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クラスター弾の使用等が禁止されたことにより、倉庫に保管されたままとなっているロケットモータについて、その活用計画を早期に策定することにより、早期の活用を図ることとするよう改善の処置を要求したもの


(5) クラスター弾の使用等が禁止されたことにより、倉庫に保管されたままとなっているロケットモータについて、その活用計画を早期に策定することにより、早期の活用を図ることとするよう改善の処置を要求したもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛本省 (項)武器車両等整備費
部局等 内部部局(装備品等調達制度の所掌部局)、装備施設本部(平成19年8月31日以前は装備本部)等(契約部局)
ロケットモータの概要 点火装置と固体推進薬が装填されている推進装置であり、弾頭と組み合わせて使用するもの
倉庫に保管されたままとなっているロケットモータに係る調達契約 2件(平成19、20両年度)
倉庫に保管されたままとなっているロケットモータに係る支払額相当額 5億6479万円

【改善の処置を要求したものの全文】

クラスター弾の使用等が禁止されたことにより、倉庫に保管されたままとなっているロケットモータの活用について

(平成24年10月26日付け 防衛大臣宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 クラスター弾の概要等

(1) クラスター弾に関する条約の概要

 クラスター弾は、弾頭内に複数の爆発性の子弾(以下「子爆弾」という。)を内蔵し、これを空中で散布するように設計された弾薬で、砲弾、ロケット弾、爆弾その他の弾薬で地雷等を除いたものである。クラスター弾は、多くの武力紛争において使用されてきたが、クラスター弾及びその不発弾が文民に大きな被害を与えてきたことなどから、平成20年5月にアイルランド共和国で開催された外交会議において、その使用、開発、生産等を禁止することを約束する「クラスター弾に関する条約」(以下「条約」という。)が採択された。
 条約の主な内容は、次のとおりであり、我が国は20年12月に署名を行い、22年8月に発効している。
〔1〕 締約国は、クラスター弾の使用、開発、生産、取得、貯蔵、保有及び移譲並びにこれらの活動を行うことについて、援助、奨励及び勧誘を行わないことを約束する。
〔2〕 締約国は、貯蔵されているクラスター弾につき、条約が自国について発効した後原則として8年以内に廃棄する。
 そして、我が国では、クラスター弾等の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律(平成21年法律第85号。以下「法」という。)が条約の発効の日から施行されたことに伴い、クラスター弾の製造が禁止され、その所持等が規制されている。
 また、20年11月に開催された安全保障会議において、我が国の防衛に万全を期するため、クラスター弾の機能の補完措置を早急に講じていくことなどが了承された。

(2) 貴省が保有するクラスター弾

 貴省は、陸上自衛隊において、対戦車ヘリコプター等に搭載する70mmクラスター弾を保有している。70mmクラスター弾は、子爆弾内蔵の弾頭と推進装置であるロケットモータとを組み合わせた構造となっている。このほか、貴省は、訓練に使用するために模擬の子爆弾を内蔵した弾頭とロケットモータとを組み合わせた構造の70mmクラスター演習弾を保有している。
 これらの弾頭とロケットモータは、両者を組み合わせて一体として使用されるが、既に保有しているロケットモータと別途調達した弾頭とを組み合わせて使用することも可能となっている。
 貴省は、上記のうち70mmクラスター演習弾について、18年度に行った契約(3か年度の国庫債務負担行為。納期21年2月)までは、弾頭とロケットモータとを組み合わせて、一体として調達していた。
 そして、クラスター弾に関する条約が発効し、法が施行された後は、70mmクラスター弾が使用できなくなったことから、貴省は、安全保障会議での了承事項等に基づき、その補完措置として、子爆弾を内蔵しない単弾頭とロケットモータとを組み合わせたロケット弾(以下「70mm単弾頭弾」という。)及び訓練に使用するために模擬の単弾頭とロケットモータとを組み合わせたロケット演習弾(以下「70mm単弾頭演習弾」という。)を装備していくこととしている(表1 参照)。

表1  クラスター弾と、その補完措置の状況

法施行前

左の補完措置
実弾 70mmクラスター弾(子爆弾内蔵の弾頭+ロケットモータ) 70mm単弾頭弾(単弾頭+ロケットモータ)

