費 (項)北海道開発事業費 (項)離島振興事業費 (項)地域再生推進費 |
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部局等 | 環境本省 | ||
交付の根拠等 | 水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律(平成6年法律第8号)、地域再生法(平成17年法律第24号)、予算補助 | ||
交付金事業者 (事業主体) |
市307、町298、村31、計636市町村 | ||
交付金事業 | 浄化槽設置整備事業、浄化槽市町村整備推進事業 | ||
交付金事業の概要 | 浄化槽の設置又は改築を行う個人等に対してこれらに要する費用を市町村が助成する事業又は市町村が自ら浄化槽を整備する事業を行った場合に、その費用の一部を国が交付するもの | ||
国庫交付金対象事業費 | 444億2340万余円(平成20年度〜22年度) | ||
上記に対する国庫交付金相当額 | 157億5891万余円(平成20年度〜22年度) | ||
規格が過大となっている浄化槽を設置して国庫交付金相当額に開差額が生じている事業主体とその開差額 | 市269、町235、村20、計524市町村 5億1006万円(平成20年度〜22年度 |
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規格に対し、使用人員等が超過している浄化槽に対して国庫交付金の交付を受けた事業主体とその交付額 | 市71、町33、村1、計105市町村 3066万円(平成20年度〜22年度) |
(平成24年10月26日付け 環境大臣宛て)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
貴省は、中山間地域等の地形や集落形成の特性から公共下水道等の集合処理施設による集合処理が適さない地域において、快適な住環境の形成及び公共用水域の水質保全を図り、生活環境の保全及び公衆衛生の向上に寄与することを目的として、し尿と台所、浴室等からの雑排水とを併せて処理する浄化槽(以下、単に「浄化槽」といい、し尿のみを処理する浄化槽を「単独浄化槽」という。)の計画的な整備を実施する市町村(一部事務組合を含む。以下同じ。)に対して助成を行っている。
浄化槽の整備事業には、「浄化槽設置整備事業実施要綱」(平成6年10月厚生省生活衛生局水道環境部長通知)に基づき、浄化槽の設置(改築を含む。以下同じ。)を行う個人等に対して、その設置に要する費用を市町村が助成する浄化槽設置整備事業及び「浄化槽市町村整備推進事業実施要綱」(平成6年10月厚生省生活衛生局水道環境部長通知。以下、浄化槽設置整備事業実施要綱と合わせて「実施要綱」という。)に基づき、市町村自らが浄化槽を整備する浄化槽市町村整備推進事業(以下、浄化槽設置整備事業と合わせて「浄化槽整備事業」という。)がある。そして、浄化槽整備事業を実施する市町村に対して、貴省は循環型社会形成推進交付金又は汚水処理施設整備交付金(以下、これらを合わせて「国庫交付金」という。)を交付している。
国庫交付金は、水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律(平成6年法律第8号)等に基づき、予算の範囲内で交付されることとなっており、その額は、循環型社会形成推進交付金については「循環型社会形成推進交付金交付要綱」(平成17年4月環境事務次官通知)等により、汚水処理施設整備交付金については「汚水処理施設整備交付金交付要綱」(平成17年4月農林水産、国土交通、環境各事務次官通知)等によりそれぞれ算定されることとなっている。
浄化槽を製造しようとする者は、浄化槽法(昭和58年法律第43号。以下「法」という。)に基づき、国土交通大臣に構造図、仕様書、計算書その他の国土交通省令で定める図書を添付した認定申請書を提出し、認定を受けることとなっている。そして、処理対象人員等についても構造図等に記載されていて、浄化槽ごとに処理対象人員を定めて認定を受けることとなっている。
また、住宅等に設置する浄化槽の処理対象人員の決定については、建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)及び国土交通大臣が定める方法により、日本工業規格「建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準(JISA3302—2000)」(以下「算定基準」という。)等によることとされている。算定基準等によれば、住宅に設置される浄化槽の規格を決める処理対象人員は、住宅の延べ面積が130以下(この値は、当該地域における住宅の一戸当たりの平均的な面積に応じて、増減できることとされている。)の場合は5人、130を超える場合は7人、台所が2か所以上かつ浴室が2か所以上ある場合は10人とされている。そして、これに対応した規格の浄化槽(5人槽(注1)
