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  • 平成23年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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航空機用補給物品を保管するために調達したパレットボックス等の設置に当たり、アンカーボルトの施工が適切でなかったため、仕様書において求められている耐震安全性が確保されていなかったもの


(307) 航空機用補給物品を保管するために調達したパレットボックス等の設置に当たり、アンカーボルトの施工が適切でなかったため、仕様書において求められている耐震安全性が確保されていなかったもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛本省 (項)武器車両等整備費
部局等 海上自衛隊航空補給処
契約名 パレットボックス外8件
契約の概要 航空機用補給物品を保管するためのパレットボックス等を倉庫内に設置するもの
契約の相手方 三進金属工業株式会社
契約 平成22年11月  一般競争契約
完成検査 平成24年3月  
支払 平成24年4月  
支払額 221,235,000円  
不当と認める支払額 42,841,659円  (平成23年度)

1 パレットボックス等の調達等の概要

(1) パレットボックス等の調達の概要

 海上自衛隊航空補給処(以下「空補処」という。)は、新設される倉庫(鉄骨造、3階建て)内に航空機用補給物品を保管するためのパレットボックス( )等計1,452個を設置するために、平成22年11月に、一般競争契約により三進金属工業株式会社(以下「会社」という。)と売買契約を契約金額221,235,000円で締結している。そして、空補処は、会社が24年3月までに全てのパレットボックス等の設置を終えたことから、同月に完成検査等を行った上で引渡しを受け、同年4月に同額を支払っている。
 空補処は、会計法(昭和22年法律第35号)等に基づき、空補処の職員の中から監督官及び完成検査官を任命して、調達品等の監督及び完成検査を実施している。このうち、監督は、契約の履行途中において材料、部品等の品質を確保するために、監督官が立会い、指示等を行うこととされており、また、完成検査は、調達品等の品質が契約条項、仕様書等に適合しているかについて、完成検査官が検査して合格又は不合格の判定を行うこととされている。

 パレットボックス  物品をパレットに積載したままの状態で保管するための棚

(2) 仕様書において求められている耐震安全性

 空補処は、本件契約の仕様書において、パレットボックス等の規格及び寸法を明示した上で、その耐震安全性を確保するために、「官庁施設の総合耐震計画基準及び同解説」(平成8年11月建設大臣官房官庁営繕部監修)による設計用標準水平震度を用いて会社に構造計算を行わせ、契約締結後速やかに構造計算書を監督官に提出させることとしている。
 これにより、会社は、パレットボックス等の設置状況に応じた耐震安全性の検討を行い、パレットボックス等をメカニカルアンカーボルト(以下「アンカーボルト」という。)で床や壁に固定する方法により耐震安全性を確保することとして、アンカーボルトの径及び埋込長さを決定するなどした構造計算書を監督官に提出している(参考図参照)。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、監督及び完成検査が適切に行われ、調達したパレットボックス等の品質が十分に確保されているかなどに着眼して、空補処において、契約書、仕様書、構造計算書、検査調書等の書類及び現地での施工状況を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。
 すなわち、当初予定していたパレットボックス等の配置では倉庫内に設置される消防用設備の使用に支障が生ずることが判明したため、監督官は、会社に対してパレットボックス等の配置の変更を指示していた。そして、この配置の変更に伴って、当初は床と壁の両方に固定して耐震安全性を確保することとしていたパレットボックス等を、床のみに固定するなどとしていた。しかし、監督官は、会社に対してアンカーボルトの径及び埋込長さなどを再検討させて耐震安全性の確保を図る必要があったのに、構造計算書を再提出させる指示を行わなかった。このため、会社は、上記の配置の変更に伴う耐震安全性の再検討を行わないまま、パレットボックス等の設置を行っていた。また、完成検査官は、パレットボックス等の設置は良好であるとして、完成検査を合格と判定していた。
 しかし、本院がアンカーボルトの施工状況を確認したところ、構造計算書で決定されていた径よりも細いアンカーボルトが見受けられたり、ナットから上のねじ山の突出部分が著しく長く、埋込長さが不足しているアンカーボルトが多数見受けられたりしていた。
 そこで、これらの結果を踏まえ、空補処が、施工不良の箇所を特定するため、施工した全てのアンカーボルトについて調査、確認等を行ったところ、パレットボックス等1,452個(設置に使用されていたアンカーボルト計2,988本)のうち、739個(同計1,780本)については、アンカーボルトの径又は埋込長さが不足していて、耐震安全性が確保されていない状態となっていることが確認された。
 したがって、本件パレットボックス等の調達は、アンカーボルトの施工が適切でなかったため、仕様書において求められている耐震安全性が確保されていない状態となっていて、上記のパレットボックス等739個に係る支払額相当額42,841,659円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、会社がパレットボックス等の耐震安全性等に配慮することなく粗雑な施工を行っていたことなどにもよるが、空補処において、これに対する監督及び完成検査を適切に行わなかったことなどによると認められる。

(参考図)

パレットボックスの概念図