演習弾

70mmクラスター演習弾(模擬の子爆弾内蔵の弾頭+ロケットモータ) 70mm単弾頭演習弾(模擬の単弾頭+ロケットモータ)

2 本院の検査結果

 (検査の観点及び着眼点)

 貴省は、前記のとおり、70mmクラスター弾及び70mmクラスター演習弾の機能の補完措置として、70mm単弾頭弾及び70mm単弾頭演習弾等を装備していくこととしている。
 そこで、本院は、経済性、有効性等の観点から、貴省において70mm単弾頭弾及び70mm単弾頭演習弾の装備は計画的かつ経済的に行われているか、現に保有している弾頭及びロケットモータは有効に活用されているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

 本院は、貴省において、19、20両年度に締結されたロケットモータ単体の調達契約2件(契約金額計8億2654万余円)を対象として、仕様書等の契約関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査の結果、次のような事態が見受けられた。
 貴省は、19、20両年度に締結した契約(いずれも3か年度の国庫債務負担行為)により単体のロケットモータを調達している。具体的には、表2 のとおり、19年度契約分については、当初、全数を70mmクラスター演習弾として調達する契約を締結していたが、20年5月の条約の採択等に伴い、履行途中の21年11月に、全数をロケットモータ単体で調達する契約に変更していた。また、20年度契約分については、防衛上の所要を確保する必要があるとして、21年3月に、当初から全数をロケットモータ単体で調達する契約を締結していた。これら19、20両年度契約分の最終契約金額は、計8億2654万余円となっている。

 表2  ロケットモータの調達状況

契約日 最終契約金額 納期 調達内容
平成19年度契約 (当初)20年3月26日 5億0777万余円 22年3月31日 70mmクラスター演習弾(一体型)
(変更)21年11月13日 全数をロケットモータ単体に変更
20年度契約 21年3月31日 3億1876万余円 23年2月28日 ロケットモータ単体
8億2654万余円

 しかし、貴省は、19年度契約により調達した単体のロケットモータの約半数(支払金額相当額2億6175万余円)については、過年度に調達して保有していた単弾頭と組み合わせて使用していたものの、残りの約半数(支払金額相当額2億4602万余円)及び20年度契約により調達した全数(支払金額相当額3億1876万余円。両者の計5億6479万余円)については、これらに組み合わせられる単弾頭やその演習弾頭を保有していないため、倉庫に保管したままとしている。
 この状況は、組み合わせて使用する単弾頭又はその演習弾頭を相当数調達するまで継続することとなるが、国内における単弾頭及びその演習弾頭の生産体制が整っていないことから、保管されたままとなっているロケットモータを使用する見通しは立っておらず、その機能が今後も長期にわたり発現されないおそれがある。
 貴省は、24年度中には70mm単弾頭弾及び70mm単弾頭演習弾の調達を開始する計画があるとしているが、弾頭のみを調達するのか、一体型で調達するのかが不明確となっている。

(改善を必要とする事態)

 上記のように、組み合わせられる弾頭がない単体のロケットモータが多数倉庫に保管されたままとなっている事態は、防衛装備品の経済的な調達及び有効活用が求められていることなどを考慮すると適切ではなく、改善の要があると認められる。

(発生原因)

 このような事態が生じているのは、貴省において、70mmクラスター弾等を補完する措置として70mm単弾頭弾及び70mm単弾頭演習弾を装備することとしているが、保管されたままとなっているロケットモータを単弾頭又はその演習弾頭と組み合わせて活用することについての具体的な検討が十分でないことなどによると認められる。

3 本院が要求する改善の処置

 貴省は、今後も引き続き70mmクラスター弾等を補完する措置として70mm単弾頭弾及び70mm単弾頭演習弾を装備することとしている。
 ついては、貴省において、防衛装備品の経済的な調達及び有効活用に資するよう、今後、70mm単弾頭弾及び70mm単弾頭演習弾を装備するに当たり、既に保有しているロケットモータを活用することとする計画を早期に策定することにより、早期の活用を図ることとするよう改善の処置を要求する。