、7人槽又は10人槽)が設置されることとなるが、算定基準のただし書には、設置しようとする浄化槽の規格が、建築物の使用状況や類似施設の使用水量その他の資料から明らかに実情に沿わないと考えられる場合には、算定した人員を増減することができるとされている。
浄化槽を設置する個人等は、法に基づき、その旨を都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあっては、市長又は区長)及び特定行政庁(注2)
(当該都道府県知事を経由)に届け出ることとされている。
なお、法によれば、建築基準法(昭和25年法律第201号)の規定による建築主事の建築確認を申請すべきときなどは、上記の届出は必要ないものとされている。
浄化槽整備事業は、多数の市町村で実施され、それに伴い多数の浄化槽が設置されている。
そこで、本院は、経済性等の観点から、浄化槽整備事業で設置した浄化槽の規格は適切なものとなっているかなどに着眼して、平成20年度から22年度までの間に22都道府県(注3)
及び管内636市町村において、算定基準に基づいて住宅に設置した浄化槽113,373基(交付対象事業費44,423,409,119円、国庫交付金相当額15,758,917,762円)を対象に、関係書類を精査するなどして会計実地検査を行うとともに、浄化槽に係る使用人員等について上記都道府県等から調書を徴するなどの方法により検査を行った。
検査したところ、上記113,373基の浄化槽の内訳は、5人槽が64,162基(56.6%)、7人槽が45,187基(39.9%)、10人槽が4,024基(3.5%)となっており、次のような事態が見受けられた。
5人槽の浄化槽は住宅に設置される最小処理能力の浄化槽であること、また、10人槽は台所が2か所以上かつ浴室が2か所以上ある住宅に設置される浄化槽であり、特定行政庁等が容易に確認できることから、7人槽の浄化槽について、浄化槽の規格が過大となっていないか、使用人員の状況を調査したところ、表のとおり、設置時の使用人員を確認できた44,277基のうち、設置時において5人以下となっていた浄化槽が35,436基と全体の80.0%を占めていた。そして、23年11月から24年5月までの会計実地検査時において使用人員を確認できた44,535基のうち、5人以下となっていた浄化槽は38,207基で全体の85.8%を占めていた。
区分 | 3人以下 | 4、5人 | 5人以下小計 | 6人以上 | 合計 | 不明 | 総計 | |
浄化槽設置時の使用人員 | 基数 | 14,367 | 21,069 | 35,436 | 8,841 | 44,277 | 910 | 45,187 |
割合 | 32.4 | 47.6 | 80.0 | 20.0 | 100 | |||
会計実地検査時の使用人員 | 基数 | 21,244 | 16,963 | 38,207 | 6,328 | 44,535 | 652 | 45,187 |
割合 | 47.7 | 38.1 | 85.8 | 14.2 | 100 |
そして、浄化槽の設置の届出を受理した都道府県等が、届出を受理する際等に使用予定人員を確認しているか調査したところ、浄化槽の使用予定人員を確認していた基数は7人槽の設置基数45,187基のうち、8,540基(18.9%)であった。また、市町村が、浄化槽設置整備事業で個人等に助成する際又は浄化槽市町村整備推進事業で自ら浄化槽を設置する際に、浄化槽の使用予定人員を確認していた基数は13,285基(29.4%)であった。
このように、設置の届出を受理した都道府県等や市町村の大半は、浄化槽の規格を決定するに当たり、住宅の延べ面積のみに基づいて決定していて、使用予定人員の確認を行っていなかった。また、浄化槽の使用予定人員を確認していたものについても、当該使用予定人員に基づく規格と比較検討することなく、住宅の延べ面積のみに基づいて浄化槽の規格を決定しているものが多数見受けられた。
そして、国土交通省住宅局建築指導課監修の「浄化槽の設計・施工上の運用指針」によれば、処理対象人員は、一人1日当たりの汚水量が200Lであると仮定した場合の人員数であり、5人槽は1日当たり1,000L(1M3)、7人槽は1日当たり1,400L(1.4M3)の汚水を処理することが想定されている。
そこで、7人槽を設置した住宅のうち、設置時の使用人員が5人以下で、かつ、会計実地検査時の使用人員も5人以下の7人槽32,772基について、処理した汚水量を推測するために、浄化槽を設置した翌年度の水道使用量を確認した。その結果、井戸水等を使用していて水道使用量の確認ができなかった6,974基を除いた25,798基のうち、1年間の水道使用量が365M3以下で、かつ、1か月間の最大水道使用量が31M3以下となっていた浄化槽が17,473基あり、これらについては、汚水量も通年、5人槽で処理が可能であったと推測された。
