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電子計算機等の賃貸借契約に係る予定価格の算定に当たり、入札に参加しようとする者が提出する価格証明書等に記載された標準価格等の妥当性を十分確認するなどして、月額料金の支払額が適切なものとなるよう是正改善の処置を求めたもの


(1) 電子計算機等の賃貸借契約に係る予定価格の算定に当たり、入札に参加しようとする者が提出する価格証明書等に記載された標準価格等の妥当性を十分確認するなどして、月額料金の支払額が適切なものとなるよう是正改善の処置を求めたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛本省 (項)防衛本省共通費
    (項)武器車両等整備費
    (項)人材確保育成費
  平成19年度は、 (項)防衛本省
    (項)装備品等整備諸費
部局等 装備施設本部(平成19年8月31日以前は装備本部)
契約名 電子計算機等の賃貸借契約
契約の概要 自衛隊の任務遂行に必要な電子計算機等を借り上げるもの
契約の相手方 日本電気株式会社
契約 平成20年3月〜24年3月 一般競争契約、随意契約
検査対象とした契約101件に係る支払額 103億6167万余円 (平成19年度〜23年度)
上記のうち過大となっていた支払額 3億5692万円  

【是正改善の処置を求めたものの全文】

電子計算機等の賃貸借契約に係る予定価格の算定について

(平成24年10月26日付け 防衛省装備施設本部長宛て)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 電子計算機等の賃貸借契約等の概要

(1) 電子計算機等の賃貸借契約の概要

 貴本部は、防衛省設置法(昭和29年法律第164号)に基づき、自衛隊の装備品等及び役務で防衛大臣の定めるものの調達に関する事務をつかさどる特別の機関とされている。そして、「装備品等及び役務の調達実施に関する訓令」(昭和49年防衛庁訓令第4号)に基づき、自衛隊の任務遂行に必要となる電子計算機等の調達は、原則として、貴本部が一元的に実施することとなっている。
 また、貴本部は、会計法(昭和22年法律第35号)等に基づき、電子計算機等の調達を一般競争契約で実施しており、予定価格を下回る価格の入札がないときは、再度の入札を行い、再度の入札をしても落札者がないときは、随意契約によることができるとしている(以下、このような随意契約を「不落随契」という。)。さらに、不落随契で契約の相手方を決定してもなお契約を締結できない場合には、再度、公告を行い、入札を実施することとしている(以下「再度公告入札」という。)。

(2) 予定価格の算定方法

 貴本部における予定価格は、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等の会計法令のほか、「調達物品等の予定価格の算定基準に関する訓令」(昭和37年防衛庁訓令第35号)等により、調達要求書、仕様書等、契約方式その他の契約条件に基づいて算定することとなっている。また、予定価格の算定方式は、原則として市場価格方式によることとなっている。
 そして、貴本部は、電子計算機等の賃貸借契約に係る予定価格を、原則として次のように算定している。

ア 電子計算機等を新設又は更新する際の初回契約の場合

(ア) 入札に参加しようとする者(以下「入札予定者」という。)に対して、電子計算機等の月額の基本使用料金(以下「月額料金」という。)を記載した見積書の提出を求める。また、電子計算機等の構成機器等ごとに標準価格を記載した価格証明書と設置費を記載した見積書の提出を求める。そして、構成機器等に標準価格が設定されていない場合は、参考資料として、入札予定者に当該入札予定者が設定した参考価格を記載するなどした参考見積の提出を求める(以下、価格証明書と参考見積を合わせて「価格証明書等」といい、標準価格と参考価格を合わせて「標準価格等」という。)。

(イ) (ア)により各入札予定者ごとに提出させた価格証明書等に記載された構成機器等に、標準価格が設定されている場合は標準価格を、標準価格が設定されていない場合は参考価格を用いることとして、構成機器等の種類ごとに合計額を計算する。そして、この金額に査定率を乗ずるなどして購入価格を計算し、これにレンタル料率を乗ずるなどして得られた額を合計して、当該入札予定者の月額料金の価格とする。

(ウ) 各入札予定者ごとに、提出させた設置費の見積書に記載された金額に査定率を乗ずるなどして、当該入札予定者の設置費の価格とする。

(エ) 各入札予定者ごとに、(イ)により計算された月額料金に契約期間に応じて月数を乗じ、これに(ウ)により計算された設置費を加算して合計額を計算する。そして、計算された合計額のうちもっとも低い合計額となる入札予定者の月額料金と設置費をそれぞれの予定価格とする。ただし、入札予定者が1者の場合は、当該入札予定者の提出した価格証明書等及び見積書に基づき、同様に計算した上で、この入札予定者の月額料金と設置費をそれぞれの予定価格とする。

