会計名及び科目 | 一般会計 (組織)防衛本省 (項)防衛本省共通費 | |
(項)自衛官給与費 | ||
部局等 | 陸上幕僚監部 | |
災害派遣等手当の概要 | 災害等が発生した場合において、自衛隊法の規定により派遣され、災害派遣活動に従事した自衛官等に対して支給するもの | |
東日本大震災における災害派遣等手当の支給額 | 120億2150万余円(平成22、23両年度) | |
東日本大震災における災害派遣等手当が誤って支給されていた額 | 過大となっていた手当の額(延べ人数) 1490万円(2,424人)(平成22、23両年度) | |
過小となっていた手当の額(延べ人数) 1742万円(2,009人)(平成22、23両年度) |
陸上自衛隊は、防衛省の職員の給与等に関する法律(昭和27年法律第266号)第14条の規定に基づき、特殊勤務手当を支給している。そして、自衛隊法(昭和29年法律第165号)による災害派遣又は原子力災害派遣を命ぜられ、遭難者等の捜索救助等の災害派遣活動に従事した自衛官等に対して、防衛省の職員の給与等に関する法律施行令(昭和27年政令第368号。以下「施行令」という。)第9条の7の規定により、特殊勤務手当のうちの災害派遣等手当(以下「手当」という。)が、作業1日につき1,620円又は3,240円支給されることとなっている。
陸上幕僚監部は、平成23年3月11日に発生した東日本大震災に係る活動に伴う手当については、「東北地方太平洋沖地震における災害派遣等手当等の運用について(通知)」(平成23年3月29日陸幕人計第190号電)を発するなどして、救援等の作業又は救援等の作業と直結する活動を開始した日から災害派遣撤収命令等により当該地域における活動を中止した日までを支給の対象とすることとしていた。そして、陸上幕僚監部は、当該期間内であっても救援等の作業又は救援等の作業と直結する活動を行わなかった日や災害箇所等への移動に要した期間については、手当の支給の対象とは認めないこととしていた。
手当の支給については、災害派遣活動を実施した各部隊等が特殊勤務命令簿に基づき、個人ごとに特殊勤務手当の支給の対象とする日数等を記載した勤務状況通知書を作成して、各部隊等の支払を担当する駐屯地の会計隊等に提出し、会計隊等がこの勤務状況通知書に基づき手当を支給することとなっている。
なお、東日本大震災に係る活動に伴う手当については、余震や津波発生の危険、原発事故に伴う影響等、かつてない困難な状況下において、前方、後方支援業務の別なく、長期間にわたる厳しい任務が遂行されたことから、防衛省は、23年6月29日に施行令が改正されたことを受けて、防衛省職員給与施行細則の一部を改正する訓令(平成23年防衛省訓令第25号)を発し、今回限りの特例措置として手当の額の増額等を行った。これにより、1日当たりの手当の支給額は、東日本大震災の発生時に遡って、災害派遣については区域等に応じて1,620円、3,240円又は6,480円、原子力災害派遣については福島第一原子力発電所からの距離等に応じて3,240円、6,480円、16,000円、21,000円又は42,000円に改正された。
本院は、合規性等の観点から、東日本大震災における長期間にわたる災害派遣活動に従事した自衛官等に支給された手当が訓令、通知等に従い適切に支給されているかなどに着眼して、130駐屯地及び27分屯地(以下、駐屯地及び分屯地を合わせて「駐屯地等」という。)計157駐屯地等のうち50駐屯地等において、東日本大震災に係る22、23両年度の手当を対象として、災害派遣命令、特殊勤務命令簿、勤務状況通知書、業務日誌等を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。そして、上記の手当を対象として、会計実地検査を行わなかった107駐屯地等も含めて陸上幕僚監部から22、23両年度における支給状況等について報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。
検査したところ、部隊等が作成した特殊勤務命令簿において、手当の支給の対象となる日を誤っており、これを基に勤務状況通知書を作成するなどしたため、次のとおり、手当の支給が適切とは認められない事態が見受けられた。
すなわち、災害箇所等への移動のみを行った日や、災害派遣撤収命令等により当該地域における活動を中止した日の翌日以降に活動終了後の申し送り等を行った日を手当の支給の対象として特殊勤務命令簿を記入するなどしたため、手当の支給が過大となっていた事態が51駐屯地において見受けられ、その額は計1490万余円(延べ人数計2,424人)となっていた。また、救援等の作業又は救援等の作業と直結する活動を行っていたのに、これらの日を手当の支給の対象とせずに特殊勤務命令簿を記入するなどしたため、手当の支給が過小となっていた事態が56駐屯地等において見受けられ、その額は計1742万余円(延べ人数計2,009人)となっていた。
前記のとおり、東日本大震災に係る活動に伴う手当について、支給の対象を定めて通知するなどしているにもかかわらず、手当の支給が過大又は過小となっている事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、次のことによると認められた。
ア 各部隊等において、特殊勤務命令簿及び勤務状況通知書の作成に際し、手当の支給の適否の判断が的確でなかったこと及び手当の支給の適否を確認するための体制が十分に整備されていなかったこと
イ 陸上幕僚監部及び各方面総監部において、発出した通知等の周知徹底が十分でなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、陸上幕僚監部は、過大又は過小となっていた手当の支給額について、23年度末までに返納又は追給の処置を講ずるとともに、手当が前記の通知に基づくなどして勤務実態を反映して適切に支給されるよう、24年8月に大規模災害時における手当の支給に関する今後の処置について通知を発するなどして、次のような処置を講じた。
ア 各部隊等に災害派遣活動の実績を詳細に記録する災害派遣業務実績簿を新たに作成させることにより部隊等内での確認を徹底し、さらに、災害派遣活動の終結後に各部隊等の人事及び会計担当者を通じて、手当の支給について一斉点検を実施するなどしてその手当の支給の適否を確認するための体制を整備することとした。
イ 手当の支給に係る通知等の周知徹底を図るために、手当の支給業務の参考資料を作成し配布するなどするとともに、通知等の周知徹底の状況を各部隊等に報告させることとした。