したがって、前記17,473基の浄化槽のうち、5人槽に係る交付対象事業費と7人槽に係る交付対象事業費が同額であるなどの市町村に設置されている658基を除いた22都道府県管内の269市、235町、20村の計524市町村の16,815基については、7人槽ではなく5人槽を設置したとすると、国庫交付金相当額の差額5億1006万余円が節減できたと認められる。
このように、使用人員が5人以下の場合で汚水量が少ない住宅については、今後使用人員が増えるとしている場合を除いては、7人槽を設置するのではなく、5人槽を設置することにより浄化槽整備事業の目的は達せられると認められる。
浄化槽の製造メーカーの説明によると、法第11条に基づく検査(注4)
(以下「11条検査」という。)の結果は、人槽比(使用人員を処理対象人員で除した割合)が高くなるほど不適合率が高くなる傾向にあるとしており、11条検査において水質検査が適正又はおおむね適正という結果となっていたとしても、当該検査の実施の時間帯等により結果が異なることもあることから、使用人員に合わせた規格の浄化槽を設置する必要があると認められる。
そこで、浄化槽設置時及び会計実地検査時の使用人員を調査したところ、使用人員が設置した浄化槽の処理対象人員を超えているものなどが見受けられたことから、浄化槽設置時及び会計実地検査時の双方において使用人員が浄化槽の処理対象人員を超えていた5人槽299基及び7人槽170基計469基について、浄化槽を設置した翌年度の水道使用量の確認を行った。その結果、1年間の水道使用量が5人槽は365M3を、7人槽は511M3を超え、又は、1か月間の最大水道使用量が5人槽は31.0M3を、7人槽は43.4M3を超えていた浄化槽が、17道県(注5)
管内の71市、33町、1村の計105市町村で203基(国庫交付金相当額3066万余円)見受けられた。
このように、使用人員が設置された浄化槽の規格を常時超えていたり、汚水量が設置された浄化槽の規格を超えていたりする場合は、浄化槽によるし尿及び雑排水の適正な処理を図り、もって生活環境の保全及び公衆衛生の向上に寄与するという浄化槽整備事業の目的が達成されていないと認められる。
(注4) | 法第11条に基づく検査 浄化槽の所有者等の浄化槽管理者は、毎年1回、指定検査機関の行う水質に関する検査を受けることとされている。
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(注5) | 17道県 北海道、青森、秋田、山形、埼玉、静岡、岐阜、兵庫、広島、山口、香川、愛媛、福岡、大分、長崎、熊本、鹿児島各県
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浄化槽整備事業の実施に当たり、使用人員等と比較して浄化槽の規格が過大になっていたり、浄化槽の規格と比較して使用人員が常時超過していたりなどしている事態は適切とは認められず、改善の要があると認められる。
このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。
ア 市町村において、
(ア) 浄化槽設置整備事業においては、浄化槽を設置する個人等に対して、浄化槽の規格は 住宅の延べ面積のみで決定されるものではないということを十分に周知していないこと
(イ) 浄化槽市町村整備推進事業においては、浄化槽の規格は住宅の延べ面積のみで決定されるものではないということを十分に認識した上で浄化槽の規格を検討していないこと
(ウ) 浄化槽整備事業の実施の際に、設置する浄化槽の使用予定人員等を把握していないこと
イ 貴省において、関係機関と十分に協議等を行っていないこと及び市町村で上記の周知、検討及び把握を適切に講ずるよう実施要綱等に明記していないこと
浄化槽は、公共用水域等の水質の保全等の観点からし尿及び雑排水の適正な処理を図り、もって生活環境の保全及び公衆衛生の向上に寄与することを目的として設置されるものである。そして、12年に法が改正されて、単独浄化槽の新設が原則として禁止されるとともに、既設の単独浄化槽を浄化槽に転換する旨の努力義務規定が設けられて、早期に既設の単独浄化槽を浄化槽へ転換することが必要であるとされたことなどから、貴省は、浄化槽の設置を今後も推進していくこととしている。
ついては、貴省において、必要に応じて関係機関と協議等を行うとともに、浄化槽整備事業の実施に当たり適正な規格の浄化槽が設置されるよう次のとおり改善の処置を要求する。
ア 浄化槽設置整備事業の実施に当たり、市町村は、浄化槽の規格は住宅の延べ面積のみで決定されるものではないということを浄化槽を設置する個人等に対して十分に周知することを実施要綱等に明記すること
イ 浄化槽市町村整備推進事業の実施に当たり、市町村は、浄化槽の規格は住宅の延べ面積のみで決定されるものではないということを十分に認識した上で浄化槽の規格を検討することを実施要綱等に明記すること
ウ 市町村は、設置する浄化槽の使用予定人員等を可能な限り把握して、浄化槽整備事業を実施することを実施要綱等に明記すること