イ 電子計算機等を継続して借り上げる必要がある契約の場合
 電子計算機等を継続して借り上げる必要がある契約の場合は、上記の算定方法によらず、前年度の契約金額に基づいて、月額料金の予定価格を算定する。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、経済性等の観点から、電子計算機等の賃貸借契約に係る予定価格の算定は適切に行われているか、特に予定価格の算定基礎となる標準価格等の妥当性の確認は十分行われているかなどに着眼して検査した。
 検査に当たっては、貴本部が、電子計算機等の賃貸借契約の額が多額に上っている日本電気株式会社(以下「NEC」という。)を取り上げて、平成19年度から23年度(注1) までの間にNECと締結した電子計算機等に係る賃貸借契約のうち、24年度も引き続き契約を締結した101件(19年度から23年度までの支払額計103億6167万余円)を対象として、予定価格調書、価格証明書等の契約関係書類等により会計実地検査を行った。また、NEC府中事業場に赴いて、NECから提出された価格証明書等に記載された標準価格等の妥当性を関係資料等により調査した。

 23年度本院が貴本部会計実地検査を実施した平成23年12月5日以降に貴本部が初回契約を締結したものを除く。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 入札等の状況

 上記の賃貸借契約101件の内訳は、初回契約29件と初回契約を次年度以降において継続した契約72件となっていた。そこで、初回契約29件の契約方式及び入札の状況を検査したところ、次のとおりとなっていた。
 初回契約29件の当初入札は、全てが一般競争に付されていたが、次表のとおり、1件を除く28件は全てNECによる1者応札となっており、残りの1件はNECを含む2者以上が応札した援護情報ネットワークシステム借上契約(以下「援護情報システム契約」という。)となっていた。そして、NECの1者応札となっていた28件のうち、10件については、第2回入札後NECと不落随契を締結しており、残りの18件については第2回入札後再度公告入札を実施していた。再度公告入札においては、全てNECの1者応札となっており、第1回入札において2件はNECが落札、残りの16件は第2回入札後NECと不落随契となっていた。
 また、援護情報システム契約は、NECを含め2者が応札していたものの、NEC以外の1者(以下「他の入札予定者」という。)は第2回入札で応札を辞退していた。そして、NECのみの応札となった第2回入札でも予定価格を下回る価格の入札がなかったため、貴本部はNECと不落随契を締結していた。

表 初回契約29件の入札等の状況
(単位:件)

入札の状況\契約の締結状況 件数 予定価格を下回ったため、落札者であるNECと契約を締結したもの 予定価格を下回らなかったため、契約を締結できなかったもの
  NECと不落随契を締結したもの 第2回入札又は再度公告入札を実施したもの
第1回入札 第1回入札 29 0 29 29
  入札者数 NECの1者応札 28 0 28
  NECを含む2者以上 1 注(1) 0 1
第2回入札 29 0 29 11 注(2) 18
  入札者数 NECの1者応札 29 0 29
  NECを含む2者以上 0 0 0
再度公告入札 第1回入札 18 2 16 16
  入札者数 NECの1者応札 18 2 16
  NECを含む2者以上 0 0 0
第2回入札 16 0 16 16
  入札者数 NECの1者応札 16 0 16
  NECを含む2者以上 0 0 0
注(1)  NECを含む2者以上が応札していた援護情報システム契約の1件である。
注(2)  第1回入札においてNECによる1者応札となっていた28件のうち10件と、援護情報システム契約の1件である。

 このように、貴本部がNECと締結していた電子計算機等の賃貸借契約は、一般競争の過程において実質的にNECによる1者応札となっていた。

(2) 入札予定者が提出する価格証明書等

 前記28件の契約においては、NECのみが価格証明書等を提出していたことから、貴本部は、予定価格の算定に当たって、NECから提出された価格証明書等に記載されていた標準価格等(以下「NECの提示価格」という。)を基礎としていた。また、援護情報システム契約において、他の入札予定者は、同種契約の入札に参加した実績がなかったため、貴本部が、新たに他の入札予定者が提出した参考資料を基に査定率を計算したところ、当該査定率がNECに比べ高いものとなり、その結果、月額料金及び設置費のいずれについてもNECより高額となった。このため、援護情報システム契約の予定価格の算定に当たっても、NECの提示価格を基礎としていた。

(3) NECの提示価格の妥当性

 前記29件の初回契約に係るNECの提示価格の妥当性について、当該構成機器等の製造業者のカタログに記載された標準価格を確認したり、NECに赴いて関係資料等により確認したりなどしたところ、一部の構成機器等について、NECの提示価格が、カタログやインターネット等で公表されている価格又は関係資料等に記載されている標準価格等(以下「カタログ標準価格等」という。)を大幅に上回っている事態が見受けられた。
 そこで、NECに対してこの理由について説明を求めたところ、NECは、価格証明書等に記載する標準価格等の定義、標準価格等に含める経費等について貴本部から特に説明を受けていなかったことなどから、価格証明書等に記載する標準価格等はカタログ標準価格等に限定されるものではないと考えたとしていた。そして、NECの提示価格は、当該構成機器等のカタログ標準価格等に、工場内検証(注2) 等に係る費用のうち設置費に計上していないものを機能実現費として、数量の多い構成機器等や単価の高額な構成機器等に割り当てて上乗せしたものであるなどとしていた。
 しかし、標準価格等の一部として割り当てたとされる機能実現費の内訳や根拠資料等は作成されておらず、また、構成機器等へ割り当てる際の根拠や基準等も定められていないなど、NECの説明は客観的な根拠に乏しいものとなっていて、機能実現費をカタログ標準価格等に上乗せすることの妥当性が確認できなかった。
 そして、工場内検証等に係る費用の発生が見込まれるのであれば、これを合理的に算定して、設置費として又は新たに項目を付して見積書にその全額が明確となるように計上した上で、貴本部の審査や査定を受けるべきであるにもかかわらず、NECはこれを見積書に計上しておらず、また、その費用を機能実現費としてカタログ標準価格等に上乗せしていることを、貴本部に対して全く説明していなかった。
 一方、貴本部は、NECの提示価格について、カタログやインターネット等で公表されている価格と比較するなどして、その妥当性を確認するべきであるのに、その確認が十分でなく、NECの提示価格はカタログ標準価格等と同程度であるとして、そのまま月額料金に係る予定価格の算定基礎としていた。また、カタログ、インターネット等で公表されている価格が存在しないものについては、価格証明書等に記載された標準価格等の妥当性を確認しないまま月額料金に係る予定価格の算定基礎としていた。
 したがって、本件賃貸借契約の月額料金の予定価格の算定に当たって、NECの提示価格とカタログ標準価格等との間に大幅なかい離が見受けられるものや公表されている価格が存在しないものについては、NECに対してその根拠の説明を求め、その結果、妥当性が確認できないものについては、カタログ標準価格等を基礎とすべきであったと認められる。
 そして、初回契約を次年度以降において継続した契約72件は、上記の初回契約29件の契約金額に基づいて予定価格を算定しているものであった。
 そこで、これらの101件の賃貸借契約について、カタログ標準価格等を基礎として月額料金に係る予定価格を修正計算すると計100億0474万余円となり、前記の支払額計103億6167万余円との差額3億5692万余円が過大に支払われていたと認められる。
 上記について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

 貴本部は、平成22年度に援護情報ネットワークシステム借上契約を月額料金669万余円、設置費3160万余円で、23年度に22年度の月額料金と同額で、それぞれNECと締結していた(支払額22年度計7177万余円、23年度計8033万余円、合計1億5211万余円)。
 貴本部は、22年度契約の月額料金に係る予定価格の算定に当たって、NECから提出された価格証明書等において、ルータII型の構成機器(以下、この事例において「本件機器」という。)の標準価格が設定されておらずオープン価格とされていて、参考価格として600,000円と記載されていたことなどから、この参考価格に調達数量162台を乗ずるなどした2億4121万余円にレンタル料率等を乗ずるなどして月額料金の予定価格を672万余円と算定していた。
 しかし、本件機器等は、本件機器等の製造業者が配布しているカタログ等では標準価格が69,800円と設定されているなどしていた。
 したがって、これらの標準価格等に基づいて月額料金に係る予定価格を修正計算すると、380万余円となり、22、23両年度の支払額はそれぞれ計5445万余円、計4570万余円となるため、前記の支払額との差額22年度1731万余円、23年度3463万余円、計5195万余円が過大に支払われていたと認められる。

 工場内検証  電子計算機システム等を納地で設置して組立てる前に、倉庫等で電子計算機システム等を構築して動作確認等を行う作業

(是正改善を必要とする事態)

 前記のとおり、NECがカタログ標準価格等を大幅に上回る価格を標準価格等として価格証明書等に記載して提出していたにもかかわらず、貴本部が、価格証明書等に記載された標準価格等の妥当性を十分確認しないまま、当該標準価格等を月額料金に係る予定価格の算定基礎としていたことなどから、予定価格が過大に算定され、このため月額料金の支払額が過大となっている事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴本部において、次のことなどによると認められる。

ア 入札予定者に対して、価格証明書等に記載する標準価格等の定義、標準価格等に含める経費の範囲等について十分な説明を行っていないこと

イ NECと締結している電子計算機等の賃貸借契約については、実質的にNECによる1者応札となっていることから、NECの提示価格を予定価格の算定基礎としていること

ウ 価格証明書等に記載された標準価格等を予定価格の算定基礎とする際に、当該標準価格等の妥当性の確認が十分でないこと

3 本院が求める是正改善の処置

 貴本部は、貴省における特別の機関として、今後も自衛隊の任務遂行に必要となる電子計算機等の調達を一元的に実施していくこととなっている。
 ついては、貴本部において、電子計算機等の賃貸借契約について予定価格を適切に算定して、月額料金の支払額が適切なものとなるよう、次のとおり是正改善の処置を求める。

ア 価格証明書等に記載する標準価格等の定義、標準価格等に含める経費の範囲等について、入札説明書等に記載するなどして、入札予定者に対して十分な説明を行うこと

イ 1者応札の解消に努めるなどして、価格証明書等の中に著しく高額な標準価格等が記載されているものがあったとしても、当該標準価格等をそのまま予定価格の算定基礎とすることを抑止できるようにすること

ウ 予定価格の算定に当たっては、価格証明書等に記載された標準価格等のうち、単価が高額なもの、数量が多いものなどについて、カタログ、インターネット等で公表されている価格と比較したり、価格が公表されていないものについても入札予定者が保有する関係資料等を確認したりなどして、標準価格等の妥当性を十分確認すること